領収書「AI読み取り」でリモート経理の実現へ 領収書・請求書をメール転送するだけで完了

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レシートの読み取り、どれだけ精度高くできているだろうか?
新型コロナウイルス禍は、テレワークの可能性を大きく広げた。一方、企業の基幹業務を担う経理部門では、出社を余儀なくされたケースも多いようだ。日本CFO協会が企業のCFO(最高財務責任者)や経理・財務部門の幹部を対象に実施した調査によれば、テレワーク実施中に出社する必要が発生したと回答した人は41%にのぼり、その理由として多かったのが、紙の書類や証憑証跡の処理だ。Withコロナ時代の経理部門の働き方改革を阻害する「紙」の問題をいかにクリアするか。「経理のリモート化」を支えるAIソリューションを開発しているファーストアカウンティングに取材した。
※一般社団法人日本CFO協会「新型コロナウイルスによる経理財務業務への影響に関する調査」(2020年4月6日発表)

「経理部門の強制出社」は離職を招くおそれも

ファーストアカウンティングは、多数の上場企業に向けてAIを活用した経理業務を効率化するソリューションを提供している。取引先にグローバル企業が多いこともあって、新型コロナウイルスの脅威を早くから感じ取っていたと代表取締役社長の森啓太郎氏は話す。

コロナ禍のためWeb会議にてご対応いただいた
ファーストアカウンティング 代表取締役社長 森 啓太郎氏

「当社では、2020年1月末の段階からコロナ禍の拡大を予想し、テレワークを進めておりました。お客様企業からもテレワークを意識したお問い合わせが増え始めましたが、最も多かったのは、領収書や請求書など紙の証憑証跡をチェックするためだけに出社しなければならないというお悩みです。コロナ禍で、メールでPDFの請求書、郵送で紙の請求書と、同案件にもかかわらず、両方送られてきてしまうケースが増えたようで、担当者がPDFをプリントアウトして経理に回し、二重払いしそうになってしまったという話も聞きました」

単に仕事が煩雑化するだけでなく、コロナ禍で出社を余儀なくされていては、社員の安全を守ることもできない。森氏は「経理部門の中でも開示や経営管理業務に携わる人材は求人倍率が高く、こういった優秀な人材の離職を防ぐためにも、安心して働ける環境を整え、単純作業から解放する必要がある」と、人材確保の観点からも、テレワーク環境の整備が欠かせないと指摘する。

交際費など個人消費との線引きが難しい一部の経費については、不正・誤謬が疑われる申請をAIでいち早く検知することで、証憑(画像データ)で確認する作業に注力できる。そこで、ファーストアカウンティングは思い切ってほかの開発をすべて停止し、リモートで経理業務を完結できるソリューションの開発に舵を切った。

経理業務に特化したAI、「SAP Concur」とコラボも

結果、わずか3カ月強で生み出したのが、同社の経理会計業務に特化したAIを組み込んだ「Remota」だ。簡単に言うと、この「Remota」を導入すれば、メールに請求書や領収書を添付して送るだけで、経費精算業務が完了する。紙をスキャンしたデータであっても、金額の読み取りから勘定科目の自動仕訳、データの整合性をチェックする突合業務まですべて自動化できる。読み取った画像データと解読したテキストデータはクラウド上に保管されるため、原本との確認は後日まとめて行えばよい。

メールに請求書や領収書を添付して送るだけで、経費精算業務が完了する

「経理会計業務の処理の速さは、収益向上にも当然影響します。上場企業は月次決算が当たり前ですが、日次決算をする企業も増えています。そうなると各支店で起票するため、経理部門からの修正や差し戻しが多くなってしまいます。当社のソリューションは、そうした無駄を省き、生産性向上を促します」(森氏)

フィンテックシステムの開発コンテスト「フィンテックアワード2019」で優勝経験も持つファーストアカウンティング。経理業務に特化したディープラーニングの技術が評価され、近々コンカーとのコラボレーションも行う予定だ。

「これまではRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などで領収書をデジタル化しても、その後『SAP Concur』へ入力する際に添付漏れや添付ミスが発生し、データ連携がうまくできていない企業が多かったようです。請求書の読み取りから自動化してほしいというニーズの高まりから、当社にお声がけいただきました」(森氏)

具体的には、請求書処理の自動化・電子化管理を行う「Concur Invoice」(コンカーインボイス)と「Remota」が連携。「Remota」に請求書や領収書をメールで添付して送信するだけで、OCR(光学文字認識)技術が請求書や領収書のデータを読み取り、解析、「Concur Invoice」へ自動でデータが連携されるのだ。別途データを手入力したり、システム連携を行う必要がなくなる。

どんな請求書・領収書もOK、読み取り精度の高さ

非常に革新的なソリューションだが、経理業務に精通している人は主に2つの疑問が浮かぶだろう。1つは、請求書および領収書の読み取り精度。もう1つは、複雑な勘定科目の仕訳が本当に自動化できるのかということだ。森氏は、まず読み取り精度について次のように答える。

「読み取り精度への疑問をお持ちなのは無理もありません。OCRはかなり長い歴史がありますが、これまで請求書や領収書はほとんど読み取れなかったのです。『今までのOCRは使い物にならない、手入力のほうが断然速い』といったネガティブなイメージをお持ちの経理ご担当者は非常にたくさんいらっしゃいます。しかし当社のAI-OCRは、お客様先でのデモンストレーションの際、その場で出された領収書を読み取れなかったことはありません」

メールで送るだけで、請求書が読み取られる

通常のOCRだと誤認識してしまうような透かしの入った領収書や、くしゃくしゃになってしまった領収書、手書きの領収書すらファーストアカウンティングのAI-OCRは正確に読み取ることができる。ロゴマークから社名を読み取ることも可能だ。「人間の入力精度は7割程度といわれていますが、当社のソリューションは95%以上と、人間以上の精度を実現しています」と胸を張る森氏は、その理由についてこう話す。

「実はAI自体は、それほど賢くありません。知能指数としてはネズミと同等程度だといわれています。しかし、一分野に特化させることで、飛び抜けた力を発揮するのです。囲碁のAIもそうですし、お掃除ロボットや自動運転もそうです。当社のAIも、領収書と請求書に特化して開発したことで、高い精度を実現することができました」

読み取りを自動化すれば、後は企業ごとに異なる勘定科目をAIに学習させるだけ。支払いマスターへの登録有無など、人的チェックが必要なものにはフラグを立てて知らせてくれる。結果として、ファーストアカウンティングのソリューションは手作業の10倍以上のスピードで処理を実現しているのである。

通常、AIソリューションの活用には、実証実験の費用がつきものだが、「Remota」なら不要。API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の開発をする必要もないため、開発工数・期間を劇的に減らすことが可能だ。

来る「SAP Concur Fusion Exchange 2020」

森氏はコンカーとのコラボレーションで目指すことについて、次のように語る。

「経理部門は企業の基幹業務です。『SAP Concur』と連携し、請求書・領収書のAI自動入力を普及させて『経理のリモート化』を当たり前にすることで、日本だけでなく世界の社会課題を解決できると確信しています」

両社のコラボレーションがどのような効果を生むのか。2020年9月に開催予定の「SAP Concur Fusion Exchange 2020 Japan」のセッションでは、導入事例もふんだんに盛り込んで紹介したいと森氏は意気込む。

「『Remota』を3カ月強でローンチできたのは、約80名の当社従業員のほとんどが開発に携わっていることと、経理会計業務をどうすれば効率化できるか朝から晩まで考えているからです。社名のとおり『速く正確な会計サービス』をご提供するため、今後も開発のスピードは緩めません。また、同じようにカスタマーサクセスを重視する『SAP Concur』とのコラボレーションは、お客様企業の利便性をさらに向上させられると自負しています。まずは9月の『SAP Concur Fusion Exchange 2020 Japan』のセッションをご覧いただき、具体的なイメージを持っていただければ」と話す。

日本最大級の経理・財務部門向けのイベント
「SAP CONCUR FUSION EXCHANGE 2020 JAPAN」
間接費領域のデジタル・トランスフォーメーションで変わる企業戦略や革新的なワークスタイルについて、基調講演や事例セッションを通じ、ご参加の皆様と共に考えます。

「バックオフィス業務のDXで変わる働き方ーペーパレス・キャッシュレスの実現に向けてー」をテーマに、1万人規模のオンラインイベントとして7日間開催予定です。詳しくはWEBサイトをご覧ください。