流通・小売業界の情報共有革命 シリーズ働き方改革セミナーレポート

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
EC分野の伸長、顧客ニーズの多様化など、事業環境の急激な変化にさらされている小売業界も、長時間労働是正、生産性向上という働き方改革を迫られている。大阪、東京の2会場で開かれた「シリーズ働き方改革 流通・小売業界の情報共有革命」では、変革期にある流通・小売業の成長戦略や、その基盤となる情報共有を円滑に行うためのDropbox、LINE WORKSといったツール、それらを使って生産性向上を実現した事例が紹介された。

主 催:東洋経済新報社
協 賛:Dropbox Japan ワークスモバイルジャパン
協 力:商業界

オープニング

(大阪会場)
Dropbox Japan
代表取締役社長
五十嵐 光喜氏
(東京会場)
Dropbox Japan
ジャパンマーケティングリード
上原 正太郎氏

Dropbox Japanの五十嵐光喜氏(大阪会場)、上原正太郎氏(東京会場)は、多くの会社が、長時間労働是正と並ぶ働き方改革のテーマ・生産性向上の取り組みになかなか成果を得られない現状を指摘。メールや電話、ファクスに頼る情報共有では、本部と店舗間の情報が伝わりにくい、大量のメールから必要な情報を探す手間が無駄、といった課題を抱える。「これらの課題を改善し、働く時間を減らしつつ、業績を維持・向上させるお手伝いをしたい」と語った。

基調講演
百年に一度の大変革期を迎えようとしている中…「スーパーマーケットの近未来戦略」とは…

商人ねっと
代表取締役
水元 仁志氏

流通・小売業向けにコンサルティング、教育研修を提供する商人ねっとの水元仁志氏は、小売業に迫る4つの大変革を説明、対応を促した。第1は、コモディティ商品の購入が、安さ、アクセス、品ぞろえの豊富さなどを武器にするECにシフトしていて、実店舗でも、スマホで注文した商品を店で引き取るサービスや、買い物に行けなくなった高齢者の御用聞きニーズといった買い物行動の変革への対応が必要になる。第2は、キャッシュレス決済による変革で、決済のビッグデータから、いつ、どこで、何が、どれくらい売れるかを予測できれば、流通を最適化できるようになる。これは、第3の品ぞろえ変革につながり、AIを使って発注、棚割りなども最適化するオペレーションの変革も加わって、実店舗は大きく変わる可能性がある。第4に、店舗の最適化で不要になった売り場スペースで料理教室を開催するなど、店舗の存在価値は、モノを買う場からコミュニティの場に変革するかもしれないと指摘した。モノからコト、さらにトキ・イミへと、消費の形が広がる中で、実店舗は「リアルでしか実現できない顧客体験を追求することが重要」と述べた。

課題解決講演(1)
ここから始める小売業の“情報共有革命”
―生産性を上げる「働き方改革」はじめの一歩

(大阪会場)
Dropbox Japan
西日本営業部 部長
龍村 洋一氏
(東京会場)
Dropbox Japan
インダストリーリーダー
筒井 裕平氏
(大阪・東京会場)
Dropbox Japan
ビジネスディベロップメントリード
佐野 健氏

Dropbox Japanの龍村洋一氏(大阪会場)、筒井裕平氏(東京会場)は、世界で約45万チームが利用するDropbox Businessは、情報セキュリティ基準を満たし、国内にも追加負担なしで利用できるデータセンターを開設したと説明。「皆さんの情報共有の課題を解決できる」と述べた。

続いて同社の佐野健氏が、出店計画、商品開発、本部・店舗間の情報共有の3シーンでのDropbox活用例をデモンストレーション。出店計画では、店舗設計のフォルダを作り、社外の建設業者に、そのフォルダへのアップロード限定でアクセスを認めるファイルリクエストを送り、CAD形式の設計図を受け取る。PCにCADソフトがなくてもプレビュー表示で内容を確認でき、社内決済も、コメント機能で上司の了承を得られる。商品開発では、共同ワークスペースおよび案件管理のためにDropbox Paperを活用。チームのアイデアを集約し、タイムラインやタスクで進捗管理をする。キャンペーンでは、本部の棚割り指示書を店舗と共有。ツール間で連携するLINE WORKSで連絡を取り、店舗がアップロードした写真で棚割りを確認する。ほかにも、誤って削除したファイルも簡単に復元できるなど便利な管理機能に加え、必要資料をAIで自動検索する機能も付いた新アプリケーションDropbox Spacesも登場。コラボレーションツールとして、充実を図っていることを説明した。

課題解決講演(2)
小売業界の「働き方改革」に「仕事用のLINE」が刺さる理由
~会社を強くする新しいコミュニケーションのカタチ~

ワークスモバイルジャパン
執行役員
萩原 雅裕氏

ビジネス版のLINE、LINE WORKSを提供するワークスモバイルジャパンの萩原雅裕氏は、働き方改革について、法令対応のためだけでなく、組織人材を活性化させ、業績向上を図ろうと取り組む企業が増えていると指摘。「会社のベースになる情報共有の仕組みを整えれば、人が動くようになって、売り上げに直結する。社員を増やさず、売り上げを2倍にできた例もある」と話した。LINE WORKSは、LINEの使いやすさをそのままに、ビジネス向け機能を備えたグループウェアだ。電話やメールに代わる、本部と店舗や物流センター間の連絡手段として導入し、コミュニケーションの質・量を改善した小売店や卸売会社。各店長を集めたトークルームで、売り上げ目標を伝え、他店の反応も見えるようにしたことで、一体感やモチベーションの醸成につなげた自動車ディーラー。顧客とLINEで連絡する際のセキュリティ対策として、個人ツールを使わないために導入した例を紹介。「LINE WORKSは、他システムとの連携もでき、勤怠管理や日報作成などを行うこともできる。使い方がわからないといった現場のリテラシー問題もほとんど起きない」と、その長所をアピールした。

事例講演
生産性を高める時間の造り方
―三杉屋が歩んだ「仕事のための仕事」撲滅活動

三杉屋
経営企画部 部長
大朝 理充氏

京阪神エリアを中心に青果専門店、スーパーなど24店を展開する三杉屋の大朝理充氏は、Dropbox BusinessとLINE WORKSを使った業務効率化の事例を紹介した。同社は2008年、店舗からファクス送信された発注書を、本社仕入れ部門がスプレッドシートに手作業で入力、集計していた作業を、店側の直接入力に変えるためにDropbox Businessを導入。その後、他部門や社外との情報共有へ利用範囲を広げた。17年には、社内の連絡・報告用にLINE WORKSを導入。個人のLINEではできないアカウント管理でセキュリティを高め、緊急性の低い社内の電話連絡で作業を中断する無駄を削減。写真を使った報告で、より正確で迅速な状況把握が可能になった。ITシステム導入では、使う人のスキルに合ったツールを導入して、現場の足かせにしないこと。全機能を使いこなせない総合パッケージより、自社業務に適したシステムを部分的に導入する。人がすべきか、機械がすべきかを、利益の視点で検討して、儲かる仕組みにすること――の3点を重視するとした大朝氏は「DropboxとLINE WORKSのツール間連携を使った業務改善も考えていきたい」と話した。