コロナで注目!「上手な換気法」3つのコツ

せき、くしゃみより微小「マイクロ飛沫」とは

「マイクロ飛沫」が密閉空間のような換気の悪い場所だとよどんでしまうという
世界を騒がせている新型コロナウイルスの感染拡大。感染症対策に詳しい東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は、まずはウイルスとの接触リスクを減らしてクラスター(集団)の発生リスクを防ぐため、3つの「密」を徹底的に避けるよう訴える。さらに「マイクロ飛沫」の可能性を挙げ、私たちが今できる対策の1つとして換気の重要性を指摘する。

感染症の感染経路には、空気感染、飛沫感染、接触感染の3つがある。麻疹(はしか)や水痘(みずぼうそう)、結核は、かなり遠くまでウイルスが飛んで空気感染する感染症だ。一方、せきやくしゃみなどによってウイルスが空気中に飛び出し、1〜2mの範囲で感染するのが飛沫感染、ウイルスに汚染された手や物に触れることで感染するのが接触感染である。

「今回の新型コロナウイルスは、空気感染まではいかないが、飛沫感染と空気感染の『間』の感染が発生していると考えられる。大きくは飛沫感染の範囲だが、せきやくしゃみによる感染だけでは説明できない感染が起きています」と話すのは、東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授だ。

現在、新型コロナウイルスのクラスター発生リスクとしては、3つの要因があると考えられている。政府の専門家会議から出されている「1.換気の悪い密閉空間 2.多数が集まる密集場所 3.間近で会話や発声をする密接場面」という、いわゆる3つの「密」だ。

東北医科薬科大学
特任教授
医師
賀来満夫
東北大学名誉教授。専門は感染症学、感染制御学、臨床微生物学

「これらはいずれも、空間中にウイルスの密度が高まる環境と考えていいでしょう。とくに注意したいのは、せきやくしゃみをしていなくても、発声や会話などによって直径の小さな『マイクロ飛沫』が出ていることです。

このマイクロ飛沫が、密閉空間のような換気の悪い場所だとよどんでしまう。また、多くの人が集まって話すことで、ウイルス密度が高まり吸い込んでしまう可能性がある。そのため、換気によってウイルスの密度を低くする、空気の流れをつくってウイルスを戸外に排出することが重要になってきます」

賀来特任教授は、SARSが世界的に流行した2003年にベトナムの病院では病室の窓を開けることによりウイルスが希釈されたことで、院内感染を予防できたことを重要視している。

「ただ、どのくらいの頻度、時間で換気を行えばいいのか断言するのは難しい」と賀来特任教授は話す。だが、日常的に私たちが注意できることについて次のように話してくれた。

「今回のケースのように、空気環境が関係する感染症では、換気は非常に重要です。2〜3分で空気が入れ替わる飛行機のように、部屋の空気を強制的に入れ替えることができるシステムが望ましいですが、住宅やオフィスであれば、窓を開けて換気を意識的に行うことをお勧めします。リビングなど長く人がいる場所はもちろん、夜間の寝室なども空気がよどみやすい。また人が多く集まるオフィスなども、換気によってフレッシュな空気に入れ替えたほうがいいでしょう」

ウイルスには「接触・感染・発症」の3段階がある

実際、こうした状況下で、空気環境に対する意識は高まっている。少しでも情報を得ようと多くの人が動く中で、「空気で答えを出す会社」を掲げるダイキンは快適な空間を実現するために、いろいろな研究を行っている。その中には、感染症の研究を専門とする人材もいる。

その1人が、空調専業メーカー、ダイキンの医学博士・新井潤一郎氏だ。新井氏は「まず『接触(体にウイルスが付くこと)』と『感染(ウイルスが体中に入ること)』と『発症』は、それぞれまったく別の事象であることを理解してください」と語る。

ダイキン テクノロジー・イノベーションセンター
プロフェッショナルアソシエイト 医学博士
新井 潤一郎

「一般に、ウイルス感染拡大防止のためには『ウイルスに接触しないこと』『接触したとしても、感染しないこと』が重要です。コロナウイルスに限らず、人間がウイルスとどれだけ接触したら感染するのか、あるいは感染しないのか、断言することはできません」(新井氏)。言えるのは、私たちの身の回りのモノにはさまざまなウイルスが付着しているが、それを鼻や目、口などから体内に入ることを防ぐのが重要ということだ。

「例えば『腕を肩より上の位置に上げない』『手洗いブラシを使って手を洗う』などのマイルールを決めましょう。人は無意識に自分の顔を手で触ってしまうものですが、『腕を肩より上に上げるな』と決められれば守れる。私の実験現場でも実施しています。またこれまで爪の間まで洗う習慣がなかった人でも、100円ショップなどに売っている手洗いブラシを洗面所に置いておくだけでいい。手を洗うときにブラシを手に取れば、自然と爪に当てたくなるものです。さらに、空気中に漂うウイルスの濃度を下げるため、積極的に換気することもお勧めします。高層階だったり子どもがいたりして窓を開けづらい場合は、気流をつくって空気の流れをよくするのも一手です」と、新井氏は語る。

ただ「窓を開けるだけ」では足りない?注意すべきは…

では実際、換気をする際のコツはあるのだろうか。ダイキンで換気システムの研究開発に携わる斎藤和也氏に話を聞いた。

ダイキン テクノロジー・イノベーションセンター テクノロジー・イノベーション戦略室 技術戦略担当課長
斎藤 和也

「窓の大きさや空気の流れにもよりますが、一般的なご家庭での窓開け換気の目安は、だいたい『1時間に5~10分ほど』といわれています。短時間でも、頻繁に換気するほうが効果が高くなります。家より人の多いオフィスや商業施設では、1時間に2~3回を目安に換気するのがよいでしょう。

大事なのは、ただ窓を開けるだけではなく、全体の空気をうまく入れ替えて効率的に換気する『換気経路』を考えることです。ちなみに誤解されがちですが、通常、エアコンでは換気はできません。エアコンは、部屋の中の空気を吸い込み、それを冷たくしたり暖かくしたりして部屋の中に吹き出しているんです」(斎藤氏)

家庭で行う換気のポイントは3つある。まず、1つの窓だけでなくその対角線上にあるほかの窓も開けて、家全体に空気の流れをつくること。例えばキッチンなら、レンジフードを回しながらすぐ近くの窓を開けていても、空気の流れはその周辺のみで完結してしまう。家全体の空気がうまく入れ替わる換気経路を考えたい。

そして2つ目は、各部屋の壁に付いている「給気口」を確認すること。外から空気が入ってきて寒いという理由で閉じられてしまっているケースが多いという。しかしそうすると、換気の効率が下がってしまう。そして3つ目が「24時間換気システム」のチェックだ。これは、各部屋の給気口から空気を取り込み、集約して排出する仕組み。正しく使われていれば、約2時間で部屋全体の空気が入れ替わる。

24時間換気システムの仕組み。もともとは、新築やリフォーム済み住宅に住む人の「シックハウス症候群」(目がチカチカする、喉が痛い、めまいや吐き気、頭痛がする、などの症状)対策のために作られた
24時間換気システムのスイッチ(上)、換気口(下)の実例。自分の家ではどこについているか、ふさいでしまっていないか、確認してみよう

「24時間換気システムは、2003年の改正建築基準法以降、すべての建物に設置が義務づけられました。しかし、その存在は普段意識されにくいことから、スイッチをオフにしてしまっていることも多いようです。最近の住宅は高気密・高断熱化が進んでいますから、こうした換気機能を正しく使うことが重要です」と斎藤氏はアドバイスする。

もちろん、換気にはデメリットもある。外気の暑さ・寒さや湿気まで取り込んでしまうのも事実だ。しかし「快適かつ健康に過ごせる空気」のためにも、よりよいやり方を探っていきたい。

「これまであまり注目されてこなかった換気ですが、実はいろいろな可能性があるはず。換気の利点はわかりづらいですが、屋内環境の向上に大きく貢献しています。今後、例えば換気量や換気効果の可視化などを通じて、世の中に換気を広めていきたいと考えています」(斎藤氏)

少なくとも現時点では、「絶対コロナウイルスに感染しない方法」はない。しかし恐ろしいウイルスから身を守るためには、換気をはじめとした対策を取り、できることはやって備えておきたい。ダイキンのWEBサイト「上手な換気の方法」では、換気のうまいやり方について詳しく解説されている。確認しておきたいところだ。

お問い合わせ
ダイキン工業