変化に即応できるワークスタイル構築術 Vol.3外出先でのモバイルワークの場合
変わりゆく出張の定義
どのような状況下であっても、仕事における重要な局面ではクライアントや協業するチームと直接対面する必要も出てくるだろう。それが遠方であれば出張ということになるわけだが、「これからのワークスタイル」という観点からいうと出張の意味合いも変わるだろう。以前なら気軽に日帰り出張を組むこともできたが、これからはよほど重要な会議や契約でなければ、出張は行われなくなると考えられる。
逆境をチャンスに変えるために
日帰り出張など気軽な対面でのコミュニケーションが困難になった一方、オンラインでのコミュニケーションが充実したことによるチャンスも生まれている。遠方の顧客企業や取引先とのコミュニケーションも、Web会議やチャットツールの活用でコミュニケーション頻度を上げることができる。画面越しとはいえ、遠方からの問い合わせなども顔を見て話すことができるようになったことは、顧客体験の向上につながるだろう。そうなると実際に対面することの重要性はより増し、これまで以上のパフォーマンスが求められていくのではないだろうか。
出先の環境でも効率を維持
そのためには前段階の準備が大事になってくる。書類などの資料は事前にPDFや画像ファイルなどにまとめ直し、ペーパーレスで臨むことでスマートな印象を与えることができよう。また慣れない土地ではシェア会議室や電源の使えるカフェなどを事前にリサーチしておくことで、休憩やワークスペースとして活用できる。
モバイルノートPCの活用を加速する
出張が多い働き方をしていた社員であれば、すでにモバイルノートPCを持ち歩いているケースも多いだろう。そこはやはりモバイルノートPCによる業務生産性をいかに高めていくかが大きなポイントとなる。Wi-Fi環境がない場所でも高速大容量通信が可能なLTEに対応していたり、わずかな充電時間で急速充電が可能なFast Charge機能を搭載するPCなどが選択肢となるだろう。
また情報漏えい対策として、強固なセキュリティ機能も重要だ。モニターの覗き見や盗み見を防ぐプライバシーフィルターをPC本体に内蔵したPCも普及してきている。また物理的なPC紛失に対してアラートを出したり、最後に検知した場所をマップ上に表示できるTileのようなソリューションに対応しているとさらに安心できる。
モバイルユースに適した機能を備えたPCを基本としたうえで、作業効率を高める各種ツールを活用すれば、外出先でも安全性と快適性を両立できるだろう。モバイルワークの質を向上させるキラーデバイスとなりそうなのが、手軽にマルチディスプレイ環境が用意できるモバイルディスプレイだ。
マルチディスプレイを持ち歩く
モバイルディスプレイはその名のとおり、持ち運びができるディスプレイで、比較的最近登場した製品だ。軽量でコンパクトなので、モバイルノートPCと一緒に持ち歩けるし、出先でもデュアルディスプレイ環境で作業ができる。設置したときの高さもモバイルノートPCと合わせやすいため、2画面で運用しても違和感が少ない。
それだけでなく、たとえば外出先で小規模なプレゼンテーションをするような場合、相手にはモバイルディスプレイでPC画面を映し出し、自分はPCで資料を操作しながらコミュニケーションが取れる。対面の重要性が増すシーンではこういった、よりパフォーマンスを上げる手段を選択してもよいのではないだろうか。このような機材があれば、出張に代表される短期間のモバイルワークの生産性は大きく向上する。
中・長期的に社員が継続利用するサードプレイス
次に、レンタルオフィスやシェアオフィス、コワーキングスペースなどの施設を利用するケースを考えてみよう。オフィスへの出社を減らすためにレンタルオフィスのようなサードプレイスを活用する企業は増えている。在宅テレワークをさせたくても適切な執務スペースを自宅に用意できないという社員や、Web会議などでビジネス上の機密事項を扱う業務に携わる社員の利用などが対象となっているようだ。個室であればセキュリティも確保できるため、人気も高い。訪問が頻繁な顧客企業や取引先の所在地近くに、こうした拠点を用意すれば、移動に要する時間が短縮でき、業務効率の向上にもつながるだろう。
サードプレイスに大画面ディスプレイ
いずれもある程度の期間、継続的に社員が利用することが前提となるが、この場合は拠点に大画面ディスプレイを設置しておくと、持ち込んだモバイルノートPCでの作業も快適になるはずだ。据え置き型PCを設置するのは社員が不在になったときにPC本体やデータの盗難リスクがあるし、複数の社員が共用するPCは認証やセキュリティの設定が煩雑になるため避けたいという声もあるだろう。大画面ディスプレイだけならばそのようなリスクは最小限に抑えられるうえ、セキュリティケーブルなどを利用した盗難対策も容易だ。USB-Cポートを装備したディスプレイであれば、ケーブル1本でノートPCに接続できるため、利用する社員の利便性はいっそう高まるだろう。
ワークプレイスとしてのクルマ
さて、ここまでは人とPCだけが移動するケースを見てきたが、また違った角度から別のワークスタイルを見てみよう。それはクルマの活用だ。営業スタッフの移動に社用車を利用するケースは以前から少なくなかったが、最近は満員電車に乗るリスクを抑えられる新たな通勤のスタイルとして、クルマの利活用を推奨する企業も増えている。企業サイドから見れば、社員が自由に動けることで顧客に対して製品やサービスを安定供給できるうえ、健康面の不安を減らせるなどのメリットも大きい。社用車が不足している場合はレンタカーやカーシェアリングサービスを活用し、その費用や駐車場などのコストは企業が負担するという例も見られる。
大画面ノートPCで車内をオフィス化
クルマでの移動を前提とすれば、車内をワークスペースとすることを検討してもいいだろう。ノートPCを人手で持ち歩かなくてもよいのだから、少々サイズが大きくなっても画面の大きなノートPCという選択肢は有力だ。画面が大きければそれだけ作業効率は上がる。車中ならWeb会議を実施しても周囲の騒音は気にならない。さらに持ち運べるサイズのモバイルプリンターも同時に用意すれば、書類の印刷のためだけに会社やオフィスに戻ったりということもなくせる。文字通り、車内がそのまま移動するオフィスになるのだ。
適材適所の機器選定で社員の力を引き出す
ここまで在宅テレワーク、固定席がなくなった場合のオフィスワーク、そして外出時のモバイルワークと、さまざまなケースでこれからのワークスタイルについて考えてきた。全社、あるいは部門単位で一律の環境を用意すれば事足りていた従来とは異なり、自宅環境は社員一人ひとりでそれぞれ異なるし、オフィスや外出先でも社員の業務内容に合わせた環境が用意できなければ、BCPどころか、社員の不満を募らせてしまうことにもなりかねない。確かに機器手配の手間や予算の制約はあるかもしれないが、ユーザーファーストの発想で、適材適所のPCや周辺機器を用意することは、これからのワークスタイルを実現するうえで、大きな意味のある投資となるはずだ。