「オフィスの換気」知っておきたい5ポイント 窓がない、開けられない…どうしたらいい?
「オフィスの換気」、気になっている人が半数以上
ダイキンが今年6月に実施したアンケート調査によると、自分の職場・オフィスの換気状況について「とても気になっている」「どちらかというと気になっている」と回答した人は約53%と、半数を上回った。また、自分の職場・オフィスの具体的な換気設備や方法を「あまり知らない」「まったく知らない」という人は約48%。家庭では気軽にできる換気だが、職場となるとどうやら事情が違うようだ。
とくに窓がない、あっても開けられないという職場では、ちゃんと換気をできているのか不安に思いながら働いている人もいるだろう。オフィスや店舗など、家庭以外の場所ではどのように換気を行えばよいのか。
こうした空気にまつわる生活課題に応えるべく、ダイキンは今年4月の緊急事態宣言発令直後に「上手な換気の方法」というWebサイトを公開し、家庭だけでなくオフィスや店舗で実践できる情報を発信している。加えて、換気機器の使い方やメンテナンス方法など、より専門性の高い情報を発信するWebサイト「おしえて空気ナビ」も公開。さらに、Webサイトの情報だけでは解決できないユーザーや、換気機器の導入を検討しているオーナーからの具体的な相談をメールや電話で受け付ける「空気の相談窓口」を、6月1日に立ち上げた。この「空気の相談窓口」には、飲食店を営む企業やオーナーからの声が多く寄せられているという。
「最近は多くの飲食店が窓や扉を開けっぱなしにして営業しています。しかし、外の空気を室内に入れれば入れるほどエアコンの負荷は高まる。換気はそもそも、エアコンの天敵なんです。とくに飲食店は火を扱うことが多いので、店内の温度が上がりがち。本格的に暑くなるこれからの季節、店内の涼しさを保ちつつ十分な換気をできるのかと、不安を抱えている飲食店関係者は多いです」と話すのは、空気の相談窓口を率いる、ダイキンの髙橋弘史氏だ。
「ダイキンは空調専業メーカー、つまり空気の専門家。われわれが長年培ってきた、心地いい空気をつくる力を、世間のお困りごとを解決するために今こそ役立てたい。そうすることで、新しい生活様式の中でお客様が安心して日常生活を送れる環境を取り戻し、外出自粛などで停滞した経済活動の活性化にも貢献できるのではないかと考えています。さらに空気に対する関心が高まる中で、われわれが積極的にお客様のニーズを汲み取りご提案することは、空調にまつわるさまざまなビジネス機会をつくりだすことにもつながると考えています」(髙橋氏)と、空気の相談窓口を開設した狙いを語る。
髙橋氏が中心となり、ダイキンの空調製品やサービスを取り扱う日本全国の関係者と連携して緊急で立ち上げた「空気の相談窓口」。メールや電話による問い合わせを受け、「空気ドクター」と呼ばれる空調・換気のプロを現場に派遣するという点が特徴だ。
換気設備を生き返らせる「空気ドクター」たちのスゴ技
「業務用の換気設備は、家庭用と違って一品一様。現場に行って直接確認しないと、正確な解決策を見つけることはできません。だから、担当者がお客様の所に駆けつけて、現物を見るのが基本。当社が誇る『空気ドクター』が、CO2センサーや風速計など換気の状況を把握する七つ道具を収めたジュラルミンケースを携えて、お客様のもとにお伺いします」と、髙橋氏は胸を張る。
空気ドクターたちは現地に赴くと、換気設備の場所や換気の種類、適正な風量が確保できているかなどを確認し、最良の解決策を探っていく。もちろん、自社製品に限らず、他メーカーの設備についても対応する。専門家ならではの視点と技術、経験を持つ彼らだからこそできることだ。
「案外、見落としがちなのが換気扇の掃除。ここをきれいにするだけで、吸気・排気の風量が戻って、問題が解決することが多いんです」(髙橋氏)。まずはユーザー側での掃除を促し、手に負えないようであればメンテナンスを行う代理店を紹介する。もちろん、経年劣化や部品の故障など、掃除で解消できる状態にない場合には換気設備の交換も提案する。
「換気は窓やドアを開けないとできないので、エアコンをつけても暑くなってしまうのはしょうがない。そう思い込まれている方が非常に多いです。しかし、機械による換気でしっかり空気を入れ換えつつ、エアコンと組み合わせて快適な空間をつくることは可能です」と髙橋氏は明言する。
販売店のネットワークを広くもっているのが、ダイキンの強みだ。「これからも換気を入り口に、日本全国のお客様の課題を解決して、信頼を勝ち取っていきたい。空調にまつわるさまざまなビジネス機会をつくりだすことでお客様とダイキン、そして販売店や代理店、みんなが満足できる『三方よし』をつくりだしていければと考えています」(髙橋氏)。
本来、オフィスは十分に換気できているはず
では、オフィスで働いている人が換気のためにできることはあるのだろうか。窓のない部屋、あっても開けられない部屋もあり、十分な換気ができていないのではないかと不安に思う人もいるだろう。ダイキンの山口翼氏は「オフィスビルの規模にもよりますが、基本的には建築基準法などの規定によって、一定の換気量が確保できるように換気設備の設置が義務づけられています。家庭と違ってオフィスは換気できていないのではないか、というご心配は不要です」と話す。
ただし、法律で定められた換気量は、標準的なオフィスの使用状況を前提として算出されている。「オフィスのレイアウトなどは考慮されていないため、部屋の使い方によっては、一時的に会議室の人口密度が高くなり、規定どおりの換気量が保たれていないケースもあります。部屋の二酸化炭素(CO2)濃度が高くなると、集中力低下や頭痛の原因になるともいわれます。生産性向上という意味でも、換気は重要なんです」(山口氏)。
では、オフィスの換気状態をよりよくするためにできることは何か。山口氏は「まず、現状を確認してください」と言う。大規模なビルの場合、ビルの管理会社が換気を一括管理していることがほとんど。しかし、10階建て以下の小〜中規模ビルだと、各オフィスで換気設備を操作できる場合もある。スイッチや換気口はどこにあるのか、自分たちで換気をオン・オフできるのか、どんな空気の流れが起きるのか……といった現実を知るのが、初めの一歩というわけだ。
一方、エアコンと換気設備の操作パネル、リモコンが一緒になっているものもある。その場合、冷房・暖房を使わない春や秋に電源を切ってしまうと換気設備まで稼働しなくなってしまうため、換気モードを選択して運転する必要がある。
換気を効率よく行うためには、フィルターの掃除も有効だ。「フィルターが目詰まりすると換気効率が下がりますので、定期的に掃除してください。自分たちでできない場合は、ビルの管理会社や清掃業者に依頼しましょう」(山口氏)。
また、オフィスのレイアウトによっては、給気と排気のバランスが悪くなっていることも。密になりやすい執務室や会議室などでは、換気設備だけではなく、使用状況に応じて窓やドアを開け、頻繁に空気の入れ換えを図ろう。「会議が終わったら窓とドアを一定時間開けておく、1時間の会議中に10分間は必ずドア開け換気をするなど、社内ルールを決めることをお勧めします。窓がない部屋では、ドア開け換気と同時に、サーキュレーターなどを使って空気の流れをつくるのもよい方法です」と山口氏は提案する。
なお大規模ビルの場合は、自分の就業時間中に換気設備が稼働しているか、担当部署や管理会社に確認を取ろう。時差出勤をしている場合、早朝や夜間などの状況も把握したい。もし換気できていなければ、管理会社に換気時間の延長を頼んだり、個人で操作する方法がないか相談してみたりするといいだろう。
例年以上に、換気が気になる今年の夏。エアコンの活用と換気をうまく両立させて、職場やオフィスでも安心して過ごしたいものだ。空気の専門家の情報を参考に、正しい換気の方法を身につけてみては。