大変革時代をサバイブし未来を拓くには? freeeのCEO・CFOにインタビュー

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(写真左:freee株式会社 CEO 佐々木 大輔氏 右:取締役CFO 東後 澄人氏)
「スモールビジネスを、世界の主役に。」の理念で自ら急成長を体現し、グローバルIPOも果たしたfreee。2月27日に開催される予定だった同社主催のイベント「freee Growth.Vision 2020 ~経営革新と成長はここから始まる。~」は、感染症予防の観点から延期となったが、当日、登壇する予定だった同社CEOの佐々木大輔氏と取締役CFOの東後澄人氏にインタビューを行い、二人がイベントを通じて、中堅・中小企業の経営者や経営幹部の方々に伝えたいと考えていた“想い”を語ってもらった。

Part1:『中堅企業が成長を掴むための経営新航路』(freee株式会社 CEO 佐々木 大輔氏)
さらに広がる大企業と中堅・中小企業の格差

私は、ベンチャー企業でCFOを経験した後、グーグルにて中小企業向けマーケティングを担当しました。中小企業にテクノロジーを普及させることは本当に意味があることですが、日本ではなかなか進みませんでした。こうした現状に危機感を覚えて、会計、人事労務の分野でバックオフィス業務を自動化する事業を立ち上げ、2012年に創業しました。

振り返ってみると、インターネットは中小企業の経営に大きなインパクトを与えました。1つは広告です。インターネット広告を活用することによって、中小企業でも世界中の見込み顧客にアクセスすることが可能になりました。もう1つは大企業と同等のシステムやソフトウェアを安価に利用できるようになったことです。

テクノロジーの観点では大企業と中小企業の差は小さくなってきましたが、「人」の部分に着目すると、むしろ格差は広がっています。例えば、労働生産性。日本の労働生産性は先進7カ国の中で最下位と言われますが、日本の大企業と中小企業とでは、さらに2倍以上の格差があります。生産年齢人口が減っていく中で、いかに人材を確保するかも中小企業にとっては大きな課題です。

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※出展:2019年 中小企業白書

中堅・中小企業が目指すべき方向

これらの課題を解決しつつ、大企業と中小企業の間にある格差を解消していかないと、中小企業の未来はありません。そのために何をすべきか――。我々の経験を基に、中堅・中小企業が目指すべき方向についてお話しします。ポイントは4つあります。

1つ目は「本質を捉えた価値提供」であり、freeeが最も重視している価値基準です。これは単にお客様の要望に応えるだけでなく、本質的な課題を特定し、技術を含めた広い視野から最良の手法で解決するサービス開発を行うことです。

我々のソフトウェア開発を例にとります。経理業務を自動化する会計ソフトというコンセプトですが、リリースする前は、そうした顧客ニーズではありませんでした。お客様が求めていたのは入力を速くするソフトでした。ただ、観察の結果気づいたことは、経理担当者の日常業務の7割がルーティン作業で、自動化すればその作業は効率化できるということです。それを実現するソフトを開発すれば、真の価値を世の中に提供できると考えました。

これまでビジネス向けのソフトウェアというと、比較表で機能のある・なしや機能の数などを比較して検討するという選び方をされてきたと思いますが、我々のプロダクトはそうではなく、最初にリリースする時も、リリース後の継続的な改善においても、比較表には表れない本質的価値に基づいて開発に当たっています。

2つ目は「人が集まる組織作り」です。大企業では1つの採用枠に3人の学生が応募するのに対し、中小企業では1人の学生に対して10社の求人があるといわれます。採用自体が難しいだけでなく、コストも上がっている中で、どれだけ人が集まる組織を作れるかは、本質的価値提供に次いで重要なポイントです。

我々は、創業当初から「freeeの根幹を成す価値観とは何か」について、社員全員で考え続け、議論するとともに、企業カルチャーを共有するための仕組み作りに対して積極的に投資を行ってきました。

freeeの価値基準の最初のバージョンは私とCFOの2人で作ったのですが、社内に一切広まりませんでした。上が勝手に決めた学級目標のようなものは、誰も覚えたくなかったからです。そこで原型となった学級目標をベースに社員全員で議論して、ボトムアップで価値基準を作り、メンテナンス&アップデートしてきました。そのために、年2回の合宿を行ったり、社員総会を開催するなど、コストもかかりましたが、社員全員が関与することにこだわりました。

3つ目は「人の力の最大化」をすることです。いまやいろいろなテクノロジーがありますから、従来、人がやっていたこともテクノロジーを活用することで、さらに踏み込んだ効率化が可能です。例えばfreeeでは、インサイドセールスを導入したり、カスタマーサポートのツールとして、チャットやAIなども活用しています。自ら徹底的にクラウドサービスを活用し効率化を図ることで、「矛盾のない経営」を実現してきました。

そして4つ目が「生産性の可視化」です。我々自らが会計ソフトfreeeを使い、リアルタイムで収益性を可視化し、投資行動の改善や効率化につなげているほか、営業の生産性向上やより良い組織作りに役立てています。

本質的価値提供や組織作りなど、本当に重要なところは、今まで以上に時間とコストをかけて、独自性の高いものをつくっていくこと。それができないと、中小企業としての強みは生かせないし、人に関わる課題も乗り越えられません。ただ、これをやっていると収益性が下がるだけなので、人の力をツールによって最大化し、生産性向上に結び付けられることが重要です。

中堅・中小企業の変革にとって重要な4つのポイントを実現していくうえで、freeeのソフトが欠かせないツールとして活用いただけるよう、今後もがんばっていきたいと思います。

Part2:『成果を最大化するための財務戦略 ~IPO、その先へ~』 (freee株式会社 取締役 CFO 東後 澄人氏)
財務戦略なくしてスタートアップの非連続的な成長はあり得ない

freeeは2015年6月期から5年間で、売上の年平均成長率100%を超えるような成長を遂げてきました。これを支えているのが財務戦略です。成長をしっかりサポートする基盤になり得るような資金をしっかり調達してきて、必要な資金を投資して成長を加速させる――。それなくして、スタートアップの非連続的な成長はあり得ません。

freeeは創業以来、IPOを含めて計9回の資金調達を行いました。累計調達額は283億円に上ります。資金調達はアーリーステージ、レイターステージ、IPOという3つのフェーズに分けられ、それぞれのフェーズで何を考え、どのように資金を調達したのかは異なります。

まず、2012年12月から2014年9月までのアーリーステージについて。4回にわたり17億円を調達しました。このフェーズの大きな特徴は、海外のベンチャーキャピタルが投資家として参加していることです。その理由は、当時、日本の資本市場においてSaaSモデルへの理解が発展途上だったことが挙げられます。一方、米国では市場規模もプレーヤーの数も圧倒的で、理解を得られやすく、よりスムーズに資金調達ができると考えました。

アーリーステージでは、何よりもビジョンが重要です。プロダクトさえなく、1円も売上が立っていない、あるいは立っていたとしても初期ユーザーだけという状態で、投資家が評価するのはビジョンであり、どこを目指しているのかです。

もう1つ大事なことは、一歩先を見て必要な資金を調達することです。事業がどんどん伸びていくと、状況が変わり、必要な資金も変わってくるからです。資金調達の準備を始めてから、調達できるまでの間に必要な金額が変わっていたなんてことも度々です。一歩先を見て、少し多めの資金を調達するぐらいが適当です。

2015年8月から2018年8月までのレイターステージでは、4回にわたり144億円を調達しました。金額がぐっと大きくなったのは、この頃からビジネスが大きくなり、市場で評価されるようになり、ビジネスモデルも認知されるようになってきたからです。

投資家の顔ぶれも大きく変わりました。国内のベンチャーキャピタル以外にも、リクルートやセールスフォース、LINEといった事業会社が入ってきたのです。これは最初から意図していたわけではありませんが、一定のビジネス基盤が構築できた中で、さらなる成長を目指すにあたり、事業提携を前提に資金調達を進めてきたことが大きいです。

もう1つ特徴的だったのが、2018年8月のシリーズEでT・ロウ・プライスというパブリック投資家に入ってもらったことです。これは非常に良かったです。何故なら、IPOを視野に入れる中で、パブリック投資家の視点を経営に反映させることができたほか、その後のIPOの際に信頼感の向上にもつながるからです。

そして最後が2019年12月のIPOです。2年前の2018年6月期の第2四半期から準備をスタートし、結果的に1日の遅れもなく上場できたのは、自社で会計freeeを活用していたことも大きいです。

最大の特徴は、北米の投資家にも訴求できるグローバルオファリングの形態を採用したことです。先述の通り、SaaSモデルの理解レベルの高さから、理想的なIPOを実現するには、北米の投資家からも資金を募りたいと考えたからです。

オファリングサイズは370億円(公募金額+売出金額)と、日本のIPOとしては大きな額となりましたが、その目的は成長資金の確保であり、IPO直後に公募増資する必要がないよう、今後2~3年の資金ニーズを充足したためです。また、海外の機関投資家の需要を喚起するには十分な流動性も必要でした。

海外投資家の比率を高めたことも大きな特徴です。結果的に経営陣、ベンチャーキャピタル、事業会社、海外機関投資家、国内機関投資家、一般投資家などでバランスの取れた株主構成になったと評価しています。

IR(投資家向け広報)にあたっては、エクイティストーリーの構築に注力しました。「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションとして、「日本で唯一のスモールビジネス向けクラウドERP」を展開。市場機会は大きく、成長性も高い。それをどのような戦略で勝ち取っていくのかを説得力をもって伝えられるかどうかがIPOの成否を握るといっても過言ではありません。

アーリーステージ、レイターステージ、IPOというそれぞれの成長ステージに合わせた財務戦略があることを最後に強調しておきます。

激動するビジネスシーンにおいて、中堅・中小企業が変革を成し遂げ、持続的な成長を実現するには、攻めの財務戦略と守りの経営基盤をしっかり併せ持つことが重要である。これこそが、イベント「freee Growth.Vision 2020 ~経営革新と成長はここから始まる。~」で訴えたかったメインテーマである。変革の担い手である経営者・経営幹部の方々は、テクノロジーを活用して、「本質を捉えた価値提供」「人が集まる組織作り」「人の力の最大化」「生産性の可視化」に果敢にチャレンジしていってほしい。

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