キリンが「新カテゴリー創出」で狙う活路とは 日本初の製法(※1)を実現!

年々高まる「健康志向」に応えたい

久保 育子氏
2020年4月3日に発売された、キリンビールの新商品「キリン グリーンズフリー」。「自然派ビールテイスト炭酸(※2)」という打ち出しのもと、香料・人工甘味料無添加ならではの風味を実現している。ノンアルコール・ビールテイスト飲料のイメージを覆す、新しい味わいの炭酸飲料だ。同商品の開発を手がけたキリンビールの久保育子氏はこう話す。
「これまでのノンアルコール・ビールテイスト飲料は、香料・人工甘味料を使うのが一般的でした。グリーンズフリーでは新製法を採用し、素材本来の香りのよさを引き出して、香料・人工甘味料無添加でつくることに成功しました」

グリーンズフリーが生まれた背景には、「健康志向」がある。近年、「無糖炭酸飲料」のニーズが大きく成長しており、販売規模は10年で実に7倍にもなっている(※3)。
ビール類の出荷量は15年連続で縮小。とくに共働き世帯で購入量が減っており(※4)、仕事や子育ての忙しさからお酒を控える人が増えているとみられる。一方で、ビール類がもたらす飲みごたえや充足感、“ご褒美感”に対する人気は根強く、お酒の中でビール類好きな人の割合は約80%にものぼる(※5)。
「そうしたニーズを満たすべく、無糖炭酸飲料の健康感や気軽さと、ビール類を飲んだときのような満足感を併せ持つ、これまでにない飲み物として開発されたのがグリーンズフリーなのです」と、久保氏は胸を張る。
※3 インテージSRI 2009年~2018年 推計販売規模(容量) ※4 インテージSCI(ビール類) 2015~2018年 購入者当たり購入規模 ※5 キリンビール調べ(N=3540名)

「飲めないときに仕方なく飲むもの」という印象を払拭
そんな同商品の特性がよく表れているのが、ノンアルコールビールの枠を超える新カテゴリー、「ビールテイスト炭酸飲料」と打ち出している点だ。開発責任者であるキリンビールの山形光晴氏はこう話す。

山形 光晴氏
「2009年に当社がノンアルコール・ビールテイスト飲料を発売して以降、市場は大きく拡大してきました。しかし、いまだにノンアルコールビールは『お酒が飲めないときに、仕方なく飲むもの』という、消極的飲用のイメージが根強いのも事実です。そこは大きな課題でありつつ、裏を返せば伸びしろも大きい。たくさんのチャンスが隠れていると考えました」
ビール類の飲用者数が約5500万人いるのに対して、ノンアルコール・ビールテイスト飲料の飲用者は約1600万人(※6)。ビール類飲用者がビール類を飲まないときに選択するのは緑茶、コーヒー、炭酸水が多く、ノンアルコール・ビールテイスト飲料はそれらよりはるかに少ない(※7)。つまり、ビール類飲用者の多くがノンアルコール・ビールテイスト飲料を飲んでいないのだ。
「ここから、ビールテイスト飲料が普及する余地が大いにあることがわかります。グリーンズフリーでは、ノンアルコール・ビールテイスト飲料の飲用者はもちろん、ビール類飲用者やいわゆる『お酒好き』の層までもターゲットユーザーに想定しています」(山形氏)
この巨大なターゲット層のニーズを満たすうえでカギとなっているのが、キリン独自の製造技術だ。本来、ビールのおいしさは、原材料の麦やホップが発酵を経ることで生まれる。アルコール発酵を経ないノンアルコール・ビールテイスト飲料の場合、素材そのものが持つ独特の香気が目立ってしまうため、香料・人工甘味料などを使ってビールの味わいに近づける製法が採られる。

ところがグリーンズフリーでは、同社の看板商品「一番搾り」や「淡麗グリーンラベル」で培われた技術を応用した、日本初の製法(※1)を採用。これにより麦やホップ本来の香りのよさを引き出し、ビールテイストならではのおいしさを実現している。さらに、従来のキリンのノンアルコール・ビールテイスト飲料と比べて炭酸感を約110%に増し、よりゴクゴク爽快に飲める味わいとなっている。
開発に当たった久保氏は「香料・人工甘味料を使用せずおいしいビールテイストを実現するというのは業界の常識と異なるため、当初は『不可能では?』という声も多く挙がりました。が、試作を繰り返した末、ついに開発に至りました」と振り返る。同製法は現在、特許出願中だ。
※6 インテージSCI(飲料・ビール類) 2018年10月~2019年9月 購入者人数
※7 キリンビール調べ(N=2000名)
「ワクワク感」の伴う、新しいビールテイスト炭酸飲料
こうして生まれた「キリン グリーンズフリー」によって、同社は「ビールテイスト炭酸飲料」という新しいカテゴリーを創出し、市場そのものを広げる戦略を掲げる。

「消極的選択ではなく『これが飲みたい!』と積極的に選んでもらえるもの。ビール独自の『ワクワク感』を伴ったビールテイスト炭酸飲料という、従来にはない市場を開拓していきます。当社ではノンアルコール飲料事業を、健康に寄与する取り組みの一環と捉えていますが、とくに2020年は『ノンアルコール飲料事業の再成長元年』と位置づけ、より活性化していく予定です。ノンアルコール飲料の販売目標として、前年比121.9%の390万ケース(※8)を掲げています」(山形氏)
ビール類好きからお酒を飲まない人まで幅広く楽しめ、食事中から仕事終わり、スポーツ後まであらゆるシーンでの飲用が想定される「キリン グリーンズフリー」。働き方やライフスタイルが多様化する中、ノンアルコール市場を牽引してきたキリンならではの、時代に寄り添った飲み物といえる。その新しさを体感するには、まずは一度味わってみることが何よりだ。
※8 1ケース大瓶633ml×20本換算

