競合ひしめく業界で“勝つ”認知度向上戦略 「評価・信頼」されて成長を続ける企業に
ここに興味深いデータがある。マンションブランドに関するアンケート結果※1だ。このアンケートには例年、マンションデベロッパーの企業名やマンションブランドの認知度を測る設問がある。分譲マンション市場では、旧財閥や鉄道、商社といったバックボーンを持つデベロッパーが上位を占めているが、その一角に独立系デベロッパーのタカラレーベンが入っている。
2017年にタカラレーベンの社名を知っていると答えた人は41.4%だったが、20年には65%と飛躍的に向上した。これだけの上昇を見せているのは同社だけで、今ではおよそ3人のうち2人が知っていることになる。
競合がひしめく中で認知度が向上している理由について、代表取締役の島田和一氏は次のように語る。
「当社では、創立50周年を迎える22年に向けたブランディングに関するロードマップを作成し、『社名認知』『事業内容理解』『好意形成』のフェーズに沿った広告展開を行っています」
18年7月から放映されているテレビCMでは、オリジナルキャラクターの「ネベル教授」が宝探しの冒険に旅立つという設定で、「タカラレーベンなら、誰でもおタカラな暮らしを手に入れられる」というメッセージが込められている。
また、事業内容の理解促進フェーズとして、メインブランドの「LEBEN(レーベン)」ブランドのイメージCMも放送を開始した。
同社では、グループを含め、全国30都道府県で分譲マンション事業を展開※2。20年6月には山梨県、同年9月には岐阜県、同年10月には福岡県に初進出となる物件のモデルルームをオープンさせた。これまで展開していなかったエリアで新たに販売を開始したことも認知度向上につながっているのだろう。
7年連続で全国マンション供給ランキングTOP10入り
グループ会社を含め、全国的に展開できる体制が整ったことで、マンションの供給実績も順調に伸び、13年以降は、7年連続で全国マンション供給ランキングのTOP10入りを果たしている※3。とりわけ東北エリアでは、グループ会社のタカラレーベン東北が15、16、17、19年の新築分譲マンション東北エリア供給戸数ランキングで1位を獲得するほどだ※4。
「東北では、当社の物件と財閥系デベロッパーの物件が競合になることも多く、お客様の当社ブランドに対する評価も高まっていると自負しています。今後も積極的な展開、供給を行っていく考えですが、供給戸数を目標にするような、やみくもな開発をするつもりはありません。あくまでもお客様のニーズに応える供給を心がけます」(島田氏)
地方都市の場合、新幹線の駅近くなどが注目されがちだが、多くのデベロッパーが競合するエリアでは土地の価格は高騰し、当然ながら、それが物件価格に跳ね返る。
「当社は創業以来、『誰もが無理なく安心して購入できる理想の住まい』というポリシーの下、『LEBEN』ブランドを展開しています。重視するのはあくまでも地域の実需ですので、数年間供給がないような、第3、第4の都市に供給を行うこともあります。
一方で、共働き世帯や単身世帯の中には、広さよりも都心や駅に近い利便性の高い物件へのニーズも高まっています。こうした変化に対応する都市型コンパクトマンションとして『NEBEL(ネベル)』ブランドを展開しています」(同)
物件を展開するエリアのニーズを正確に把握し、形にする同社の企画・開発力にも定評がある。最近では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う働き方の変化に合わせ、テレワークに対応可能な間取りなどを提案しており、好評を博しているという。
50周年を見据え、ライフスタイルに「新常識」を提案
22年に創立50周年を迎えるタカラレーベン。
1972年に、戸建ての分譲を行う「宝工務店」としてスタートした同社は、94年からは分譲マンション事業を軸に成長。不動産賃貸事業や不動産管理事業、発電事業などが第2、第3の柱に育ちつつある。
中でも2013年から参入している発電事業は、関東エリアを中心にメガソーラー発電施設の開発を手がけており、すでに48施設が稼働中※5。21年には、千葉県勝浦市で同社最大発電規模の約30メガワットの「レーベンソーラー千葉勝浦発電所」も竣工予定だ。
事業全体の総発電規模は約125メガワット※6で、今後も再生可能エネルギーへの取り組みを進めていくという。
島田氏は「今後も持続的な成長を目指すことはもちろんですが、それ以上に、企業ビジョンである『幸せを考える。幸せをつくる。』を実現するとともに、地域に貢献し、さまざまなステークホルダーや社会から信頼される企業になりたいと考えています」と語る。
CSR活動に力を入れているのもそのためだ。「価値あるライフスタイルの創造」「コミュニティの形成」「高品質で快適な空間の提供」「環境・文化の醸成」の4つを重要課題として掲げ、SDGs(持続可能な開発目標)の達成も目指す。
「50周年に向けたスローガンとして『ライフスタイルに、新常識を。』を掲げています。これまでと同様、さまざまな工夫を組み合わせ、人々のライフスタイルを変えていく挑戦を続けていきます」と島田氏は力を込める。
「ただ、50周年はあくまでも通過点です。次の50年も地域や社会から評価され、信頼されて成長を続ける企業グループでありたいと考えています」(同)
節目の50周年まであと2年。タカラレーベンの今後の動きに注目したい。
※1 日本経済新聞社広告企画「マンションブランドアンケート2020」2020年5月28日掲載
※2 2020年10月現在
※3 不動産経済研究所調べ
※4 2018年1月29日および20年1月31日 建設新聞掲載
※5 2020年3月時点のライセンス数にて集計
※6 2020年3月時点(売却分を含む)