津谷祐司×楠木建 異色対談
コンテンツはストーリーと軸足 ― UCLA映画留学から起業し成功した背景を深堀りする ―

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軸足を持ったコンテンツづくりが
企業としての持続性を生む

楠木建
一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授
1964年生まれ。92年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て2010年より現職。専攻は競争戦略。著書に『ストーリーとしての競争戦略』、『「好き嫌い」と経営』(近刊)(ともに東洋経済新報社)のほか、『戦略読書日記』(プレジデント社)、『経営センスの論理』(新潮新書)などがある。

楠木 挑戦と恋愛という、映画監督の勉強をされていたときに学ばれた、要するにストーリーの面白さ、人間にとっての幸せという、いわばポジティブなものが軸足となったのですね。コンテンツといえば、何でもありで無限ですが、そういうときに軸足がないとなかなかうまくいかないのでしょうね。

津谷 コンテンツをつくるというのは、結構難しいところがあります。投資家に説明しても属人的なものだと指摘を受けてしまう。技術がはっきりしていない。感性になってしまう。それでは企業は成り立たない。そこをどうするかに最も苦労しました。簡単に言えば、シリーズ展開をするとか、カテゴリーを絞っていくことが重要になってくるのです。

楠木 カテゴリーを絞りつつ、企画を継続していくために、具体的にどのような工夫をされましたか。

津谷 しつこいくらいにストーリーの根源は挑戦と恋愛だと話す一方で、クリエイティブのフォーマットを整備したり、社内に"コンテンツ会"というアイデアの発表会を作りました。自分の考えを皆の前で発表すると、面白くて、必死なものが出てくるようになる。アウトプットのためにインプットも一生懸命してくれるようになる。それが今のビジネスの好循環のもとになったと思います。

楠木 とは言っても、コンテンツづくりにはスキルだけでは駄目で、やはりセンスが必要ですね。

津谷 そうですね。コンテンツづくりはセンスが重要な要素でもあります。ただ、今後はそれだけではなく、グループ企業をいくつか立上げ、若い人に疑似的に経営者の役割を果たしてほしい。すでにボルテージ本体では経営を若いリーダーに託しています。

楠木 経営も自分でやってみないとわからない部分がありますからね。MBAで勉強してスキルは身につけたとしても、センスまでは手に入らない。たとえば、カラオケという場ができてから日本人の歌がすごくうまくなりました。なぜうまくなったのかというと、人前で歌うからうまくなるんです。経営はカラオケみたいなもので、やればうまくなる。小さくてもいいので、経営を丸ごとやる場を会社の中にどれだけ持てるのかというのが、その会社の長期的なキャパシティをすごく左右すると思いますね。

津谷 若い人たちに任せるだけでなく、私自身も再チャレンジしているんです。2012年にサンフランシスコに子会社を立ち上げました。ITのメッカ、シリコンバレーへの進出です。

楠木 シリコンバレーは特殊ですよ。人件費や州税、人々のロイヤリティなどを考えると、よほど色々な条件が成り立っていないと成功しません。特殊なインセンティブやモチベーションがないと難しいでしょうね。

津谷 モチベーションなら負けないつもりです。「挑戦」は人間にとっての幸せですから(笑)。