コロナ禍で浮き彫りに、医療業界大手の底力

ヘルステックで進化、遠隔ICUや地域医療

世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスによって、人々の生活も経済活動も様変わりし、ビジネスシーンにも甚大な影響を与えている。そんな激動の時代を、ヘルスケア&テクノロジー(ヘルステック)の分野から支えるのがフィリップスだ。もともとオランダ発の総合電機メーカーとして広く知られた同社だが、2017年からは明らかにヘルステック領域にフォーカスした。協業先とともに開発したデジタル技術で、「2030年までに年間30億人の人々の生活を向上させる」をいうミッションを掲げ、ヘルスケア業界の革命を目指す。フィリップス・ジャパンの代表取締役社長・堤浩幸氏に、これからの時代に目指すべき、新しいヘルスケアのあり方について聞いた。

コロナ禍で見えたヘルステックが果たす役割

新型コロナウイルスが流行の兆しを見せたとき、フィリップスは即座に人工呼吸器の増産を決定した。これまで世界中でヘルスケア分野を牽引してきた経験のもと、感染拡大の可能性が高いと危惧したためだ。

フィリップス・ジャパン
代表取締役社長
堤 浩幸

「コロナ禍に際し、遅くとも2020年初頭には特別会議を開き、人工呼吸器の増産を決定しました」と同社代表取締役社長の堤浩幸氏は振り返る。「米国で生産対応している人工呼吸器の生産数を、20年1月までに約2倍(週に1000台)ほどに増産しました。さらに今年7月には、約4000台の生産ペースが整う見込み。また既存の製品とは別に、新たな汎用型人工呼吸器の承認申請も実施し、週に1万5000台の供給を予定しています。

当社の歴史は、1891年にオランダでスタートした白熱電球の生産に始まります。ここからさまざまな研究を続け、また時代の流れやニーズを柔軟にくみ取った結果、MRIなどの医療機器やカセットテープ、CDなどの記録メディアを生み出すに至りました。時代が流れても、その時々の状況を的確に捉え、つねに先駆的なビジネスを実現することで社会に貢献してきたのが当社の特徴です。今回も、昨年末に新型コロナウイルスが流行し始めた時点で具体的な対応策を考えた結果、スピーディーかつ効果的な対応を取ることができました」(堤氏)。

20年5月時点で、同社が新型コロナウイルス対策に投資した金額は約1億ユーロ(約115億円)に上る。短期間でこれだけの判断をしたことに驚かされるが、これまで長年、世界中で医療機器業界をリードしてきた同社には当然のことだった。同社が掲げるビジョンは「2030年までに年間30億人の人々の生活を向上させる」こと。人工呼吸器の増産は、まさにこのビジョンを具現化する取り組みだ。

「コロナ禍では残念ながら、ICUなどの医療リソースが患者数の増加に追いつかず、医療崩壊が起きてしまった国もあります。各国が対策を講じていますが、そもそも世界的に、ICU専門医の数が少ない。日本も同じ課題を抱えています」(堤氏)。日本のICU専門医は約1800名(2019年4月時点)、一方でICUベッドは約6000床(※1)ある。24時間365日十分な医療を提供するにあたって、専門医の不足は明らかだ。

こうした状況を改善しようと、同社は2018年から、昭和大学との共同研究として遠隔集中治療患者管理プログラムの構築を進めてきた。「これは、ICUから集められたビッグデータを基に医師が状況を分析し、患者を集中管理する仕組みです。最終的には、1人の医師が最大150人ほどの患者を診療支援できるようになる想定。すでに多くの問い合わせをいただいています」と、堤氏は胸を張る。

さらに同社は今年4月末、新型コロナウイルス対策に特化した、同プログラムのパッケージソリューションを発表。即日、大規模病院で導入が決定している。このように、ビッグデータなどの最新技術はいま、医療の分野にも生かされ始めている。ほかにも、IoT技術を活用したSOSボタン(※2)などがあり、住民を守る医療セーフティーネットとして意義深い。

(※1)出典:厚生労働省医政局、日本集中治療医学会
(※2)ホテルや自宅から、近くのナースステーションへ通知を届けるボタン

ヘルステックの力で格差広がる地域医療の変革

フィリップスが磨き上げてきたヘルステックの技術は、日本の地域医療を支える基盤にもなりつつある。しかし医療の分野では、都市部と地方の「IT活用の格差拡大」が深刻な問題になってきている。

この状況を打破すべくフィリップスは、ソフトバンクやトヨタ自動車の共同出資会社・MONET Technologiesと連携。長野県伊那市で「MaaS(Mobility as a Service:マース)」事業に参入した。

伊那市で使用されている専用車両。今後、地元開業医や中核病院との連携を進めていく

「MaaSでは、看護師などが専用車に乗って、自力での移動が難しい患者や高齢者の自宅を回ります。さまざまな機能が備わっていますが、目玉はオンライン診療。車内と医師をテレビ電話でつなぎ、医師がリアルタイムで診察します。すでに実証実験として車両運行を開始しており、来年3月まで行う予定。各自治体の状況に合わせて、予防医療や介護、歯科、災害などの領域にも展開していきます」と堤氏は期待を寄せる。

高齢化や医療費の増大、医療スタッフの不足など、医療の分野では地域によってさまざまな課題が山積している。MaaS事業の展開が進めば、地域医療を根本的に変革する第一歩となりそうだ。

ドイツのサッカー界に続き日本でも
スポーツヘルスに新風を起こす

長年培ってきたヘルステックの技術とイノベーティブな社風を強みに、次々に新しい施策を生み出しているフィリップス。その取り組みは医療の世界を飛び越え、スポーツの分野にも及ぶ。例えばドイツでは、個人が日常的に運動をして身体機能を上げ、モチベーションを高めながら健康を維持することが推奨されている。

「ドイツではサッカー協会とドイツフィリップスが提携して、選手のフィジカルをデータ化し、トレーニングや食生活に生かす取り組みを行っています。一般市民も、希望すればプロ選手と同じクリニックでサポートを受けられる仕組みです。ヘルステックを通じて、医療従事者以外にも広く貢献していこうという当社の理念がよく表れた事例です」(堤氏)

日本でもドイツでも変わらずフィリップス全体に息づいている、社会に貢献するイノベーションを生み出そうとする姿勢。日本のスポーツヘルスの分野でも、今後さらに具体的な進展が期待される。

「予防医療」の発想で、睡眠領域の消費者向け商品登場

日本は、フィリップスが世界に展開する市場の中でも重要なマーケットの1つだ。しかし諸外国と日本では、健康意識に大きな違いがある。日本では「病気にかかった後の対応」に重きが置かれるが、欧米では「病気を予防する健康意識」が強い。象徴的な例が、オーラルヘルスケアだ。

「口内環境は全身の健康状態に影響を与えるとされています。欧米では、予防医療の観点からオーラルヘルスケアに注目が集まっており、電動歯ブラシの使用率も約7~8割と高いです。一方で日本は、まだ2割ほどの使用率にとどまっています(※3)。日本でも、病気になりにくい体づくりを目指す『予防医療』の重要性を広めていきたいと考えています」(堤氏)

こうした意識の違いを鑑み、同社は睡眠の領域で、日本の特徴に合わせたソリューションを展開している。日本人の睡眠不足は深刻だ。1日の平均睡眠時間が6時間未満の割合は男女とも40歳代が最高で、それぞれ48.5%、52.4%(※4)。睡眠不足による日本の経済損失は年間15兆円に上る(※5)ほか、日常生活においても判断力・記憶力の低下などを誘発しかねない。

SmartSleepは、MとLの2サイズで展開。フィリップスが、世界的な睡眠専門医と科学者とともに開発した

(※3)フィリップス調べ
(※4)出典:厚生労働省、平成29年国民健康・栄養調査結果
(※5)https://www.oecd.org/gender/data/(本広告記事作成時点)

こうした状況を改善して日本人の睡眠の質を向上しようと同社は2019年11月、睡眠デバイス「SmartSleep」を発売した。「よりよい睡眠は、QOLの向上にもつながります。日本人がより健康で快適な生活を送るために、役立てられればと思います」(堤氏)。

コロナショックを経て、ヘルスケア界は今新たな時代となりつつある。そして予防から診断、治療、ホームケアに至るまで、医療の世界を牽引しているフィリップスは、長い歴史の中で築き上げてきた医療機器メーカーを脱し、変革のときを迎えている。

ヘルステックをフルに活用したイノベーションで、つねに10年、20年先を見据えながらヘルスケアの未来をつくる同社の、次なるステージに注目が集まる。

お問い合わせ
フィリップス・ジャパン
関連ページ
遠隔集中治療患者管理プログラム
ヘルスケアモビリティ