ビジネスパーソンの英語学び直しのポイントは

上達に不可欠な英語学習の4つのモデルを解説

ビジネスのグローバル化が進む中、多くのビジネスパーソンにとって英会話力が必須になりつつある。「学び直し」を考えている人も多いだろうが、「毎日英単語を10個ずつ覚える」といった昔ながらのやり方では、継続するのも難しそうだ。「そうではなく、ビジネスパーソンならではの上達法があります」と話すのは、上智大学英文学科長の池田真教授だ。学習効率がよく、英語を話す際の心理面にも影響するという。そのポイントを解説してもらった。

英語学習の4つのモデルを意識する

――英語力をアップしたいと考えるビジネスパーソンは少なくありません。一方で、「学び直しをするにしても、何をすればいいのかわからない」と悩む人も多いようです。

池田 そもそもどのように言語習得が起こるのか、いわゆる第二言語習得論について紹介します。一口で言えば、英語学習には4つのモデルがあります。「Cognitivism(認知主義)」、「Behaviorism(行動主義)」、「Innat-ism(生得主義)」、「Interactionism(やり取り主義)」です。

まず、「Cognitivism(認知主義)」について。英語の学習というのは、理科、社会、国語などと同様にやはり勉強が大事です。単語を覚えたり、文法を学習したりしなければなりません。ただし、これはどこまでやってもきりがありません。だいたい大学受験くらいの語彙数、文法力があれば、一般的なビジネスシーンで対応が可能でしょう。

「認知主義」は、受験勉強型のやり方です。受験英語にネガティブな印象を持っている人がいるかもしれませんが、これはこれで必要です。TOEICの学習も有効です。ただし、それだけでは試験で点数を取る力に偏ってしまいがちです。

――「ビジネスでよく使われるフレーズを丸暗記する」という人もいます。効果はあるのでしょうか。

上智大学 文学部
英文学科教授 学科長
池田 真 (いけだ まこと)
上智大学文学部英文学科教授
早稲田大学政治経済学部経済学科、上智大学文学部英文学科卒業。上智大学大学院文学研究科英米文学専攻(修士号・博士号)、ロンドン大学キングズカレッジ大学院英語教育・応用言語学専攻(修士号)。京都大学大学院、早稲田大学、国際基督教大学で非常勤講師を務めてきた。ロンドン大学、ウィーン大学、ストックホルム大学でも講義。英語教育(特にCLIL=内容言語統合型学習)を専門とする。日本CLIL教育学会副会長。

池田 それは「Behaviorism(行動主義)」と言います。「行動主義」は短期的な効果は確かにあります。「来週海外からお客さんが来てアテンドしなければならない」といった場合には役立つでしょう。しかし、中長期的にはそれだけでは足りません。

「認知主義」「行動主義」はこれまでの日本の英語教育で一般的な手法でした。ところがなかなか使える英語が身に付きません。何が足りないのか。

そこで今、世界で注目されているのが「英語学習の4つのモデル」の残りの2つ、「Innatism(生得主義)」、「Interactionism(やり取り主義)」の重要性です。

――「生得主義」「やり取り主義」とは聞き慣れない言葉です。どのような意味なのでしょうか。

池田 「生得主義」とは、人間は言葉を獲得する装置を備えて生まれてくるという考え方です。ただし、言語を使う、生み出す能力を育てるには大量のインプットがなければなりません。日本人の英語ができない理由はいろいろありますが、根本原因はインプットの量が圧倒的に少ないことだと思います。もっとたくさん読み、もっとたくさん聞かなければなりません。

「やり取り主義」とは、書くのでも話すのでもいいのですが、「他者とやり取りする」ことによって使えるようになり定着して全体的なスキルが上がることです。

大切なのは、これらの4つのうちの自分はどこに偏っているのか、どの部分が欠けているのかを理解して、そこを補強すること。自分で自分を分析するのはなかなか難しいので、英会話の専門家に判断してもらうことも有効です。

自分の仕事や興味のあることに絞って読み、聞く

――日本人は「生得主義」と「やり取り主義」が少ないとのことですが、すでに大人になっているビジネスパーソンが、これらを今から強化することはできるのでしょうか。

池田 まずたくさん読み、聞かなければならないことはもちろんですが、そこで大切なのが、何を読み、聞くべきかということです。

日本人の学習者はまじめな人が多いので、目にしたものすべてを読み、聞かなければならないと考えがちです。ニュースでもドラマでもコメディーでも。

実はそれが英語学習に挫折してしまう一因です。ビジネスパーソンはむしろ余計なものに手を出さず、できるだけ狭く、自分の仕事、業界に関係するものを優先して読み、聞きすればいいのです。

――いろいろな英語に触れたほうがいいというイメージがありましたが、そうではないと。

池田 そうではありません。最初は仕事に関係するものだけでいいのです。ただし、それについては徹底的にいろいろなものをたくさん、ネット上で読んだり、聞いたりしてください。

そうすると一見、狭い部分しか身に付かないと思うかもしれませんが、実をいうとどんな内容であっても、基本的な単語や文法や発音は共通しています。つまり、興味があるものだけを読み、聞いていても、いわゆる「英語脳」が育ってくるのです。余計なものに手を出す必要はありません。

言うまでもなく新しい情報、より詳しい情報は、日本語よりも英語で得られることが圧倒的に多いのです。さらに英語のサイトのほうがわかりやすかったり、説得力があることも珍しくありません。

――建築関係の仕事をしている人であれば建築に関するものを優先して読み、聞けばいいということでしょうか。その場合、スピーキングやライティング力はどうでしょうか。

池田 先ほどと同じことがスピーキングやライティングにもいえます。基盤となる英語の単語や文法、リスニング、発音などは共通しているのです。いろいろなことについて話そう、いろいろなことを書こうとするのではなく、自分の仕事に関するものであれば話せるし、書けます。

私は「Functional Bilingual」という言い方をしているのですが、機能的に自分の仕事に必要なものだけメールでやり取りできる、会議でプレゼンテーションができる、そこに絞り込んでいいのです。

――もっと話のレパートリーを増やしたいと思ったらどうすればいいのでしょうか。

池田 大切なのは、どう話すかよりも何を話すかです。その点でビジネスパーソンの大きな武器は、仕事について語れることです。

私は「おちょこ仮説」と呼んでいるのですが、最初は短時間でもいいので、「この話題なら流暢に話せる」という体験をすることです。それで少しずつ話題を増やすことによって、最初はおちょこぐらいの量だったのがとっくりになり一升瓶になります。

仕事以外では自分が興味のある趣味のことでもいいでしょう。相手よりも自分のほうが詳しいというようになると、さらに話す自信にもつながります。

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