第一三共ヘルスケアに根付く「創薬」のDNA

ルルもマキロンも「異端」から「定番」になった

人生100年時代といわれて久しいが、最近では何歳まで「健康に生きるか」=健康寿命やQOL(Quality of Life)にも注目が集まっている。製薬会社の第一三共ヘルスケアは「生活者のQOL向上」を理念に掲げて「セルフケア」の重要性を説く。セルフケアとは、個人が普段から健康維持や病気の予防に努め、病気になったとしても軽症ならば自分の判断で市販薬を服用するなど、自分自身で健康を守り対処することだ。第一三共ヘルスケアの目指すもの、そしてセルフケアの重要性とは――。

日本人はセルフケアの意識が低い

「日本には国民皆保険制度というすばらしい制度があり、誰もが最善の医療を受けることができます。一方で、薬についての知識や病気に対する予防の意識が乏しい人がまだ多いように感じています」

こう語るのは、第一三共ヘルスケア研究開発部長の山口智彦氏。優れた制度がある一方で薬に対する無関心が生まれている現状があるのではないかという指摘だ。この言葉の裏には山口氏の使命感がある。

第一三共ヘルスケア
取締役 執行役員
研究開発部長
山口智彦

「人生100年時代となり、セルフケアの重要性が増している今、私たちの業界こそが薬や疾病予防に関する知識の普及に力を入れるべきであり、とくに革新的な医薬品を創出する医療用医薬品メーカー(第一三共)をバックボーンに持つ当社は、率先して取り組んでいかなければならないと考えています」

第一三共ヘルスケアは、三共と第一製薬のコンシューマー事業が統合して2006年に発足し、その後、さらに山之内製薬と藤沢薬品工業のコンシューマー事業を統合した会社だ。4社はいずれも100年前後の歴史を持ち、数多くの医薬品を開発してきた。

これらの伝統を受け継ぐ同社の製品ラインナップを見ると、「スイッチOTC医薬品」が多いことに気がつく。スイッチOTCとは医療用医薬品の成分を市販薬に転用することで、同社は「ロキソニンS」や「ガスター10」などの製品をいくつも持っている。しかし、それだけではない。今やロングセラーでありながら、当時の常識を変えた製品も多い。

例えば、「マキロン」。キズの消毒といえば赤チン(マーキュロクロム液)が常識だった1971年に、異端ともいえる無色透明で染みにくいキズ薬を世に送り出した。発売当初こそ「白チン」と呼ばれていたが、その後マキロンの名前が浸透し、今ではその名はキズ薬の代名詞になった。

73年に発売された敏感肌向けブランドの「ミノン」も、現在では一般的になった「弱酸性」に注目した製品だ。当時多発していた原因不明の「肌トラブル」で悩む患者のために、植物性アミノ酸系洗浄成分を配合したスキンソープを開発したことが消費者からの支持を集めた。

さらにマキロンやミノンより20年も早く1951年に登場した「ルル」。粉薬が一般的だった風邪薬を子どもから高齢者まで誰もが飲みやすい糖衣錠にしたことで、家庭の常備薬として普及。今ではつらい風邪の症状に合わせて選べるルルアタックシリーズも登場している。

※:山之内製薬と藤沢薬品工業のコンシューマー事業が2004年に統合して誕生したゼファーマを、07年に吸収合併した

常識を覆す「ゲームチェンジャー」の伝統

これらのロングセラー製品が生まれた要因として、第一三共ヘルスケアの研究開発に根付く2つの姿勢があるという。1つは「ゲームチェンジャーを目指す」こと。

「優れた製品を開発するためには、消費者の多様化するニーズや悩みに寄り添いながら、未来を見据えて変化を恐れずに挑戦することが必要です。それが、ゲームチェンジャー、つまり業界の流れを変える製品を生み出す原動力になると考えています」(山口氏)

そしてもう1つが、「エビデンスベース」ということ。

「開発のさまざまな過程で情報を収集しますが、例えば『世間ではこういわれています』という話が上がってくると、『それ本当なの』と聞くことが当たり前になっています。エビデンスを集めるために、会社が持っているデータやネットワークを活用することもありますし、積極的に検証試験も実施します。簡単に言えば『お客様にウソをつかない』ことを大事にしています」(山口氏)

エビデンスベースであることは会社の姿勢とも重なる。

市販薬は、使用実績を積んだ成分を用いることが多く、医療用医薬品の新薬開発で行われるような基礎的かつ厳格な試験は求められないが、第一三共ヘルスケアでは同社の考えに沿って独自の検証を行っているという。

「医療用では薬効成分が1種類のみ配合された医薬品がほとんどで、それを医師が必要に応じて組み合わせて処方しますが、市販薬の多くは総合感冒薬や総合胃腸薬などと呼ばれるように、複数の薬効成分を配合した製品です。複数配合とした場合の安全性と効果について、データベース上での評価に加え、それらの成分を長年にわたって処方されてきた医師の方々への地道な聞き取り、さらに臨床・非臨床を問わず可能な範囲で検証を行うこともあります。有効成分以外の成分の影響を受ける場合も少なくなく、慎重な検証が必要です」(山口氏)

第一三共ヘルスケアとして出発した後も、前身となる4社の強固な研究開発基盤を生かして特徴的な製品をリリースしている。2007年に発売した、肝斑(かんぱん・シミの一種)の改善効果が唯一認められた市販薬「トランシーノ」、18年に発売したオーラルケアの「ブレスラボ」などがその代表だ。

「一般的なシミに紛れてしまいがちな『肝斑』という女性の悩みを顕在化させて、その専門薬『トランシーノ』を提供できたことは、当社の象徴的な開発モデルにもなっています。『ブレスラボ』は、統合後に入社した若手に開発を任せました。香りでごまかさず口臭を元から除去するというコンセプトで、ゲームチェンジャーとなりうる製品と期待しています。実は、最近の若い人たちは失敗を恐れる傾向があるように感じていましたが、中堅・ベテランのサポートもあって、果敢に挑戦をして成果を出してくれました」(山口氏)

「100点満点と思うのは自己満足だ」

同社は、組織としての変革も続けている。2017年から部門を新設し、お客様の声を全社で共有する取り組みを始めた。

「食品や一般消費財メーカーであれば、お客様の声を取り入れて素早く対応する仕組みがありますが、製薬は開発期間が長いこともあって、お客様の要望に即応できない傾向があります。しかし、セルフケアの時代を迎え、製薬企業も変わる必要があります」(山口氏)

「新製品のパッケージが同シリーズの製品と区別しづらい」という意見があれば速やかにデザイン改善を検討し、「歯磨きのペーストが硬くて押し出せない」という高齢者の意見があればさまざまな年代の意見を集めて対応策を考えるなど、明らかに対応力が向上しているという。

「安全性に関しては科学的根拠に基づき十分検証は可能ですが、デザインや使い勝手などについては、お客様によって評価が分かれるものです。いくらいい製品ができたとしても、それを100点満点と思うのは自己満足にすぎません。だからこそ、お客様のご意見を真摯に受け止めて改良を重ねていきたいです」(山口氏)

「健やかなライフスタイルをつくるパートナーへ Fit for You」。ゲームチェンジャーを目指すのも、エビデンスを重視する姿勢も、生活者に寄り添うのも、すべてはこの経営ビジョンに由来する。同社はこれからも使命感を持って、生活者のQOLとセルフケアにコミットしていく。

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