出張、接待だけでない「法人カード」意外な用途 コスト削減と働き方改革、両方を実現するには
法人カードは一部のマネジメント層だけの特権か
――法人カードの利用動向や人々の意識は、近年どのように変わってきているとお考えでしょうか
小森(三井住友カード) 以前であれば、「法人カード=役員や出張の多い人が使うもの」といった認識が大半でしたが、備品や仕入れなどの購買の場面や、近年ではネット広告の支払いなどにも利用が広がってきています。法人カードを使えば、複数の企業やカード会社への細かな支払いを、部署や品目ごとの請求にまとめられるメリットが理解されてきているのではないでしょうか。
前田(クレディセゾン) もともとは、接待・交際費の支払いに法人カードを利用するケースがほとんどでしたが、近年はウェブ上での支払いなどにも用途が広がってきています。新型コロナの影響で、リアルからバーチャルへとビジネス習慣が大きく様変わりして行く中、より幅広い決済場面で、カード利用のご要望が強くなっているように感じます。
白川(三菱UFJニコス) おっしゃるとおり、「一部の人向け」というイメージが変わってきています。一因には、「SAP Concur」など経費精算システムの導入が進んだこともあるのではないでしょうか。法人カードを経費精算システムとデータ連携させれば、利用データがそのまま領収書の代わりに使えるようになります。
スラバ(Mastercard) せっかく自動化するなら、経費申請も含めてすべて自動化したい、業務負荷を減らしたいという考えが、広く社員の方への配布を進める企業の動機になっていると思います。欧米では、法人カードを単独で導入するのではなく、購買システムと連携させ、発注から決済まで自動で完結させるような仕組みが一般的です。日本の整備状況はまだ道半ばですが、新型コロナによってリモートワークが浸透してきていますから、そういった仕組みを検討する企業は増えると考えています。
カード利用、広がる用途に合わせた種類も
――法人カードには、出張接待用のコーポレートカードとBtoB用のパーチェシングカードがありますが、これらの使い分けに対する理解はいかがですか。
前田 大企業においては、部門や会社での支払いにはパーチェシングカード、社員一人ひとりの立て替え払いにはコーポレートカードを利用するといった理解が、徐々に進んでいると思います。パーチェシングカードについてはカードレスで、ウェブ上で支払いを完結させることができます。部門単位、企業単位の支払いをまとめることも容易です。
小森 ベンチャー系やIT系の企業では、決済の大部分をパーチェシングカードに集約するところが増えています。個人名義の法人カードだと、人事異動で部署が変わるだけでもカード会社への届出など手続きが必要ですが、パーチェシングカードは個人ではなく部署での契約になるので、そういった煩雑さがありません。
白川 パーチェシングカード自体は20年以上前からあるもので、もともとは「営業所ごとに請求書がばらばらの電話料金を、まとめて支払いたい」というニーズにお応えしてできたものです。近年も、請求書の枚数を減らすということに重きを置いて、パーチェシングカードを利用する企業も多いですね。
増えるカードでのオンライン決済、その費目は
――ネット上での支払いにパーチェシングカードを使うケースが多いとありましたが、具体的にはどのような費目になるのでしょうか。
小森 少し前までは通信費や備品購入がメインだったのですが、最近ではネット広告やクラウド利用料などの精算をパーチェシングカードで行う企業が増えました。購買利用の金額よりも、ネット広告やクラウド利用料の金額が大きくなるケースが目立っていますね。
白川 ウェブ会議システムやチャットツールなどは、国内外問わずどこでもつなげられる魅力的なサービスが増えていますよね。最近はシェアオフィスの利用料などへの支払いにも、パーチェシングカードが使われるケースが増えています。
前田 利用範囲が広がる一方で、パーチェシングカードは部門としての支払いにも対応しているため、利用額が高額になる傾向があり、セキュリティーやガバナンスを心配する企業も多いです。そのため、支払い先を限定する、利用枠を柔軟に設定するなど、機能の拡充に取り組んでいます。
――人々の意識や利用動向に大きな変化も見られましたが、今後はどのようなサービスの展開を考えられていますか。
前田 先にもお話しましたが、現物のカードからカードレスに変わるなど、便利になればなるほど、セキュリティーやガバナンスを心配される企業が増えています。われわれとしては、カードの機能として不正防止ができることや、経費精算システムで利用データが可視化できることなどをより広くお伝えしていきたいと考えています。
白川 コロナ禍で、請求書確認のための出社をなくしていくべきという流れになっていますが、日本では取引先との支払いで請求書のやり取りを行う企業がまだまだ大半です。これを機に、テレワークを実現する手段としてカードをご利用いただければと考えています。
小森 日本では、欧米と比べると、水道料金や保険料など、まだまだカード払いが認められていない決済費目がたくさんあります。せっかく合理化のために法人カードを入れていただくのですから、より便利にご利用いただけるよう環境整備にも尽力していきたいですね。
スラバ おっしゃるとおり、BtoBではまだカードが使えないケースもあるので、購買側だけでなく供給側へのアピールも重要になります。供給側にとっても、法人カードを使うと売り掛け金の回収サイクルが短縮できる、売り上げデータが残るといったメリットを積極的に訴求していきたいです。
―― カードの概要と利用のメリットについて、改めてお聞かせください。
出張・接待にかかる従業員の立替払いや仮払いの削減、また備品購入や請求書払いにかかる振込事務の削減など、業務効率化を図ることが可能になります。また「いつ・だれが・どこで・いくら使ったのか」といった決済データが「見える化」されるようになるため、ガバナンス強化にも役立ちます。
とくに当社の法人カードは、1カ月サイクルで利用枠が満額利用できる「マンスリークリア方式」を採用しているため、利用枠に応じて月間利用予定の計画を立てやすいのが特徴です。また万が一、用途外の不正なカード利用が試みられた場合でも、管理者に即座に通知が届き、利用可否をコントロールできる便利なソリューションもご提供しています。
――カードと経費精算システムである「SAP Concur」を連携させるメリットについてはいかがですか?
コーポレートカードやパーチェシングカードで決済をした場合、最短2営業日後に「Concur Expense」上で支払いデータを確認することができます。カード利用者は経費精算のためのデータ入力が不要となり、クラウド上で申請から上長の承認までが完結します。
また2020年10月には、電子帳簿保存法の改正があります。これまでは決済をした後、紙の領収書をのり付けして経費精算の申請をし、経理部で承認後、領収書現物を7年間保管する必要がありました。今回の法改正により、コーポレートカードやパーチェシングカードと「Concur Expense」を連携させると、決済データそのものが領収書代わりになるため、紙の領収書が不要となります。カード決済をするだけで、その後の煩雑な経費処理手続きから解放されるだけでなく、書類保存スペースの確保や現物確認等の手間もなくなります。
――今後の貴社の戦略をお聞かせください。
新型コロナの影響により、多くの企業でウェブ会議システムやクラウドサービスなどの間接費支払いが増加し、パーチェシングカードのニーズが高まっています。 カードを利用する側はもちろん、カード払いを受け付ける企業にもメリットをご提供することで、パーチェシングカードが利用できる決済費目をさらに拡充していきたいと考えています。
一方で、法人カードの導入には不正利用や従業員による使い過ぎなど、さまざまな不安をお持ちの企業が多いと思います。当社は、あらかじめ管理者側でコーポレートカードの利用日時や場所、上限金額などに制限をかける「コーポレートカードコントロール」や、コーポレートカードで決済した利用を「公費か私費か」判別する「公私分離機能」など、企業の課題解決につながるソリューションをご提案しております。
――「SAP Concur Fusion Exchange 2020 Japan」のスポンサーになった背景、またイベントへの意気込みをお聞かせください。
日本は、法人カードの導入や利用できる決済費目について、ほかの先進国と比較するとまだまだ遅れを取っているのが現状です。当社はコンカーと共に、DX推進の改革に取り組む企業のお役に立てるよう、尽力してまいります。ぜひ今回のイベントを、経費精算業務見直しのきっかけにできるよう、ご覧いただければと思います。
「SAP CONCUR FUSION EXCHANGE 2020 JAPAN」 間接費領域のDXで変わる企業戦略や革新的なワークスタイルについて、基調講演や事例セッションを通じ、ご参加の皆様と共に考えます。
「バックオフィス業務のDXで変わる働き方―ペーパレス・キャッシュレスの実現に向けて―」をテーマに、1万人規模のオンラインイベントとして7日間開催予定です。詳しくはWEBサイトをご覧ください。