経理や購買がやるべき「データ分析」の中身は 「決済データ」が可能にする効率化とコスト削減
ペーパーレス化で効率化も不正防止も実現
――電子帳簿保存法が改正されますが、これによって企業が受けるメリットについて、改めてお聞かせいただけますでしょうか
白川(三菱UFJニコス) これまでの電子帳簿保存法は、紙の領収書の代わりにスマートフォンで撮影した画像が使えるなど電子化が進んだ一方、自署のない画像は使えなかったり、3営業日以内の撮影・提出が必須であったりと、不便な点も多くありました。しかしこの10月からは、一定の条件を満たすと、カード利用の決済データだけで経費精算ができるようになります。業務効率化への意欲がある企業にとっては、少なくとも投資対効果を検討するきっかけになるでしょう。
小森(三井住友カード) 領収書や請求書のペーパーレス化を実現するためには長年の慣習を変える必要があり、企業規模が大きくなればなるほど相当なパワーが求められるでしょう。しかしコロナ禍でリモートワークへの対応も一気に進んだ今、経費精算だけが旧態依然としていては、業務効率だけでなく、採用などの競争力にも影響を及ぼしかねません。
前田(クレディセゾン) ペーパーレス化に対する受け止め方は、経費精算の「効率化」と「ガバナンス強化」のどちらにより重きを置いているのかによって、企業ごとに異なります。「ガバナンス強化」に腐心している企業は、「経費精算業務の効率化を見込む一方で、本当に請求書や領収書の現物がなくなっても問題ないのだろうか」と不安になるようです。
スラバ(Mastercard) その不安は意外と大きいかもしれません。Mastercardと本日参加のカード会社3社、コンカーが合同でアンケート調査※を実施したのですが、法人カードの導入拡大時の不安として最も多かったのが「不正」で、全体の28.7%を占めました。実は、法人カードと経費精算システムを連携させれば不正防止にもつながるのですが、意外とその事実が知られていないことがわかります。
※「法人カード利用の実態調査と不正防止に関する考察」(2019年7月10日〜11日、コンカー)
システムとのデータ連携で「差し戻し」がなくなる?
――いま少し触れていただきましたが、法改正を機に「SAP Concur」と法人カードをデータ連携させるメリットをお聞かせください
前田 法人カードの決済データが経費精算システムへ連携されれば、月間数百枚、数千枚にも及んでいた領収書の処理作業がなくなります。不正防止の面では、法人カードを利用した際の決済データが、そのままシステムに同期されるため、改ざんの余地がありません。
小森 例えば、交通費申請の場合、通常なら乗り換えアプリで経路を調べるなどして経理に申請し、経理はその申請内容に間違いがないかを確認、場合によっては差し戻す作業が発生します。しかしデータ連携すれば、申請者の手でデータ加工を行うことは不可能なため、そもそも申請内容が間違っていないかどうかを確認する必要がなくなるのです。
白川 法人カードによって経費立て替えのための前払いもなくなるため、キャッシュフロー改善につながるケースもありますね。最近は法人カードのほかに、交通系電子マネーやQRコード決済を併用している企業も多いですが、そのように分散した小口決済を集約して経費精算できるのも、「SAP Concur」とデータ連携することのメリットだと思います。
「経費の使い方」を分析できる高精度データが入手可能
――「SAP Concur」を法人カードと併せて導入すれば、それなりのコストがかかります。企業の全体支出の中で、交通費・出張旅費などの間接コストは1割程度とされていますが、それでも投資対効果を感じられるものなのでしょうか
白川 実際の投資対効果は、間接コスト内だけにとどまりません。例えば、経理業務が省力化されれば、限られた人的リソースをほかの業務に振り分けることができるようになります。そういう意味では、コストとリソースのバランスを俯瞰的に見て判断できる企業が、導入に踏み切ることが多いですね。
前田 経費精算業務には、全社的にさまざまな部門が関わっています。そのため、働き方改革が推進される際には、経費精算業務の効率化が全社的な「残業時間削減」を期待できる分野と判断されるようです。そういった意味では、総務や人事といった部門にも、「SAP Concur」と法人カードのデータ連携に関心を持っていただけていると考えています。
小森 「SAP Concur」とデータ連携させれば、細切れの申請データだけでなく、経費の流れ全体を俯瞰して見られるようになります。どの分野がコスト削減しやすいかなど、取引先との条件交渉のソースになるようなデータが集められるため、そこに価値を見いだして導入を決める企業も多いと感じています。
パーチェシングカードの利用で購買のコスト削減にも
――「SAP Concur」と法人カードの連携によって、突合や入力といった「作業」を脱却し、「戦略的な経理」の実現につながることがよくわかりました。一方、コーポレートカードに加えてパーチェシングカード※を導入すれば、「購買部門」にも好影響が出るかと思いますが、いかがでしょうか
※パーチェシングカード:仕入れやシステム利用料の支払いなど、BtoB取引での決済に便利なカード。決済対象を特定できるため企業活動に必要な支払いを一本化でき、取引先との請求書・振り込み業務が集約される。カードレスで、カード番号・有効期限・セキュリティーコードのみ会社名義や部署名義で発行される。
スラバ 海外では、コーポレートカードとパーチェシングカードの双方をデータ連携させ、調達先との交渉に活用するケースが多く見られます。例えば、文房具やオフィス家具、複合機などの一括購入を行う際に価格交渉を行い、コスト削減につなげるといった形です。スケールメリットが生かせるため、全世界のデータを収集・分析して調達先と交渉し、集中購買をかけている多国籍企業もあります。出張旅費分野に関しても、社員が自ら出張時の宿泊先や交通手段を選ぶのではなく、会社で一括指定してコスト削減を図るケースが増えてきています。
白川 確かに、これまで相見積もりや長年の付き合いだけで購買先を決めていたのを、企業全体のコストダウンや経営戦略を踏まえて新たに分析・選定するケースは増えていますね。
前田 当社は「SAP Concur」を導入して6年目になりますが、連携データの分析によって、経費の使用が多いエリアを割り出し、どこにシェアオフィスを借りるかを決めるなどの意思決定も行っています。
小森 パーチェシングカードを取り扱う購買部門は、効率化を目指す経理部門とは少し異なり、収益に重きを置いていますから、いかにコストカットできるかという視点でご提案できるようにしています。これからはご利用いただける分野や活用の幅も広げていくことで、お客様企業の支払い合理化に寄与していきたいですね。
スラバ 「SAP Concur」との連携により、遠隔からでも経理や購買担当者が高度な戦略立案を行える環境が整いました。あとは、それぞれの企業がスムーズに意思決定できるようなご提案をするのが、われわれカード会社の重要な役割。生産性の向上とコスト最適化の双方の観点から、最適なご提案をしていきたいですね。
――カードの概要と利用のメリットについて、改めてお聞かせください。
電子帳簿保存法の改正によって新たに認められる電磁的記録方法は、法人向けカードの決済領域を広げる足がかりになります。とくにパーチェシングカードの利用範囲は、原材料の仕入れ費用や通信費、公共料金、Web広告費に加え、最近ではオンライン会議システムやシェアオフィスの利用料支払いなど、新たなBtoB費目にまで広がってきています。
また経費精算システムとの連携により、ペーパーレス・ハンコレス・キャッシュレスでよりスピーディーに経費処理ができるようになります。
――カードと経費精算システムである「SAP Concur」を連携させるメリットについてはいかがですか?
いつ・だれが・どこで・いくら使用されたのかが改ざんできない利用デ-タを、経理部門が日次で確認できるようになります。また経費申請から社内規定チェック、精算処理など、人の目でジャッジしていたものがシステム化されることで、瞬時に大量な精算処理を行うことができるようになります。
さらに、「SAP Concur」の分析ツ-ルを使って部門ごと・個人ごとの経費利用状況をさまざまな角度から見える化することで、無駄な支払い方をしていないか、支払先に偏りがないかなどのチェックが行えるため、有効な経費の使い方を導き出すこともできるようになります。
――今後の貴社の戦略をお聞かせください。
パーチェシングカードは必ずしも間接費の領域のみでなく、仕入れなど直接費の分野にまでニーズが広がってきていますので、BtoB決済領域のさらなる拡大を目指していきたいと考えています。また「SAP Concur」に連携されたカード決済データは、改ざんができず、かつアラート機能を活用することで不正リスクを最小限に抑えることができるため、ガバナンス強化につながる点もしっかりお伝えしていきたいですね。
――「SAP Concur Fusion Exchange 2020 Japan」のスポンサーになった背景、またイベントへの意気込みをお聞かせください。
当社は、「SAP Concur」を導入して6年目を迎えました。自社の体験を踏まえても、「SAP Concur」はカ-ドとの親和性が高く、経費精算のキャッシュレス化・デジタル化に一定の効果を出せるサービスであることをおすすめできます。 また数々の企業様のサポートを通じてたまってきた、「SAP Concur」へのデ-タ連携の知見をご提供することも可能となってきております。これからもコンカ-と共に、カ-ドデ-タの利便性を生かし、BtoB決済領域のキャッシュレス化拡大に向けて連携を図ってまいります。
「SAP CONCUR FUSION EXCHANGE 2020 JAPAN」 間接費領域のDXで変わる企業戦略や革新的なワークスタイルについて、基調講演や事例セッションを通じ、ご参加の皆様と共に考えます。
「バックオフィス業務のDXで変わる働き方―ペーパレス・キャッシュレスの実現に向けて―」をテーマに、1万人規模のオンラインイベントとして7日間開催予定です。詳しくはWebサイトをご覧ください。