サントリーの健康茶が快進撃を続ける理由 商品の枠を超えて「生活習慣提案」に挑戦

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サントリー食品インターナショナルが健康飲料市場で好調な成績を上げている。人生100年時代の到来を見据え、専門部署を設けるなど本格的な施策をスタートさせたほか、健康的な生活習慣をサポートする商品の開発やポートフォリオを強化。その一方、独自アプリや法人向けサービスの展開を始めるなど、ブランドをプロダクトに留まらず、サービスをも包括し進化させようとしている。サントリーは健康飲料市場でどのような戦略を描いているのか。同事業を統括する同社常務執行役員ジャパン事業本部 ブランド開発事業部長の柳井慎一郎氏と、同社ブランド開発事業部課長の溝本将洋氏に話を聞いた。

「ダイエット目的」だけでない需要

サントリー食品インターナショナルが今、健康飲料市場で快進撃を続けている。とくに特定保健用食品(以下、トクホ)・機能性表示食品では、看板商品の「伊右衛門 特茶」、そして新たに販売を強化している「伊右衛門プラス」が好調で、同飲料市場の多くのシェアを占めるようになった。2019年度の国内実質事業利益では101.5%の伸びを示し、同社の利益を支える大黒柱になるほどの成長を遂げている。その要因とは何か。同社常務執行役員の柳井慎一郎氏は次のように語る。

サントリー食品インターナショナル 常務執行役員 ジャパン事業本部
ブランド開発事業部長
柳井 慎一郎

「13年に特茶を発売して以来、トクホ飲料は1つのカテゴリーとして形成されてきましたが、18年ごろからその様相が大きく変化してきました。お客様が単にダイエットという観点からだけでなく、人生100年時代を見据えた健康的な生活習慣を意識するようになったのです。いわば、生活者の願いや嗜好がより細分化されていく中で、私たちは体脂肪を減らすのを助ける効果が期待できるという点だけでなく、その他の健康的な生活習慣もサポートできるように、商品のポートフォリオを充実させることで大きなシェアを獲得することができたと考えています」

 実際、「特茶」はサントリーが得意としているポリフェノール研究から「ケルセチン配糖体」を主軸に、緑茶のおいしさにこだわり、美味健康を具現化する形で発売以来、5年連続市場でもトップレベルの評価を得ている。その一方、機能性表示食品では19年に発売された悪玉コレステロール対策の「伊右衛門プラス コレステロール対策」がヘビーユーザーの多いタイプの商品として市場に定着するようになっているという。

人生100年時代の「健康」をサポート

現在、サントリー食品インターナショナルでは“人生100年時代”といわれる中で「健康で、前向きに、自分らしく生き続けたい」と願う人々に寄り添い、サポートできる企業でありたいという思いから18年より専門部署を立ち上げ、中長期的に社会課題解決に取り組むことをミッションとした「100年ライフ プロジェクト」をスタートさせている。「伊右衛門プラス コレステロール対策」はその第1弾の商品として位置づけられており、続いて第2弾として「伊右衛門プラス おいしい糖質対策」などが発売されている。

「健康に年を取りたいけれど、なかなかできない。そんなお客様に“わかりやすい付加価値”を提供することで健康生活に貢献したい。しかも、これからはプロダクトだけでなく、サービス価値も強化することで、飲む時間だけのブランドではなく、運動の時間、食事の時間など1日の生活全体に伴走していくブランドとして進化させたいと考えています」(柳井氏)

サントリー食品インターナショナル ジャパン事業本部
ブランド開発事業部 課長
溝本 将洋

そのため同社ではヘルスケアを目的とした「特茶アプリ」を開発し、食事や運動をサポートする機能を備えるなど、特茶とともに過ごす生活全体に寄り添うサービスブランドへの転換も図っている。担当者である同社課長の溝本将洋氏はこう語る。

「もともとお客様と特茶の関わり方の変化に着目したことが始まりでした。それまで健康を気にする方はお茶とトクホ飲料の2本を飲んでいる場合が多かったようですが、特茶が誕生したことで1本飲めば済むようになったというお声があった。ヘビーユーザーであればあるほど特茶をきっかけに健康行動が変わり、生活リズムも変わっていくというお客様が増えていく中で、“食事・運動・特茶”を組み合わせて無理なく日々の習慣を変えていくサポートをする手だてはないのか。そこからサービスとしてアプリを提供するという考えが生まれたのです」

「特茶スマートアプリ」では、体重や筋肉量、歩数などの運動、食事の記録ができる

この「特茶アプリ」では歩数などの日常の健康行動を促す情報などを提供し、30~50代と幅広い年代のユーザーに利用されており、とくに女性や若者の比率が高いと溝本氏は言う。

「想定以上のユーザー数を獲得しており、こちらも驚いております。そのため、そこで得た知見やさまざまなニーズをこれからのサービス開発にもフィードバックさせていきたいと考えています」

発売当初から予想を超える売り上げだったという特茶

「そこには、それまで『苦い』というイメージが強かったトクホ飲料を“おいしく飲める”飲料にするという課題がありました。その課題を乗り越えたことが皆さんから大きな支持を得る要因の1つになったわけですが、こうしたニーズをさらに拾っていきたいと考えています。現在、トクホ・機能性表示食品ではジャスミン茶やウーロン茶などさまざまな商品の展開を図ってきましたが、今後も確かなエビデンスのもと商品ポートフォリオを拡大し、これからもお客様の多様なニーズに応えていきたいと思っています」(溝本氏)。特茶では、脂肪分解酵素を活性化させる働きを持つ「ケルセチン配糖体」を飲料に配合し、継続飲用することで体脂肪の低減効果を狙いとしている。実はこれには素材をトクホとして飲料化するまでに5~6年の期間を要しているという。

個人だけでなく企業の健康経営を支援

サントリー食品インターナショナルが新たに取り組む施策はそれだけではない。「100年ライフ プロジェクト」の一環として、ターゲットを個人単位から、企業単位へと拡大させる事業戦略も進めている。柳井氏が言う。

「今年から自動販売機を介した健康経営支援サービス「SUNTORY+」を展開します。その背景にあるのは、生活者の行動を個人で捉えるだけでなく、時間軸で捉える思想です。その1つの事例として、企業の廊下や休憩室などにある自動販売機での商品接点を基軸に置きながら、アプリやコーチングメソッドを使って生活習慣全体をサポートしようというものです。このサービスを年明けから法人営業で提案開始していますが、評価は上々です。このような取り組みを通じて企業の“健康経営”をサポートしていきたいと考えています」

 今後、同社では「特茶」や「伊右衛門プラス」シリーズをはじめとして、プロダクトだけでなく、サービスとしてもブランドを進化させていくことで健康飲料市場を活性化していく方針だ。柳井氏がその意気込みをこう語る。

「人生100年時代を迎える中で、健康は特別なものではなく、もっとスタンダードなものになっていくはずです。私たちは健康行動を生活に取り込む生活者のパートナーであり続けていくためにも、おいしく、楽しく、健康に貢献できる。まさに人生を豊かにする商品をこれからも提供していきたいと思っています」

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