第2回プラチナキャリア・アワード プラチナ人材を企業の成長エンジンに
後援:厚生労働省、東京証券取引所
企画:東洋経済新報社、三菱総合研究所 未来共創イノベーションネットワーク、三菱UFJ信託銀行
後援者挨拶
厚生労働省の山本浩司氏は、コロナ禍が働き方の意識、価値観に変化を与え、労働者は自律的なキャリア形成を目指すようになったと指摘。「受賞企業はフロントランナーとして社会を牽引してほしい」と期待。東京証券取引所の小沼泰之氏は「コロナ禍以前から働き方の変化に能動的に取り組んできたプラチナキャリア・アワード応募企業は、持続的成長力を市場に評価され、企業価値を向上できると確信する」と語った。
基調講演
プラチナ社会の実現を目指して
~コロナを奇貨として未来へ向かおう~
審査委員長で、三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏は、世界の新型コロナウイルス感染データを俯瞰しながら、アイスランド、シンガポールなどの小規模国家では感染しても致死率が低いことや、国内でも自治体が独自に検査を積極的に行い、感染を抑制したことに言及。個々が自律しつつ全体として協調する、自律分散協調系のガバナンスの有効性を指摘した。
物への欲求が満たされると、人は物質的豊かさの追求から、自己実現を目指す方向へ生き方を転換すること。地球環境の持続可能性を求めるエコロジーを重視する動き。リサイクル可能な鉄スクラップが大量に蓄積され、輸入資源に頼らない循環型社会が実現しつつあること。林業などの分野で最新技術を使って地域に先端的1次産業が立ち上がっていることを紹介。「地球が持続し、豊かで、人の自己実現を可能にするプラチナ社会実現は、コロナ禍で加速する」と述べた。プラチナ社会をさらに推進するには、新たなビジネスを生み出すイノベーションが必要と強調。「変化の前に立ちすくまないよう、人は自律的に学び、現実を理解すべき。企業も学びの環境を整えることで、よりよい社会が実現する」と訴えた。
受賞企業講演
積水化学グループにおけるプラチナキャリア
実現に向けた取り組みについて
最優秀賞の積水化学工業、中川雅博氏は「従業員一人ひとりが持ち味を活かす」ダイバーシティー経営のためのキャリア支援策を紹介した。同社は国内外に189の関係会社を抱える積水化学グループの親会社。同社単体では約20年前から「自分のキャリアは自分でつくる」支援を開始。2015年にダイバーシティー経営を宣言したのを機に、施策の対象を国内グループ各社に拡大して、従業員、上司、組織の3つの側面から取り組みを進めてきた。
従業員には、入社2年目、30歳から10年ごと、定年前の各節目でキャリアプラン研修を実施し、キャリアを考える場を提供。また、実践機会として海外派遣制度なども整えた。上司には、部下のキャリア支援ができるようにマネジメント手法の研修を提供。組織には、国内グループ各社の組織改革に着手し、従業員が主体的に課題に取り組む風土づくりを進めてきた。コロナ禍による事業環境の変化に適応するとともに、事業を通じた社会への貢献量を今後10年で2倍にするというグループビジョンを達成するため、「従業員の力をさらに発揮できるような風土づくりに挑戦したい」と語った。
記念講演
ハードルを越える
日本初のスプリント種目世界大会メダリストの為末大氏は、引退後のキャリアチェンジの経験を語った。アスリートは、現役時と引退後の違いが大きいので、当初のキャリア計画も思い描いたとおりにはなりにくい。とくに難しかったのはプライドのマネジメント。アスリートが抱きがちな「他人に頼って弱みを見せたくない」という思い込みを拭えず、「わからないことを、人に頼れるようになるまでに時間がかかった」と話した。
転機は、テレビ番組のコメンテーターの仕事。最初は気乗りしなかったが、続けるうちに伝える力が身に付き、道が開けてきたと振り返り「求められたことに謙虚に取り組むことも大切」と述べた。一方で、現役時代、フォームを改良するため、身に付いたクセを意図的にリセットする「アンラーン」による学び方を知っていたことは引退後も役立った。「従来の習慣をアンラーンし、コロナ時代に適応することで、新たな可能性に気づくかもしれません」と語った。
パネルディスカッション
ニューノーマル時代のキャリア形成
~企業は社員のキャリア形成をどう進めていくべきか~
〈モデレーター〉
東洋経済新報社 データ事業局
『CSR企業総覧』編集長
岸本吉浩
パネルディスカッションでは、審査委員を含む5人のパネリストが、今後の人材育成などについて意見を述べた。生涯学習が専門の牧野篤氏は「人がテクノロジーに依存を強める中、個人が仕事に誇りを持てるように、自身の社会における位置づけを考えさせる環境整備」が企業に求められると指摘。社労士として中小企業と関わる諸星裕美氏は、個人別管理会計による業務価値の見える化といった受賞企業の取り組みに触れて「中小企業がコロナ時代の働き方に取り組めるよう、大企業はノウハウを提供してほしい」と期待した。テクノロジーで教育を変革するエドテックが専門の佐藤昌宏氏は、コロナ禍でオンライン化が加速されたことにより「教育から学習者を中心とする学びにシフトした」と指摘。企業も「従業員中心の人材育成をデザインすべき」と述べた。ダイバーシティーに詳しい佐々木かをり氏は、組織内に多様な視点を取り入れてイノベーションを起こすダイバーシティー経営では、キャリアの多様性も重要と強調。「在宅も増え、自由だが成果を求められる新しい働き方への対応に苦しむ人たちのスキルアップも考えるべき」と語った。三菱UFJ信託銀行の星治氏は、環境変化で不安を抱く従業員のモチベーションを維持、向上するため、「キャリア構築についてポジティブな方向性を早急に示す必要がある」と訴えた。最後にモデレーターの岸本吉浩編集長が「変化に悩む企業の皆さんに、これからもプラチナキャリア情報を発信していきたい」と締めくくった。