最先端デジタルサイネージが実現する未来 AIなどと連携したパーソナルなアプローチも
「街へ飛び出すインターネット」からの発展
ディスプレーなどの電子媒体で情報を発信するデジタルサイネージ。駅の構内や商業施設、公共施設などさまざまな場所で見かけるようになってきた。
「デジタルサイネージが身近なものとなったきっかけは、電車内に設置されたディスプレーでしょう。公共の場における広告や販売促進の1ツールとして、広く受け入れられるようになりました。初期はネットワークにつながっていないものもありましたが、今では遠隔地からリアルタイムに更新するスタイルへと変わってきています。『街に飛び出すインターネット』となったわけです」
そう説明する一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアム常務理事の江口靖二氏は、デジタル技術の進化により、サイネージの重要度が増してきていると指摘する。
「AIやIoTの登場によって、潮目が変わりました。従来は、テレビやウェブなどと同様に『見せる』ことが主流でしたが、より戦略的なアプローチができるようになったのです。例えば、海辺でUVセンサーと連携させてUV指数をリアルタイムに表示することで髪のUVダメージを修復するシャンプーの購買意欲を刺激、売り上げを伸ばしたケースがあります。デジタルサイネージによってその場の状況を可視化することが、販促に効果的であることが証明されたのです」
マーケティング以外にも、街中の飲食店、小売店やクリニックなどでイメージ映像や環境映像を流して空間演出をしたり、紙媒体の代わりに店頭販促に導入するなど、活用方法が広がってきている。例えば、飲食店の空席状況やトイレの混雑状況を可視化する取り組みだ。
「上層階に飲食店街がある駅ビルの場合、わざわざ上がったのに満席だとがっかりしてしまいますよね。その不満を回避するために下層階にサイネージを設置、上層階の店舗の空き状況を表示させます。顧客にとって重要な情報を先出しすることで、駅ビル利用の満足度向上につながっているケースです」(江口氏)
PHILIPSが日本のディスプレー市場で急成長した理由
デジタルサイネージならではの活用法が出てくるなど、産業として成熟しつつある中、その存在感を発揮してきているのがPHILIPSモニターだ。
4Kの大画面モデルからビジネスモデルまで幅広いラインナップを展開する同社は、2013年に日本のPCディスプレー市場に参入するや、17年に36万2299台、18年に45万4841台、19年には61万9678台と、その売上台数を年々伸ばし*、その実績を生かしてデジタルサイネージ分野にも注力。
*出典:IDC Quarterly PC Monitor Tracker, 2019Q4(PCモニターのみ、デジタルサイネージは含まず)
その要因について、デジタルサイネージ用ディスプレー販売を手がけるMMD Singapore 日本事務所で営業マネージャーを務める宮坂覚氏は、次のように説明する。
「製品力や価格の優位性もありますが、PHILIPSモニターが評価されたのは、幅広いニーズに合わせたソリューションを提案している点でしょう。近年は用途が広がってきていますので、サイネージディスプレー単体だけでなく、さまざまな分野の製品やシステムと連携した商品が求められています。その点、PHILIPSのデジタルサイネージは積極的に外部パートナー企業とアライアンスを組み、柔軟な提案をしてきました」
例えば店頭向けでは、什器メーカーと提携してサイネージディスプレーにぴったり合った後部ローラーキャスター付きスタンドを開発。
「43インチのサイネージを1人でも簡単に動かせるため、少人数の店舗でも容易に設置して活用できます。また家庭用のテレビ設置サービスのように、設定から電源を入れる段階までサポート。業務用サイネージの保証期間は1年間が一般的ですが、当社は日本の商習慣に合わせて3年間のフルサポートにしています」(宮坂氏)
サイネージディスプレーとしての性能も、最先端の機能を搭載。明るい屋内でも高い視認性を確保できる700cd/㎡*(カンデラ/平方メートル)の製品やタッチパネルのラインナップをそろえ、年内には真昼の屋外での視認性を実現する2500cd/㎡の高輝度モデルの発売を予定しているという。
*光源の明るさを表す単位。一般的な家庭用テレビの輝度はおおむね350~500cd/㎡程度
「PHILIPSデジタルサイネージにはメディアプレーヤーが搭載されているため、追加機器を購入せずに1台で静止画や動画、PDFまで再生することが可能です。またWi-FiおよびAndroid OSも搭載されているため、対応するアプリケーションを利用すれば遠隔操作を行うことも可能。電源のON/OFFまでコントロールできるため、再起動が必要なときも現地へわざわざ足を運ぶ必要がありません。後部ローラーキャスター付きスタンドをセットにした簡単スターターキットは、導入の容易さから中小店舗様にご好評をいただいております」(宮坂氏)
「とくにピーディーシー様が提供する『AFFICHER(アフィシエ)』と連携すれば、表示コンテンツの編集機能や配信機能に加え、電源のON/OFFや入力切り替え、音量変更を行う管理機能などもすべて遠隔から操作可能になります。例えば、配信コンテンツを間違えて設定していても遠隔操作で修正し、誤配信を防止するといったことなどです」(宮坂氏)
たまたま目に入る情報が高い価値を持つ時代へ
幅広いニーズに合わせて、目的も多様化してきたデジタルサイネージ。今後はどのように進化していくのだろうか。江口氏は、コミュニケーションや情報取得方法の変化により、その価値がさらに高まっていくと分析する。
「デジタルサイネージは、テレビやPC、スマートフォンと違い、見ようとして見るものではない、受動的なメディアです。しかしこれはメリットでもあります。PCやスマートフォンの普及により、パーソナルなコミュニケーションが一般化し、知りたい情報だけを取得するような社会となりつつありますが、人間は必ずしもそれだけを望んでいるわけではないからです。興味関心の対象が広がれば、生活も豊かになります。知らない情報との偶然の出合いを創出するデジタルサイネージの存在価値は、今後いっそう高まっていくのではないでしょうか」
一方でデジタルサイネージが進んでいる海外では、ウェブのターゲティング広告と同じような仕組みを取り入れる動きも加速しているという。日本でもそのようなマーケットが拡大していく可能性は高いと、宮坂氏は話す。
「例えば、AIや顔認証システムと組み合わせ、パーソナルにアプローチするソリューションも求められるようになるでしょう。公共の場や大規模施設だけでなく、街の小売店といったミニマムなフィールドでも、それが当たり前となる時代がやってきます。データの活用もいっそう広がりを見せると考えられますが、EUではGDPR(一般データ保護規則)が施行されるなど、個人情報への規制はますます厳しくなっている。今後は社会受容性があり、なおかつ魅力的なコンテンツの提供が必須になるでしょう。PHILIPSデジタルサイネージは、幅広いラインナップと外部パートナー企業とのコラボレーションによって、新たな価値を打ち出せる点が魅力。これからも、さまざまなお客様のニーズに応じてフレキシブルなご提案ができればと考えています」
社会受容性に関しては、江口氏もこうコメントする。
「監視カメラも、当初は監視社会への警戒がありましたが、防犯効果の高さが認知されてからは一般に受け入れられるようになりました。同じように、デジタルサイネージも『社会に役立つ』ということがコンテンツを表示する際の暗黙のルールになっていくと感じています」
ディスプレーの画質はフルHDから4Kへと高精細化が進んでいる。店舗やオフィスなどさまざまなシーンでの活用も広がっていることから、コンテンツの表現も多様化していくのは確実だ。目まぐるしい進化に企業や店舗が対応していくには、豊富なノウハウときめ細かいサポートを持つPHILIPSのようなベンダーのサポートが欠かせないのではないだろうか。