失敗しないテレワーク3つの鉄則 重要なのはルール、ツール、プレイス
従来の慣習は阻害要因になる可能性も
フォンアプリは、Web電話帳サービスで国内トップのシェアを誇るIT企業である(※)。同社では2018年より、働き方改革の一環としてテレワークを導入。そして今回、200名を超える全従業員のテレワーク化を速やかに実現した。テレワーク導入の肝について、同社副社長の中川紘司氏に聞いた。
中川氏が、テレワーク導入を成功させるための重要なポイントに挙げるのが、フォンアプリが実施する、「ルール、ツール、プレイス」の3原則だ。
「テレワークというと、とかくビデオ会議やチャット、あるいは作業環境についての議論から始まりがちです。もちろん『ツール』や『プレイス』も大事なのですが、会社として『働き方のルール』を示すことも重要になります」
会社に根付く従来の慣習や常識は、テレワーク導入の阻害要因となりかねない。だからこそ、テレワークを見越した新しい働き方の指針を明確化することも重要になるというわけだ。
(※)出典:MM総研「Web統合電話帳アプリケーション市場の概況」
https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=347
時系列で変化する社員の困りごとに対応
テレワークを実施するうえでビデオ会議ツールやチャットツールは必須となるが、日頃からテレワークを推奨し実施しているフォンアプリでさえ、今回の緊急事態宣言を受けて全社テレワークを進めてみると、以下のような問題が起こった。同社がそれをどう解決していったのかを見てみよう。
「まず突き当たった壁は、若手社員を中心に、自宅に大容量のネット回線がないという声が非常に多かったです。そこに対しては、まずはスマホのパケット容量を増やす臨時手当てを先行させつつ、並行して固定回線手当てのルールを作成・全社展開しました。またそれ以外に、作業する椅子やデスクがない、作業の質を保つセカンドモニターやビデオ会議用マイクがないといった問題です。これに対しては、設備購入を補助する『テレワーク手当』を設けて対応しました。」
このように、一言でテレワーク対策と言っても、時間とともに社員の困りごとも変化するため、会社側には柔軟かつスピーディな対応が求められる。
また、テレワーク実施3週間頃からは、人と会う機会が減り寂しいという声が聞かれるようになったため、毎日30分間ウェブカメラをオンにしてチーム毎に雑談をする時間や、雑談専用のチャットルーム作成もルール化したという。なお、フォンアプリでは従来から「ありがとう」の気持ちをポイントとしてクラウド上で送り合うサービスを自社で開発し利用しているが、全従業員テレワーク化以降、そのポイントの利用率は20%以上高まっているとも言う。とくに、経営層のメンバーからは、「オフィスにいなくても、『ありがとう』を伝え合う様子がクラウドで見えるため安心できる」との声も聞かれた。
大事なことは「ルール、ツール、プレイス」それぞれの領域で、社員の困りごとを解決し、変化する環境の中でも社員に最高のパフォーマンスを発揮してもらうこと、そして、そのスタンスを示すことが会社には求められる。
そして、同社のテレワーク業務を大きく後押ししているのが、スマホだ。社員が使うスマホには、自社のWeb電話帳アプリ「連絡とれるくん」が入っている。これにより社員全員で同じクラウドベースの連絡帳が共有され、社内外問わず、所属部署、使用するツール、専門性、趣味などが一元管理され、一目でわかるようになっている。テレワークでは雑談等によるナレッジの共有が失われがちだが、Web電話帳で「法務」などと検索し、専門性の高い社員を見つけ、そこからチャット等を起動して話をすぐに聞くこともできる。
また、お客様から頂戴した名刺をスマホカメラなどで簡単にデータ化し、共有することも可能。テレワークをしている自宅でも顧客と連絡を取ることはもちろん、お客様への電話でも、会社の番号を使った発着信ができるのも、このアプリの利点だ。(利用には各種提携サービスの別途契約が必要)
「弊社が掲げている『スマホでできるテレワーク』ですが、決してすべての作業をスマホで行うということではなく、スマホがあらゆるコミュニケーションの起点となるイメージです」と中川氏は指摘する。
テレワークの大きな“ひな形”に
同社では、以前からこうしたテレワークに必要な「ルール」「ツール」「プレイス」に着手していたため、大幅にテレワーク化を進める必要性が出た際も、「起こり得るさまざまな課題をすでに解決していたので、スムーズに完全テレワーク化できた」と言う。
フォンアプリが提案するこうした「スマホでできるテレワーク」は、すでに同社以外の企業でも多くの実績を上げている。テレワークを確実かつ効果的に導入するうえで、1つの大きな選択肢となるだろう。