在宅勤務を続け「領収書出社」を避ける秘策は

税制改正を味方につけ、経理業務の効率化を

月末は領収書原本と入力データを突き合わせる作業で忙しい、という経理担当者は多い
緊急事態宣言を経て、広がりを見せた在宅勤務。同時に話題となったのが、「領収書出社」や「ハンコ出社」といわれる問題だ。“ウィズコロナ”といわれる状況が長く続くかもしれないことを考えると、企業は領収書および承認作業のデジタル化など、テレワーク環境を整え、無駄な出社をなくす必要がある。経理業務をデジタル化し、業務効率を改善できれば、厳しい経営環境を乗り切る助けにもなるはずだ。領収書のデジタル化にいち早く取り組み、成果を出している企業事例を紹介する。

経理部門がテレワークの壁になっている

日本CFO協会が2020年3月〜4月に実施した調査によると、経理部門がテレワークを実施できない最大の理由について、77%の企業が「請求書や証憑(しょうひょう)など紙の書類がデジタル化できていない」ことを挙げた。またテレワーク実施中の企業に紙の書類や証憑があるか聞いたところ、64%が「ある」と回答。

コンカー
代表取締役社長
三村真宗氏

「経理部門がテレワークの壁になってしまっていることが浮き彫りになりました」と指摘するのは、コンカー代表取締役社長の三村真宗氏。

「日本のキャッシュレス決済比率は、16年時点で19.9%。先進国の中でも最低レベルにとどまっています。しかしわれわれの調査では、76%の日本企業がキャッシュレスで経費を精算したいと考えていることがわかっています」(三村氏)

コンカーの調査では、経費精算を紙で行う割合が31.5%、表計算ソフトで手入力する割合が12.6%で、精算にかかる時間は1カ月平均で59分。「調査対象に、経費を使う機会の少ない内勤業務の人も含まれていることを踏まえれば、外回りの営業の人などは1時間以上、経費精算に費やしていると考えられます」(三村氏)。

外回りの営業の人などは1時間以上、経費精算に費やしていると考えられる

これらの問題について三村氏は、「『SAP Concur』を使い、3つのステップで改善していきましょう」と呼びかける。1つ目は、領収書の画像やコーポレートカードの決済データを領収書代わりに使う「ビジネスキャッシュレス」。2つ目は、「SAP Concur」の中で設定したルールに基づき、自動で違反や不正がないかを検知する「承認レス」。3つ目は、AIで不正を自動検知し、不正があれば徹底的に深掘りする「AI不正検知」だ。

三村氏は「不正検知はすでに実施している企業が増えていますし、20年10月の電子帳簿保存法改正から、デジタル決済データを領収書の代わりに使えるようになります。ぜひ『SAP Concur』を使って、経費精算、間接業務をデジタル化していただければ」と語った。

10月からキャッシュレス=ペーパーレス時代が始まる

「経費精算におけるこれまでの規制緩和を振り返ると、紙の領収書の代わりにスマートフォンで撮影した画像が使えるなど、便利になった一方で、自筆の署名を行ったうえでの撮影が必要なことや、受領者本人が行う場合、3営業日以内の電子化が必須など、不便な点も多くありました」と語るのは、コンカー戦略事業推進室室長フェローである船越洋明氏。

コンカー
戦略事業推進室室長フェロー
船越洋明氏

そのためコンカーは、コーポレートカードを使用した際に、クレジットカード会社から送信されるデジタル明細を、そのまま領収書として使えるよう、システムの開発や法改正のための働きかけをしてきた。

キャッシュレス決済におけるデジタル明細の対象には、コーポレートカード、交通系ICカード、QRコードの3つがある。「SAP Concur」はクレジットカードの主要5ブランドと連携済みで、交通系ICカードはJR東日本のSuica、西日本鉄道のnimocaと実証実験を行っており、QRコードはPayPayとLINE Payに対応する予定だ。今後デジタル明細が利用可能になれば、紙の領収書の受領や電子化、回収、保存、廃棄といった一連の作業がなくなると考えられている。

デジタル明細を活用すれば、署名や撮影などの手間が省けるように

「企業によっては、接待交際費や宿泊代などの一部の経費については、引き続き紙の領収書を受領し、画像を添付させ、内容を確認したうえで経費精算を行う必要も出てくるでしょう。しかし大方の経費については、思い切ったルール改正が可能になるはずです」(船越氏)

船越氏は20年10月に施行される電子帳簿保存法の改正について、「当社が9月に開催する『SAP Concur Fusion Exchange 2020』では、夏に国税庁から発表される改正内容の詳細についてご説明します。毎年発行しているガイドブックも、10月から最新版を提供させていただく予定ですので、ぜひご覧ください」と語った。

e-文書法対応の下準備として「SAP Concur」を導入

ここからは、領収書のデジタル化にいち早く取り組み、成果を出している企業事例を紹介する。

まず1社目は、アプリ開発・保守、IT運用、セキュリティーサービスなどを提供している、中部電力グループの中電シーティーアイ。19年5月から業務改革プロジェクトの一環として、電子化した請求書や領収書の保存が認められる、e-文書法への対応に取り組んだ。

中電シーティーアイ
プロジェクト第1ユニット
電力業務システム第3部
インプリメントサービスグループ
リーダー
服部健悟氏

近年AI、IoT、ブロックチェーンなど高度なIT技術が注目されるようになったことを受け、「当社も業務改革を実行し、高度なIT技術にまで事業を広げる必要があると考えました。e-文書法への対応に取り組めば、身をもって改革のマインドを醸成し、パッケージやクラウドシステムの導入も経験できると考えました」と話すのは、同社のプロジェクト第1ユニット電力業務システム第3部インプリメントサービスグループリーダーである服部健悟氏。

導入に当たっては、経理部門におけるペーパーレス化を目指したという。e-文書法対応の下準備として、19年4月に「SAP Concur」の導入を終え、カード連携など申請業務の効率化のほか、Auditサービスの利用により、経理部門の負担が軽減されるよう対応した。当初は19年10月にe-文書法対応を終える予定だったが、「途中で規制緩和があったので、それに対応するために、運用開始を20年2月に変更しました」(服部氏)。

今後はBIの活用も視野に入れ、さらなる効率化を模索するという

新制度による混乱を防ぐため、運用検討とマニュアル作成には、十分な期間を確保した。運用開始後は、不正余地のない申請を増やすことに成功、紙の紛失や消失リスクも軽減できたという。今後について服部氏は、「システムにデータの分析を行うBI(ビジネスインテリジェンス)機能を組み合わせて、さらに無駄を減らしていきたいです」と語った。

4年で回収予定の計画を2年目に達成

2社目に紹介するのは、自動車部品の製造・販売を手がける武蔵精密工業だ。長年にわたりグローバルで利用するITプラットフォームを構築してきた同社は、18年に経費精算の月次締め処理時間の短縮を目的に、「SAP Concur」を導入した。

「経理業務のボトルネックとなっている部分を検証したところ、経費精算処理の65%が月末に集中しており、さらにそのうちの25%が出張精算であることがわかりました。紙の書類のダブルチェックなど属人的な作業が多く残っており、処理の流れが複雑だったことも遅れにつながっていたと思います」と語るのは、武蔵精密工業でWork by 3S Project プロジェクトリーダーを務める清水佳代子氏。

武蔵精密工業
Work by 3S Project
プロジェクトリーダー
清水佳代子氏

これらの問題を解消するため、同社は「SAP Concur」の標準機能を最大限に活用。「まずペーパーレスに取り組みましたが、社外からも精算処理が可能になったことで、領収書紛失の心配がなくなりました。管理工数が減ったので、経理のメンバーからの評判もよいです」(清水氏)。

コーポレートカードについては、それまでの127枚から210枚まで導入数を増やし、すべてのデータを「SAP Concur」に送るようにしたという。

「出張前の費用の仮払いや、帰社後の精算の必要がなくなりました。経理のチェック体制についても、労働組合と交渉して出張に関する規制を大幅に減らしたことで、システムを使ったチェックが容易になり、差し戻しなどが激減しました」(清水氏)

コーポレートカードを使用するだけで、デジタル明細が「SAP Concur」に連携される

こうした取り組みの結果、月次締めの処理は3日に短縮。さらに、『4年の利用で回収』と見込んでいた「SAP Concur」の費用対効果については、2年目に目標を達成したという。今後について清水氏は「交通系ICカードやQRコードでもデータ連携を利用できるようになれば、さらなる生産性のアップが期待できます。これまでの取り組みでデジタルの効果を強く実感しているので、今後も適用領域を広げていきたいです」と語った。

領収書の電子化はペーパーレス化の一環、トップダウンが必要

3社目に紹介するのは、野村ホールディングス(以下、野村HD)の子会社としてグループ内の財務・経理機能を担うコーポレート・デザイン・パートナーズ。野村グループでは14年に「SAP Concur」を導入後、コーポレートカードや交通系ICカードの利用を推進し、データ化と標準化による「見える化」を基にコスト削減を進めてきた。19年には野村HD、野村證券の約1万5000人を対象にした証憑電子保管に取り組んだ。

コーポレート・デザイン・パートナーズ
クライアントソリューション2部
部長
清田亮平氏

「唯一進んでいなかったのが、紙の領収書の電子化です。効率化の防げとなる紙の領収書の取り扱いを、長い間何とかしたいと思っていましたが、ようやく昨年、着手することができました」と話すのは、同社のクライアントソリューション2部で部長を務める清田亮平氏。

「現在の電子帳簿保存法では、3営業日以内に領収書を撮影しタイムスタンプを付与しなければなりません。そのため、このルールを徹底させ、すぐに撮影をするという習慣を根付かせるのに苦労しました」(清田氏)

導入の進め方には、さまざまなポイントがあるという。清田氏は「プロジェクトの前の段階から、コーポレートカードやモバイル端末を広く配布していたことはプラスになりました。また全社導入の前に一部の部署で試験運用を行ったり、新旧の経費処理方法を並行運用するなど工夫したことで、大きな混乱を防ぐことができました」と説明する。

紙の領収書を扱うことによる課題についても、6つのポイントを挙げた

領収書電子化の成果をいちばん実感したのは、コロナ禍でも経費処理が継続できたことだという。「10月の電子帳簿保存法改正によって、コーポレートカードや交通系ICカードと連携したデジタル明細が使えるようになれば、さまざまなルールから解放され、その結果、チェックの工数も減り、経費処理全体の負担がさらに軽くなると期待しています」(清田氏)。今後は社内のプロジェクトで培ったノウハウをソリューション化し、同様の課題を持つ外部にも提供していく考えだ。

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