事業戦略を支える人事の挑戦 SAP HR Connect 2020

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企業競争のグローバル化、少子高齢化に伴う労働人口の減少と、事業環境が激しく変化する中で、人材マネジメントの重要性はますます高まっている。新型コロナウイルス対策のため、初のオンライン開催となった、第25回「SAP HR Connect」では、個々の従業員の能力を最大限に引き出すSAPの最新テクノロジー「SAP SuccessFactors」を導入し、人事制度の変革を進めている企業が登壇。組織パフォーマンスの最大化に向けた、人事部門の取り組みを共有した。SAPからは、「SAP SuccessFactors」の具体的な活用例のデモンストレーションが紹介された。

主催:SAPジャパン
協力:東洋経済新報社

お客様講演1
HRシステムを核としたNittoのグローバルHR施策の再構築

日東電工
人財統括部 人事企画部長
坂東 保治氏

粘着テープを源流とし、包装材料、光学フィルム、半導体関連材料などの事業をグローバルに展開する日東電工の坂東保治氏は、同社のグローバル人事施策や、基盤となる人事システムのポイントを説明。「システム導入にかけた3年間は、業務改革を続けた3年でもあった」と振り返った。

グループ92社のうち72社が海外にある同社は、多様な人財の活躍を目的として、タレントマネジメント施策を推進。世界共通の職務等級制度や、コンピテンシー(成果につながる行動特性)を取り入れた評価制度、外国籍幹部社員のサクセッションプランニング(後継者育成計画)の導入に取り組んできた。システムは、グループ横断での人財最適配置という経営課題を解決する人財ポートフォリオの実現などを目的に導入。海外子会社による利用実績があったことから「SAP SuccessFactors」を選定した。導入プロジェクトでは海外メンバーを巻き込んで、グローバル共通の業務プロセスを策定。「SAP SuccessFactors」がつねに最新データを入力する「正システム」、給与システムを「副」として、データを連携させる仕組みにした。長期に及ぶ導入期間中には、環境変化で頓挫しないよう、「プロジェクトを短く分け、小さく成果を積み上げていくことが大事」と述べた坂東氏は、今後について「人事データ分析の経営への活用や、社員個別の人財マネジメントを実現したい」と語った。

講演後、SAPジャパンの佐々見直文氏の質問を受けた坂東氏は、制度運用上の課題について、年功序列に慣れ親しんだ日本人社員が、グローバルの職務等級制度を理解するのは難しいと指摘。人財プールへの選抜も、「選抜のプレミアム感醸成が大事と感じている」と述べた。

お客様講演2
中期経営課題の実現に向けた「人材確保・育成」の取り組み
~基幹人材の育成に関する基本的考え方の再構築~

東レ
常任理事
人事勤労部門(人事部)担当
人事部長 人事開拓室長
柳井 克之氏

「人を基本とする経営」を伝統とする東レの柳井克之氏は、SAPの「SAP SuccessFactors」を使った新人事システム「T-CAS(ティーキャス)」導入と同時に進めてきた人材育成施策の再構築について話した。同社は、若手社員の育成を、個人目標の達成状況を本人と上司が評価する目標管理シート、習得すべき専門性や経験スキルを明確化し、本人と上司が到達度を確認するキャリアシートで実施。国内管理職や海外幹部社員については、基幹ポストの後継人事計画、優秀人材を計画的に育成する人材中期計画など、個別人事のための多様な育成制度を運用してきた。しかし、各制度は別々に運用され、情報基盤も自社開発のウェブシステムをはじめ複数に分散。共通の人事情報に基づいた計画策定ができず、運用が非効率になっていた。

そこで、グローバル共通の人事情報基盤、T-CASを導入して、制度運用を再構築。評価と育成の両方の目的に使っていた目標管理シートは業務プロセスのフォロー・業績評価に特化させ、育成の情報はキャリアシートに一本化するなど、人事情報収集を統廃合して、運用の手間を削減。グローバルにリアルタイムで共有された情報を使い、本社と海外グループ会社との間で後継人材を議論できる環境を整えた。柳井氏は「まだ導入から間がなく、課題も多いが、知見を蓄積し、よりよい仕組みにしていきたい」と述べた。

SAPジャパン
バイスプレジデント
人事・人財ソリューション事業本部
本部長
稲垣 利明氏

講演後、SAPジャパンの稲垣利明氏の質問に答えた柳井氏は、海外子会社の現地社員登用比率の目標設定をしても「実質的な人材育成ができないと、形だけの登用になる」と指摘。「育成は上司の責任、成長は自己責任」の意識の浸透に向けて「提供される人事施策に受け身にならず、社員が自身のキャリアを主体的に考えるように意識改革していきたい」と語った。

SAP講演
HR DX最前線
~最先端人事ソリューションがもたらす組織の躍進~

SAPジャパン
人事・人財ソリューション
アドバイザリー本部
ソリューションスペシャリスト
池田 佳奈氏

SAPジャパンの池田佳奈氏は、雇用形態が多様化している人材の全体像把握や、個々の従業員のニーズ、感情を捉え、対応してエンゲージメントを高めていくうえで、グローバルに多くの実績のある人事ソリューション「SAP SuccessFactors」を紹介した。

「SAP SuccessFactors」は、複数の人事システムに散在する情報を一元管理してさまざまな切り口で分析、経営の意思決定を支援する。新型コロナウイルス感染状況の外部データと組み合わせれば、流行地域でテレワーク可能な人材を即座にリストアップするといったことも可能だ。また、人事イベントのたびに、個人に簡単なサーベイを行い、エンゲージメントの変化をリアルタイムに把握する仕組みもある。さらに、エンゲージメントスコアが低い理由は、具体的なキャリア目標を持てていないことと相関が強いといった分析も容易。このような分析結果から、若手層にメンタリングプログラムを実施し、キャリア相談の機会を提供するなどの対策も、システムが自動で提案してくれる。機能拡張も、設定変更によって柔軟に行うことが可能で、環境変化への対応力が高いのもポイントだ。

今回のコロナ禍で、SAP社内対策チームが、従業員の心情把握に活用した、テレワークなどに関する調査テンプレートも無償提供している。池田氏は「個人の能力を引き出し、最高のパフォーマンスを発揮する組織づくりに、SAPのテクノロジーを活用してほしい」と訴えた。

ラップアップ

SAPジャパン
人事・人財ソリューション
アドバイザリー本部
本部長
佐々見 直文氏

SAPジャパンの佐々見直文氏が、お客様講演の両社には、個々の従業員に合わせた「人事施策の個別化という共通点がある」と指摘。ただ、人事の個別化には膨大な手間がかかるため、テクノロジーの活用が不可欠という認識を示した。また、できるだけ短期にシステムを導入するには、同社クラウドシステムの柔軟性の高い機能が有効とアピールした。


「SAP HR Connect 2020 Digital Days」の講演の模様はこちら