城南信用金庫がSDGsに力を入れる理由(後編) 全国の信金ネットワークが持つ社会貢献の力

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本企画では、エプソン販売・PaperLabの協力のもと国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向け、どのようにSDGsを意識して企業活動をするべきか、その実例やレポート、価値ある提言などを紹介する「SDGs Lab」Webマガジンを月2回発刊します。

地球に住む一員として、限りある天然資源を守り、社会課題を解決し、誰一人置き去りにすることなく、持続的に成長していくこと。それは、公的な機関および民間企業、そして一個人に課せられた使命であり、互いの責任ある行動、消費、協調が欠かせません。

「SDGs経営」「自治体SDGs」を推進し、企業と地方公共団体の活動に変革を起こしていくために必要なことは何なのか。有識者からの提言、変革者の「実践知」をお届けし、皆様の企業活動を変革する一助となれば幸いです。第24回の今回は、前回に引き続き、城南信用金庫の川本恭治理事長に、地域社会への貢献や産業育成についてSDGsの観点からお話を伺っています。
城南信用金庫
理事長
川本恭治氏

前編では再生可能エネルギー利用(以下、再エネ)についてうかがいました。エネルギー以外で、SDGsにつながる取り組みがあれば教えてください。

川本 2012年の「“よい仕事おこし”フェア」から始まる一連の取り組みは、SDGsの17のゴールのうち、8「働きがいも経済成長も」、9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、17「パートナーシップで目標を達成しよう」に合致しています。

全国のネットワークをつくる「“よい仕事おこし”フェア」は、1回目の東京ドームでの開催を経て、毎年、東京国際フォーラムで2日間開催しています。昨年は229の信用金庫、500を超える企業や自治体に参加いただき、約4万人以上の方が来場しました。

ただ、皆さんの交流を、イベントを開催する2日間だけで終わらせるのはもったいないと考え、19年6月に「よい仕事おこしネットワーク」を立ち上げました。信用金庫や企業、さらに提携した大学や自治体、新聞社などにご参加いただき、サイト上で「売りたい」「買いたい」「こんなものを探している」といった情報交換をしていただくネットワークです。イベントで行われている商談会を毎日行っているイメージです。

事例を1つ紹介しましょう。福島県のある企業が、貝殻を原材料とした抗菌素材を開発しました。とてもすばらしい商品です。ところがいざ販売の段になると、福島の貝を使っていたことで風評被害に遭い、発注が止まってしまったそうです。

そこで地元の信用金庫に教えてもらった「よい仕事おこしネットワーク」に登録したところ、千葉県の水産加工会社が手を挙げました。水産加工会社にとって貝殻は廃棄物であり、有償で処理しなければなりませんでした。

つまり福島の会社は風評被害のない貝が手に入り、千葉の会社は無料で貝を処理できるわけです。このケースのように、地域を越えて、しかも環境にもプラスになるような出合いが次々に生まれています。

→紙から紙を再生し、地球環境を守るPaperLabとは?

―現在、「よい仕事おこしネットワーク」には何社参加していますか。

企業同士をマッチングし、「毎日が商談会」というように、アクティブな関係性を目指しているそうだ

川本 企業数は全国で5200社を超えました。マッチングサイトは世にたくさんありますが、場だけを用意して後は勝手に情報交換してくださいというやり方ではうまくいきません。

「よい仕事おこしネットワーク」の特徴は、企業同士を人がつなぐこと。今、本店の建物にはこのネットワーク専属の職員が4人いて、毎日情報を確認しています。そして、参加する全国の信用金庫にも担当者を置いてもらい、担当者同士が連携することで、能動的なマッチングを実現しています。それがほかのサイトと異なる点でしょう。

―今年7月に、ネットワークの新たな拠点を開設したと聞いています。

全国の信用金庫や取引先、地方公共団体や大学などの、地域を超えたつながりを創出するための施設としてオープンした

川本 サイトと並行してリアルの世界で交流が常時できる場を設けたいと考えて、今年、羽田空港跡地にオープンしたばかりの羽田イノベーションシティという複合施設内に「よい仕事おこしプラザ」という新しい拠点を開設しました。われわれとしては金融機能を持たない初めての拠点です。

オープニングイベントの中では、ネットワークに参加されている山口県宇部市の企業誘致・観光のPRイベントを催しました。新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)で市役所を離れられないということで、市長や担当者はリモートで参加。お集まりいただいた企業の皆さんに宇部の魅力を説いていらっしゃいました。

また先日は、このプラザにおいて「コロナ感染防止対策製品発表会」と題し、中小企業の有する感染症対策製品を各バイヤーの皆さまにご案内する発表会を開催しました。抗菌の印刷ができる印刷会社や、飲食店で食事をするときに一時的にマスクを入れる袋を開発した会社に発表していただきましたが、せっかくいいものを作っても、中小企業にはその情報を多くの方に届ける手段がない。「よい仕事おこしプラザ」で、その機会をつくっていけたらと考えています。

羽田は全国から1時間強で来ることができます。また、城南信用金庫の施設だと使いづらい方もいるかと考えて、名前を出すことも控えました。利用は無料ですので、多くの方に利用していただき、パートナーシップにつなげていただきたいですね。

→全国で導入されているPaperLabの事例を見る

―利用が無料ということは持ち出しですね。どうしてこのような取り組みをするのでしょうか。

川本 プラザは利益を生まないばかりか、家賃が結構な水準で負担は小さくありません。フェアも1回の開催でウン億円が飛んでいきます。そうした実情を知っている方からは、「金融機関は融資と預金と為替だけやっていればいいじゃないか」と言われることもあります。

それに対して、私は「東日本大震災以降、ネットワークの活動を通じてたくさんの仲間ができたじゃないか」と話しています。

とくに今は新型コロナで困っている仲間が全国にたくさんいます。困っている方々を助けるのは当たり前ですし、われわれが助けていただくこともあるでしょう。まさに出会いこそ財産なのです。

そもそも前編でお話ししたように、われわれは株式会社ではなく協同組織の地域金融機関です。

地域とは運命共同体であり、地域がダメになればわれわれもダメになります。もちろん融資という形で地域を支援することは大切ですが、資金繰りをしばらくの間よくするだけでは、根本的な解決になりません。持続的に成長していただくには、やはり本業を支援することが必要です。

今後も全国それぞれの地域が元気になるように、ネットワークづくりを強化していくつもりです。

【Column】
城南信用金庫で使用されているエプソンの「PaperLab」
「PaperLab」で再生した紙を、「エプソンのスマートチャージ」で名刺にしている
日々の業務を通じてSDGsの達成に向けて貢献している城南信用金庫。環境問題では、再エネ利用のほか、ペーパーレスにも取り組んでいます。ただ、現在は過渡期であり、完全に紙がなくなるところまではいっていません。
使用する紙を減らしながら、使用済みの紙を環境に配慮して再利用することができないか。そう考えていた頃に出合ったのが、使用済みの紙から再生紙を作るエプソンの「PaperLab」だったそうです。この製品は、機械で衝撃を与えることで使用済みの紙を繊維にまでほぐして、水をほとんど使わずに紙の再生を実現することができます。
併せて、紙の再生までできたなら、印刷においても環境を考えて、インク吐出に熱を使わないインクジェットプリンターを使用する方がよいと考え「エプソンのスマートチャージ」を導入。
「PaperLab」と「エプソンのスマートチャージ」で印刷の小さな環境循環を実現し、消費電力と環境負荷の軽減に役立てています。
「今、職員の名刺は順次、『PaperLab』で再生した紙で作っています。再生紙を使うこと自体が環境にプラスですが、職員の意識改革につながることも大きい。資源を大切にしようと口で言うより、再生紙の名刺をお客様に渡したほうが、インパクトは大きく、当事者意識が強くなりますからね。いい仕組みに出合えたと思います」(川本氏)
【水の消費量】
通常の紙を作るのに、木の生育段階も含めて7610m3(注1)の水を消費します。これは25mプール(注2)で換算すると21杯分以上。一方、PaperLab A-8000が使用する水はわずか70m3(注3)、通常の製紙に比べて1%弱の水しか消費しません。(注4)
通常、製紙には大量の水を必要とします。
しかし、こちらの製品は、機械で衝撃を与えることで使用済みの紙を繊維にまでほぐして、水をほとんど使わずに紙の再生を実現。オフィス内で、資源の循環を行うことが可能です。「PaperLab」は、環境保全に役立つことはもちろん、企業のブランド価値の向上、さらに情報漏洩事故の防止、ガバナンスの強化にもつながります。環境、経済、社会にバランスよく貢献することを目指している製品と言えるでしょう。「PaperLab導入事例についてもっと知る」
(注1)P.R.VAN OEL & A.Y. HOEKSTRA(2010)
(注2)25mプール:長さ25m×6レーン(レーン幅2m)×深さ1.2mの場合、360m3
(注3)東京都市大学 環境学部 伊坪研究室算出(2018)
(注4)「PaperLab」は機器内の湿度を保つために少量の水を使用します