SDGs Lab

コロナを乗り越えた自治体の共通点とは?(後編)

マッチングや事例共有、金融分野で支援を強化

本企画では、エプソン販売・PaperLabの協力のもと国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向け、どのようにSDGsを意識して企業活動をするべきか、その実例やレポート、価値ある提言などを紹介する「SDGs Lab」Webマガジンを月2回発刊します。

地球に住む一員として、限りある天然資源を守り、社会課題を解決し、誰一人置き去りにすることなく、持続的に成長していくこと。それは、公的な機関および民間企業、そして一個人に課せられた使命であり、互いの責任ある行動、消費、協調が欠かせません。

「SDGs経営」「自治体SDGs」を推進し、企業と地方公共団体の活動に変革を起こしていくために必要なことは何なのか。有識者からの提言、変革者の「実践知」をお届けし、皆様の企業活動を変革する一助となれば幸いです。第20回の今回は、前回に引き続き、内閣府の遠藤健太郎参事官に、地方創生SDGsの官民連携や金融分野での取り組みについてお話をお伺いしています。
内閣府
地方創生推進事務局 参事官
遠藤 健太郎氏

―前編で、SDGs未来都市における官民連携の事例をご紹介いただきました。SDGsを軸とした自治体と企業の連携を、内閣府はさらにどうやって加速させていくのでしょうか。

遠藤 2018年8月に、内閣府が事務局となり「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」を設立しました。設立から2年弱が経過し、会員数は20年5月末時点で1445団体。そのうち自治体は560です(全都道府県・全政令指定都市を含む)。このプラットフォームを使って自治体と企業のマッチングを支援しています。会員は、「食品ロス」「地域のエネルギー」というように、テーマを提案して分科会を設置することが可能です。皆さん積極的で、昨年度は37件の分科会が設置されました。

さらに12月からは、Web上でも展開中です。自治体に「こういう課題を企業と解決したい」と情報を出していただき、それを見た企業がコンタクトできる仕組みです。これらの環境を整えることで、25年にはマッチング数を累計1000まで増やしたいと考えています。

→水を使わず紙を再生PaperLabの官民連携事例を見る

―金融分野でも地方創生SDGsの取り組みをされています。

遠藤 地方創生に向けた地域社会の課題解決に資するビジネスに民間資金が投入されれば、その企業が発展して地域経済を活性化すると同時に、地域の課題も解決します。

そこで内閣府では19年1月に「地方創生SDGs・ESG金融調査・研究会」を設置して、地域課題の解決に向けたSDGs・ESG金融のあり方について調査・検討を行い、同年3月に報告書を取りまとめました。報告書には、SDGsに積極的に取り組まれている地域の事業者に対して金融・非金融のサービスを提供することによって、地域の課題を解決しながらキャッシュフローを生み出し、得られた収益を地域に再投資する「自律的好循環」の形成を目指すことが重要である旨が盛り込まれました。

さらに同年8月には内閣府に「地方創生SDGs金融調査・研究会」が設置され、「登録・認証制度」「金融表彰制度検討、地方創生SDGsに係る金融商品・サービスの事例の普及、地方創生SDGs取り組み達成度評価」などについて検討が行われました。さらに11月には、報告書「地方創生SDGs金融の官民連携のパートナーシップによる自律的好循環形成に向けて」を公表。現在はその報告書を踏まえながら、「地方創生SDGs金融スキーム」の実現に向けて、自治体による登録・認証制度などのガイドライン、地域金融機関の表彰制度などの検討を行っているところです。

自治体も注目する、官民連携の機会創出

―企業や投資家は、地方創生SDGsをどのように捉えているでしょうか。

遠藤 内閣府では20年1~2月に、上場企業および機関投資家などを対象にアンケート調査ならびに取り組み事例調査を実施して、3月に報告書ならびに事例集を取りまとめました。

まず企業のほうをご説明すると、地方創生SDGsにすでに取り組んでいる企業は回答の約4割、検討中を合わせると6割を超えました。ステークホルダーとの多様な連携については「必要である」と答える企業が54%を占め、その企業が重視する連携先として最も多かったのは「市区町村」、次いで「都道府県」となりました。

自治体との連携を重視する企業からは「自治体と企業によるマッチングの仕組み」のほか、「自治体と企業が連携した取り組み事例の見える化」「自治体と企業の連携に対する国の金銭的な補助」「自治体と企業間における情報共有・相談場所の設置」を求める声が多かったです。それを受けて、内閣府では、取り組み事例の見える化を強化したり、マッチングイベント実施などによる官民連携の機会創出などの取り組みを進めています。

続いて機関投資家らへの調査では、「地方創生SDGsへの取り組みを行う企業には、より積極的に投資する」という回答が約5割ありました。また93%が「ESGやSDGsを推進している地方自治体は、取り組みを行っていない地方自治体より資金を集めやすい」と考えていました。地域レベルでのSDGsの取り組みは、投資家の視点から見ても考慮されるポイントになってきたようです。

→地球環境保全と、地方創生を叶えるPaperLabをもっと知る

先行事例の共有が地方創生SDGsを前進させる

―内閣府の今後の計画や目標を教えてください。

遠藤 今年度から第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が始まりました。地方創生全体では地方に仕事をつくり、安心して働けるようにすることや、若い世代の子育ての希望をかなえることなどにより、魅力的な地域をつくり、誰もが活躍できるような持続可能なまちづくりを進めています。

こうした取り組みを進めるに当たっては、市民、企業、自治体などのまちづくりの関係者が、共通言語であるSDGsを横断的に活用してパートナーシップを構築することが重要です。とくに地域の行政機関である自治体には、SDGsを活用した将来のビジョンづくり、推進体制の構築、さまざまな自治体の計画へのSDGsの反映、市民や企業とのパートナーシップ形成を進め、関係者一丸となった持続可能なまちづくりにつなげることを期待しています。

内閣府は全国約1800の自治体に対して毎年アンケートを実施していますが、SDGsに取り組んでいる自治体の割合は、17年に1%、18年に5%、19年に13%でした。年々増加していますが、5年後にはこの割合を60%まで高める計画です。

→PaperLabでSDGsを実現した例とは?

―目標達成に向けた課題は何でしょうか。

遠藤 先行事例を多くの自治体の方に知ってもらうことが重要です。例えば市民にSDGsを浸透させたいと考えたとしましょう。そのために、職員の名刺にSDGsのロゴを入れる自治体もあれば、SDGsのイベントを成人式と組み合わせた自治体もあります。そういった各自治体の工夫を共有できれば、まだSDGsに取り組んでいない自治体も、一歩踏み出せるかもしれません。内閣府としてぜひその機会を増やして、地方創生SDGsの普及拡大に努めていきます。

【Column】
新型コロナウイルス感染症対策に伴う外出の自粛により、「ニューノーマル」への意識が高まっています。地方創生においても、自治体は「新しいスタイルで働きたい、生活したい」という市民の声を捉えて、それを支えていく必要があります。そのときに軸になるのは、「誰一人取り残さない」というコンセプトを持つSDGsでしょう。経済・社会・環境のバランスを取りながら地域課題解決を図ることで、地方創生はいっそうの充実が期待できます。
ただ、内閣府のアンケート調査でも明らかになったように、今も地方創生SDGsに着手していない自治体は少なくありません。原因の1つは、意欲はあっても、具体的な方法についての情報が少ないこと。遠藤参事官が「先行事例を多くの自治体の方に知ってもらうことが重要」と指摘していたように、先行事例を知ることが地方創生SDGsへの第一歩になります。
SDGs未来都市に選定された長野県をはじめ、今、自治体で導入されているのが、オフィス内で使用済みの紙から再生紙を作る「PaperLab」です。通常、製紙には大量の水を必要とします。
1年間、PaperLabを稼働して作れる紙は約7.7t。通常の製紙で同じ量の紙を作るときには、7,610m3(注1)の水を消費します。これは25mプールで換算すると21杯分以上(注2)。一方、PaperLab A-8000が使用する水はわずか70m3(注3)、通常の製紙に比べて1%弱の水しか消費しません。
しかし、こちらのPaperLabは、機械で衝撃を与えることで、紙を繊維にまでほぐし、水をほとんど使わずに紙の再生を実現します。この製品は、SDGsのゴールにもある環境意識の向上、さらには地域の魅力向上につながる製品と言っていいでしょう。地方創生における、SDGsの取り組みをどこから始めていいかわからないという自治体は、導入した自治体の事例を参考にしてみてはどうでしょうか。PaperLabの地方創生SDGs例を知る
(注1)P.R.VAN OEL & A.Y. HOEKSTRA(2010)
(注2)25mプール:長さ25m×6レーン(レーン幅2m)×深さ1.2mの場合、360m3
(注3)東京都市大学 環境学部 伊坪研究室算出(2018)
お問い合わせ
PaperLab/エプソン販売