経費精算「企業のニューノーマル」構築のカギは カード会社法人担当が語るコロナ禍のリアル

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カード会社法人担当が見たコロナ禍のリアルとは?
新型コロナウイルスの感染拡大は、働き方を大きく変えつつある。東京商工会議所が2020年6月に発表した調査結果によれば、東京都内の企業の67.3%がテレワークを実施。従業員300人以上の企業では90.0%がテレワークに対応をしていることが明らかとなっている。こうした状況下で、各企業の経理部門ではどのような課題が浮き彫りになり、どのような解決策を見いだそうとしているのだろうか。多くの企業の経理現場に接している三菱UFJニコスの白川秀幸氏、クレディセゾンの前田基行氏、三井住友カードの小森誠司氏、Mastercardのスタニスラフ・ドマシェビッチ氏(以下、スラバ)が語り合った。
※東京商工会議所「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」(20年5〜6月実施)

――新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染拡大によって、各企業の経理部門はどのような影響を受けたのでしょうか。

三菱UFJニコス
法人企画部 上席調査役
白川秀幸氏

白川(三菱UFJニコス) 「在宅勤務だと請求書の確認ができず、経理処理が進まない」といった声をよく聞きます。また、個人情報などの機密データに外部からアクセスできないなど、自宅で行うことのできる業務が限られている経理部門の方が多いようです。

前田(クレディセゾン) 紙・ハンコの弊害はやはり大きいですね。社内システムがクラウド化されていないために、データにアクセスするためだけに出社するケースも多いようで、当社でも、請求書のPDF化や、「SAP Concur」など経費精算システムとのデータ連携の依頼を受けることが多くなりました。

クレディセゾン
法人営業一部長
前田基行氏

小森(三井住友カード) 企業の採用という面では、「経費精算のために出社せずに済む」会社で働きたいと考える人が増えています。とくにデジタルネイティブといわれる若手社員は敏感です。今後の採用戦略を踏まえて、デジタル化の姿勢を示すことが重要だと気づき始めている会社も多いのではないでしょうか。

スラバ(Mastercard) 皆さんのおっしゃるとおり、経費精算回りをデジタルシフトさせる必要性は日に日に高まってきています。とはいえ、全社的にデジタル化を推進するには、経営層の強いリーダーシップが必要です。海外企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の成功事例を見ても、経営層がしっかりと課題を認識し、トップダウンでデジタル化を進めている企業が成果につながっています。

経費精算のDXは「限られた部署から」がカギになる

――DXは経営層の課題認識が重要とのことですが、実際に経理部門などの現場ではどの程度浸透しているのでしょうか。

Mastercard日本地区 副社長
法人決済ソリューション統括責任者
スタニスラフ・ドマシェビッチ氏

白川 実際に進んでいるのは1~2割程度というのが実感です。検討から実施までのリードタイムがやはり長いですね。比較検討をしているうちに1年が過ぎ去っていくイメージです。新型コロナでDXを検討する企業は増えていますが、実装にはまだ時間がかかりそうです。

スラバ 海外でも、全社一気に変革しようとすると、やはり時間がかかります。多いのは、まず限られた部署だけに導入し、そこで課題を抽出してから全社に展開するパイロット運用という手法です。

三井住友カード
東京営業第二部長
小森誠司氏

小森 日本企業は、全社での一斉導入を前提として考える傾向がありますから、確かにパイロット運用は有効ですね。そのうえで最後に問われるのは、担当者の本気度。変革には抵抗がつきものですから、いかに適切なプレゼンテーションを行い、成果を他部署に理解してもらえるかが重要です。当社では、「社内で話が通りやすくなる」サポートができるよう心がけています。

前田 ほぼすべての部署が関わる経費精算の分野で成果を生めば、社内変革のロールモデルとしてインフルエンサー的な役割を果たすことにもつながります。とくにコーポレートカードの導入は、利用すると会社の口座から直接経費が落ちるため、経費利用の意識改革にもつながります。

単なる業務効率化にとどまらない、さらなるメリットは

――従業員の意識改革以外に、企業がコーポレートカードを導入するメリットはどこにあるのでしょうか。

小森 最も大きいのは、経費精算が圧倒的に省力化できることです。経費の仮払いや領収書管理も不要となりますし、経費の計上漏れも防げます。また「SAP Concur」などの経費精算システムとデータ連携すれば、経費精算時の金額入力などの手作業を大幅に削減できます。

白川 おっしゃるとおり、申請者と承認者の在宅勤務を可能にするデータ連携は、企業にとって大きなメリットです。そのうえで、単に業務効率化が進むだけで満足するのでなく、さらなるベネフィットを享受できるようご案内するのがカード会社の役割だと考えています。

前田 その意味では、カード決済で対応できる幅を広げていく必要性を感じています。BtoBの領域、とくに仕入れ回りでは、まだカード払いができず、ひいては決済情報をデータ化できない分野も多くあります。企業と加盟店の双方に対するデジタル化のサポートをするなど、私たちカード会社に求められる仕事は広がっていると感じています。

スラバ コロナ禍で売掛金の回収を急ぐ企業が増えていますが、決まった期日に引き落とし・振り込みが行われるカードソリューションをより多くの企業が利用するようになると、そういった悩みも解決できるようになりますね。

経費精算システムとの連携による業務効率化など、カードのメリットはたくさん

コロナ禍で増加したカード支出、気になる項目は

――コロナ禍でさまざまな経営課題が顕在化し、新たなカードの用途が求められるようになってきている中で、今後はどのようなソリューションの提供を考えているのでしょうか。

小森 スムーズにカードを導入いただけるよう、カードの追加申し込みや変更手続きなどのウェブ化を検討しています。またコロナ禍では、ネットの通信費も増え、カードの利用可能額を大幅に増やしてほしいとのお声もいただいています。当社としては、企業のまとまった支出に対応できるカード決済に力を入れていきたいです。

前田おっしゃるとおり、新型コロナの影響で、ウェブ会議システムの使用料や在宅勤務での通信費など、これまでにあまり見られなかった経費が増加しています。細かいところでは、セミナーなどのイベントがウェブ開催にシフトし、今までは直接支払っていた参加費をカード決済に切り替えたという例もあります。こうした多岐にわたる分野で、コーポレートカードが企業のお役に立てるようなソリューションをご提案したいですね。

白川 テレワークが一般的になろうとしている今、「SAP Concur」など経費精算システムとのデータ連携が可能になることで、コーポレートカードは申請者から承認者まで、あらゆる方々にとってメリットが得られる決済方法となっています。またそれに加えて、先の通信費など、企業でまとめて支払うものについては、カード番号を入力するだけで使用できる企業購買のためのカード需要も高まってきています。

スラバ コロナ禍で売り上げが落ち込んでいるのは、全世界共通の課題。いかに内部コストを抑えるかがテーマになっています。一方で、税金などの高額決済もキャッシュレス化していく流れにあります。結果として求められているのは、安全性の高いソリューションなのです。次回は、よりセキュアでフレキシブルにさまざまな決済場面に対応できる具体的なソリューションについて、3社の皆さんと語り合いたいと思います。

【Column】三菱UFJニコス単独インタビュー

――カードの概要と利用のメリットについて、改めてお聞かせください。

三菱UFJニコスが提供する法人向けカードは、日本の中小企業から大企業の、アルバイトや一般社員から役員といった、あらゆる企業の従業員がいつ、どこで、誰が、いくら会社の経費を使ったかがわかる、極めて透明性の高いキャッシュレス決済ツールです。

出張費や交際費などの経費決済が多いコーポレートカード、仕入れ等の購買活動を得意とし、カードレスで非対面の決済を実現するパーチェシングカードやバーチャルカードなど、企業のスタイルに合わせて自由に組み合わせ可能なソリューションとして、利便性・透明性・カスタマイズ可能な拡張性を提供しています。

カードと経費精算システムである「SAP Concur」を連携させるメリットについてはいかがですか?

三菱UFJニコスの提供するカード決済データは、2種類あります。速報性を重視した日次の経費利用データ、正確性を重視した月次の請求データです。コーポレートカードを利用した社員の経費利用データは、日次で「SAP Concur」へデータ連携され、経費の利用から精算まで、すべて閲覧することができます。

また、社員の経費精算漏れや入力ミスの補正に役立つのが、月次の確定データです。手入力でのデータ処理を極限まで減らし、突合作業の負荷を減らすカードデータは、「SAP Concur」利用時には必須のアイテムになります。

―今後の貴社の戦略をお聞かせください。

請求書はもちろん、企業間取引のデータを集約するためにも、パーチェシングカードやバーチャルカードを使った企業間精算のエコシステムづくりに注力したいと考えています。

まだまだ国内では、企業間精算において、パーチェシングカード決済やカードデータの活用が十分になされていないと感じています。請求書処理や精算業務の作業負荷の軽減、時間の削減につながる法人向けのソリューションとして、国内企業の経費精算のカード決済化、データ化を強化してまいります。

「SAP Concur Fusion Exchange 2020 Japan」のスポンサーになった背景、またイベントへの意気込みをお聞かせください。

オフィシャルスポンサーとして3年連続で参加させていただいていますが、今回はオンライン開催ということで、対面営業が多い当社の大きな転換期、新たなプロモーションスタイルの構築期になると考えています。

生産性向上や電子帳簿保存法、ペーパーレスなど、世の中の大きな追い風を受け、経費精算業務に費やす時間をなくすことに注力していきたいですね。
日本最大級の経理・財務部門向けのイベント
「SAP CONCUR FUSION EXCHANGE 2020 JAPAN」
間接費領域のDXで変わる企業戦略や革新的なワークスタイルについて、基調講演や事例セッションを通じ、ご参加の皆様と共に考えます。

「バックオフィス業務のDXで変わる働き方―ペーパレス・キャッシュレスの実現に向けて―」をテーマに、1万人規模のオンラインイベントとして7日間開催予定です。詳しくはWEBサイトをご覧ください。