死んだ娘とVRで再会した母親が賛否呼んだ理由 自閉症の不安を緩和することにも成功

拡大
縮小

企画が公になるにつれて、予告編を見た視聴者からは感動を期待する一方、「再会後さらに心を痛めるのではないか」と母親を心配する声も上がった。

また、放送終了後には、多くの賞賛と共に、一部反対意見も上がっている。その多くが、VRの技術は素晴らしいが、それを幼い娘を失くした家族を通してTV放送するのはいかがなものかと疑問視する声だった。さらに、母親の今後の心のケアは万全の体制を取っているのか指摘する書き込みも見られた。

また、昨今ハリウッドで浮上している問題と同様に、亡くなった人の著作権も問題視される。AIを駆使し亡くなった人をスクリーンに出演されることは倫理上どうなのか、今後悪用される心配はないのか。これからさらに論議されていくことだろう。

母親は個人ブログを運営していたが、視聴者からの心ない書き込みもあったのか、放送後ブログを一時閉鎖している。番組の反響を受け、今月7日MBCのFMラジオ「イ・スンウォンの世界は? そして私たちは?」にゲスト出演した番組プロデューサーのキム・ジョンウ氏は、この件について、「(母親に誹謗中傷しないで)私に直接書き込んでください」と訴えた。

来月3月12日には、続編ともいえる「"あなたに会えた"ビハインドストーリー」の放送が決定している。これで、少しは理解を深めナヨンちゃん家族に対する誹謗中傷が減ることを願っている。

VRの新たな活用

ゲームセンターなどにVRが登場し、その後VR技術がポルノ業界に進出しだしたころ、筆者は嫌悪感よりも「なるほど、そっちの方面でも活用方法があるのか」と感心したのを覚えている。1つの技術が他方面に広がりをみせ、個々で更なる発展をみせるのは素晴らしく、人間のもつ可能性は無限だと思い知らせてくれる。

スマートフォンなどで写真や動画を簡単に手元に残せて置ける時代となった今だからこそ、このVRのナヨンちゃんも再現できた。未来には、製作費に1億ウォンも掛けずしても、アプリを起動すれば誰でも簡単に会いたい人を呼び出せる世界になるかもしれない。

ただし、VRはあくまでも"仮想"現実である。気軽に、より精巧になっていくVR技術にのめり込み仮想世界に行ったきりで戻れなくならないように、今後はVRによる心のケアも重要視されるだろう。

次ページVRで再会した母とナヨンちゃん
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT