「コアラ並み」快眠マットレスが大ヒットのワケ

寝具の常識を変える?驚異的な成長の秘密

自宅にいる時間が長くなっている今、その時間の質を高めるグッズが人気だ。2015年にオーストラリアで創業された「コアラマットレス」という個性的な名前のマットレスが、日本でも売り上げをぐんぐん伸ばし、SNSなどで注目されている。オンラインのみで商品を販売し、WWF(世界自然保護基金)のパートナーとしての「コアラ保護プログラム」などサステイナブルな取り組みにも力を入れている。さらには今後、寝具だけでなく家具事業での拡大も予定しているという。この、圧倒的な成長の理由はどこにあるのだろうか。

睡眠時間の短い日本人にコアラのような快眠を

1日約22時間と、「睡眠時間が最も長い動物」といわれるコアラから名前をとった「コアラマットレス」を創業したのは、自身もスポーツマンとして快適な睡眠にこだわっていたオーストラリアの2人のラガーマン。ワインの入ったグラスをマットレスに置き、人がその上で飛び跳ねてもワイングラスが倒れない、という驚きの振動吸収性を見せた「ワイングラステスト」の動画が話題となった。

「コアラのようにぐっすりと眠れるマットレス」を「煩わしさのない購入で消費者に迅速に届けること」に注力し、2015年の創業から1年目で13億円を売り上げ、オーストラリアでも大人気となった。2017年には日本に進出して以来、毎年売上高は250%増。直近会計年度(7月~6月)ではさらなる成長を見込むという。

コロナ禍により在宅時間が長くなっていることで、寝具の需要が伸びているということはあるかもしれないが、買い替えのタイミングが比較的少ないマットレスでこの数字は驚異的である。オーストラリア発の「コアラマットレス」がこれほどの高成長を日本市場でも誇る秘密はどこにあるのだろうか。「コアラマットレス」を販売する「Koala Sleep Japan」で代表兼マーケティングディレクターを務めるアダム翔太氏に聞いた。

「日本人は世界の中でもおそらく“勤勉で、遅くまで働く”という傾向が強く、多くのデータが『先進国の中で日本は最も平均睡眠時間が短い』(※1)ことを示していました。そこで、私たちはまず、日本人がどういった睡眠習慣を持っているかに着目したんです」

日本ならではの製品開発とコアラ・スリープ・カー

Koala Sleep Japan
代表兼マーケティングディレクター

アダム翔太

一方、日本には暮らしの中で快眠と快適性を重んじる文化的な視点もある。アダム氏は続ける。「私たちは『コアラマットレス』を通じて、睡眠時間が短い日本人に今まで経験したことのないような快適な睡眠をもたらせると確信しています。それは、日本の顧客が寝具に何を求めているかを調べ、さらに顧客からの声を製品に反映させてきた成果であると言えます」。

まず、マットレスを発売する前に、日本人の睡眠習慣に関する12カ月の調査を実施。欧米では横向きに寝る人のほうが多いの対し、日本では、床に布団を敷いて寝るという歴史があるからか、仰向けで寝る人の割合が高い。そのため、日本人は西洋諸国よりも硬いマットレスを好むということが判明した。

こうした結果を踏まえ、日本ならではの商品戦略を練った。「日本の『コアラマットレス』は、オーストラリアのモデルよりも硬めのものにしました。さらに、日本はオーストラリアよりも夏の湿度が大幅に高いため、マットレスの通気性を高めています」とアダム氏は語る。

オンラインで消費者に直接販売するD2Cという販売手法を取りながらも、製品を試し、その声を聞く機会も設けた。日本進出当初はアクセスしやすいスペースで製品を試したいという要望に応えて、東京の表参道や代官山、大阪の心斎橋などの主要なショッピング街で毎月ポップアップイベントを開催。次に、多忙なユーザーが製品に触れることのできる場として企業に貸し出したのが、「お昼寝デリバリー」ともいえる「コアラ・スリープ・カー」である。

「『コアラ・スリープ・カー』は、マットレスをもっと身近に感じてもらいたいという社員のアイデアで生まれました。勤務時間中に寝心地のよい『コアラマットレス』で短い昼寝をしてもらうことで、リフレッシュして高い生産性を維持することができるということを実感していただけたと思います」と、そのユニークなマーケティング手法についてアダム氏は語る。顧客に寝心地だけでなく、良質な睡眠の健康上の利点を知ってもらうことで、よりリアルな生活と結び付けて考えることができたのではないだろうか。

快眠に加えて快適な暮らしとよりよい未来を

また、世の中の情勢に即した臨機応変な動きができるのも、顧客と距離が近いD2Cモデルならではの強みだ。緊急事態宣言前の20年3月には、すべてのポップアップイベントを即座に中止。しかし、引っ越しシーズンも近づく中、家具の購入を考えている顧客からのリクエストも多くあったため、インスタグラムライブで「質問コーナー」を隔週で実施した。ライブで顧客からの質問に答えられる仕組みを即座に作ったのである。

Koala Sleep
CMTO
ピーター・スローターダイク

さらに「最大120日間の試用が可能で、自分の暮らしに適さないということであれば、送料無料の返品と返金を保証する」(※2)というサービスは、ユーザーには大きなメリットだ。快適さとスタイルにこだわるだけでなく、こうした顧客第一のポリシーや環境と持続可能性への配慮を武器に日本市場でも寝具ブランドから家具ブランドへの進化を目指している。「Koala Sleep」オーストラリア本社チーフ・マーケティング・アンド・テクノロジー・オフィサー(CMTO)のピーター・スローターダイク氏は語る。

「私たちは『企業活動のすべてを通じて、世界をよりよくすることに貢献できる』という信念を持っています。WWFのグローバルなパートナーとして、売り上げの一部をコアラをはじめ、世界の野生生物保護のために寄付しており、日本の生態系のためにも使われています。コアラジャパンが成長し続けるにつれ、次の世代が楽しめる未来のために私たちは多くのことを貢献できるのがうれしいのです」

日本でも今後、オーストラリアでの商品展開と同様に、寝具だけでなく、さらに家具事業を拡大していくという。家具に関しても、寝具と同じレベルの品質や耐久性、快適性を実現するために、徹底した顧客調査を行っている。第一弾として発売したソファは、日本家屋にフィットした使い勝手のよいサイズに加え、小分けで配送され、工具なしで簡単に組み立てることができるという利便性を備えている。

「当社はオーストラリアに本社を構えています。オーストラリアと聞くと世界中の人がグレートバリアリーフに代表される豊かな自然をイメージすることでしょう。当社は、素材が持つ自然な風合いを生かしたデザインを行い、シンプルで飽きのこない商品を実現しています。加えて、良質な素材を使用しており、耐久性も高いので、各商品に長期保証をお付けしています。また当社の商品は動物性由来の素材を使用しないビーガン素材を利用しています。当社製品をご購入いただくことを通じて、お客様がサステイナブル社会の実現に貢献いただける、ということが当社のブランドが掲げる価値の1つを構成しています。こうした価値は今後も住宅向け家具のビジネスに革新をもたらすでしょう」とスローターダイク氏は、ビジネスの拡大に意欲を見せる。

こうした製品やサービスの品質はもちろん、特筆すべきは、製品を使うときのブランドならではの「ワクワク感」だ。先述したユニークなマーケティング戦略もすべて、それを伝えることを第1に置いているという。それが結果として、市場での差別化につながっている。ニューノーマルな生活様式を迎え、自宅の環境の快適性がますます求められる今後、「コアラ」ブランドから目が離せない。

(※1)世界の平均睡眠時間OECD国際比較調査より

(※2)東京都・大阪府以外の地域では返品手数料7500円を差し引いた金額を返金。ただし、コアラピローに関しては地域を問わず手数料無料。

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