リモートワークを成功に導く上司の役割は?

実践から学ぶ、在宅勤務を定着させる条件

在宅勤務でのテレワーク、リモートワークの活用が広がっている。だが、従来からリモートワークに取り組んできたIT系を中心とする企業はともかく、これから導入しようという多くの企業にとっては、何から手をつけるのか、どのように進めたらうまくいくのか、手探りになる。そこで、リモートワークに適したコラボレーションツール「Microsoft Teams」を提供する日本マイクロソフトの西脇資哲氏と、約500もの企業でリモートワークなどを使った働き方改革を支援してきたクロスリバーの越川慎司氏に、リモートワーク成功のためのノウハウやマインドを聞いた。

一時的な対応で終わらせないために

企業の間で急速に広がるリモートワークについて「今回の問題に対する一時的な対応策で終わらせしまうのは惜しい。企業は、リモートワークを定着・浸透させることを考えてほしい」と、自社でも全社員のリモートワークを実践してきた越川氏は話す。

クロスリバー 代表取締役社長
キャスター 執行役員
越川 慎司 氏

リモートワークで得られる最大の変化は、場所や時間の縛りを解くことにある。従来は、オフィスなどの決められた場所で、決められた時間に仕事をしていた。が、在宅で仕事をするなら、スーツに着替える必要も、通勤する必要もなくなる。体調や生活に合わせて柔軟に仕事の時間を管理できるようになり、無駄をなくして得られた時間は、自身のスキルアップにも使える。幸せや働きがいを感じられる環境を整え、従業員の士気を高められれば、生産性は向上するのは必然。働きがいを感じている人は、平均より45%以上も生産性が高いというデータもあるという。

会社側のメリットは、それだけではない。働き方改革関連法で求められている労働時間の削減、そして交通費や紙などのコスト削減が進み、災害など緊急時の事業継続力も高まる。さらに、ビデオ会議やメール、チャットなどは、コミュニケーションにかかる時間を効率化するので、より生産性の高い仕事に時間を振り向けられるようになる。

日本マイクロソフト
業務執行役員・エバンジェリスト
ITビジネスコミュニケーション協会 理事
一般社団法人日本デジタルトランスフォーメーション推進協会
アドバイザー
京都大学 iPS細胞研究所
コミュニケーションアドバイザー
西脇 資哲 氏

顧客対応もビデオ会議の要領でリモート化すれば、移動時間がなくなる分、より多くの顧客に、より長く接することができ、トラブルの迅速な解決にもつながるはずだ。営業部門が顧客を訪問する際、同行させたいメンバーの都合が合わない場合でも、ネットワークを通じて画面越しに顧客に接する「オンライン同行」の仕組みも取り入れているマイクロソフトの西脇氏は「リモートワークで機動力が高まり、より多くの顧客に接することができる」と語る。

顧客に寄り添い、共に課題を考える時間をいかに増やすかが問われるコト売りの時代は、機動力が売り上げに直結する。リモートワークは、儲け方の改革につながるのだ。それを従来のように、育児や介護を抱えている人だけの特別な働き方にしていてはもったいない。管理職も含めて全員に取り組んでほしい、これからの働き方だ。

リモートワークを成功に導くカギはコミュニケーションの充実

リモートワークではまず、ITツールが欠かせない。メールやチャットなどのコミュニケーションツール。クラウドのファイルストレージなどの情報共有ツール。そしてビデオ会議ツールが“三種の神器”になる。

各ツールにはさまざまな製品・サービスが提供されているが、社内向けは、現場の声も聞き、ITリテラシーのレベルが多様な従業員が使いやすいものを選択すべきだ。ただし、各ツールが連携していないと、情報共有ツールにファイルを入れてから、別のメールやチャットのアプリケーションを立ち上げて連絡、と操作が煩雑になりかねない。

切り替えの手間の少なさでは、「Teams」のような、統合型ツールが便利だ。ほかにも、マイクやヘッドセット、会議用のマイク付きスピーカーなどの機材も注意深く選んだほうがよい。テレビ会議において「音」はとても大切だ。円滑なコミュニケーションのポイントは、雑音を減らすこと。人の声だけを識別して送信する機能や、話していないときは手元でミュートにするスイッチがあるマイクが使いやすい。

セキュリティが心配なら、社内にあるPCを、社外のPCから遠隔操作する仮想デスクトップの利用もある。アプリケーションもデータも社内PCの中に置いたままにできるので高いセキュリティを確保できる。自身もリモートワークをする西脇氏は「リモートワークでは、こまごまとした用事が発生する生活の中で仕事をするので、スリープモードに素早く切り替えられる機器、デバイスが望ましい」と語る。

ただし、リモートワーク成功のためにはITツールや機器などハード面の準備だけでは不十分で、従来と異なるマインド、企業文化の醸成が必要だ。上司が部下に一方的に指示する関係のままでは、上司は部下がサボるのではないかと不安になり、部下も指示待ちになる。そうした縦関係ではなく、上司には、部下と話し合うことが求められる。部下の側もやるべき仕事を自ら考え、「今日はこれをやります」と言えるようにしなければならない。

そのためには、コミュニケーションを充実させ、率直に話ができる雰囲気で「心理的安全性」を担保する必要がある。リモートワークでは、情報共有とともに「感情共有がカギ」と越川氏は言う。ツールの「いいね」ボタンを使って気軽に褒め合う。ビデオ会議の冒頭の1、2分は雑談する。背景が気になる場合は加工するツールもあるので、できるだけ本人の映像を出す。または表情・動きに連動するアバターを活用するといった、心理的距離を縮め、チームとしての一体感を醸成する工夫も大事になる。

リモートワークのIT機器への投資は、政府も助成金制度を拡充している。日本マイクロソフトも、リモートワークのためのサービス、セキュリティについて相談を受ける「セキュア リモートワーク相談窓口」「Microsoft Teams ウェビナー」を設けている。リモートワークを検討している企業は、一度相談して、情報を集めてはいかがだろう。

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