人件費を出し惜しむ企業に未来はない

アジア経済の専門家が語る海外進出のポイント

過去と現在では、日本企業が海外進出をする様相はまったく異なっている。かつては、コスト削減を第1の目的としていたが、現在は新たな市場や人的資源といった「成長のエンジン」を海外に求めているようだ。ただし、新しいチャレンジは一歩間違えれば失敗に終わってしまうもの。企業が海外進出する際に気をつけるべきことと、今注目すべき進出先「MVP」とは。

―今、海外に進出する日本企業は、どのような目的を持っているのでしょうか。

後藤 国内市場が成熟化し、企業間競争がさらに激化する中で、成長のチャンスを求めて海外に進出する企業が増えています。国内の人手不足が常態化していることも背景として挙げられるでしょう。かつての海外進出といえば、コスト削減を第1の目的としていましたが、今はそうではありません。新たな市場や人的資源を求めて海外進出しているのです。

―他方、海外進出を計画しているものの、いま一つ踏み切れない中小企業も多いでしょう。そこにはどのような課題があるのでしょうか。

後藤 康浩 GOTO YASUHIRO
亜細亜大学 都市創造学部教授、元日本経済新聞論説委員・編集委員。早稲田大学政経学部卒業、豪ボンド大MBA修了。1984年日本経済新聞社入社、国際部、中東、ロンドン、北京など各地の駐在を経て、論説委員、アジア部長、編集委員などを歴任。2016年4月から現職

後藤 1つは言葉の壁です。これがすべての物事を困難にします。語学に長けた人材や海外からの留学生を採用することが有効でしょう。もう1つは資金面です。ある程度資金の余裕がないと本格的な海外進出はできません。進出しても想定以上に手間も時間もかかるのが常であり、結果として必要な資金も膨らんでいくのです。

―中小企業が海外進出する際に気をつけるべきポイントとは何でしょうか。

後藤 まず挙げられるのが現地の日本人にだまされないことです。意外にも現地の事情に疎い日本人をターゲットにしている日本人は少なくありません。だまされないためには、聞いた話を信じ込むのではなく、必ず自分の目で確かめなければなりません。また、賄賂は厳罰化されていることが多いので極めてリスクが高い。絶対に贈ってはいけません。

人材採用に関しては、現地の紹介会社を介して、適切な賃金とキャリアプランを提示しなければ優秀な人材は採用できません。人材を確保して日本本社と円滑なコミュニケーションを取ることが何よりも大事ですが、コストを抑制した結果いい人材が採用できず、事業に失敗している日本の会社をたくさん見てきました。人材には惜しまずコストをかけなければ意味がありません。弁護士、会計士、コンサルなどの専門家も同様に交渉力のあるプロフェッショナルに依頼すべきでしょう。

―海外進出先として今、注目している国や地域はどこですか。

後藤 中国は依然として重要な市場ですが、それ以外では「MVP」(ミャンマー、ベトナム、フィリピン)に注目しています。これらの国がこれからの日本企業を支えていくでしょう。とくにミャンマーは意外にも英語が通じやすいうえ、優秀な人材が育ってきています。市場としての成長余地は大きいでしょう。

―最後に読者にメッセージをお願いします。

後藤 国内の消耗戦から逃れて自社の新たな可能性を探るためにも海外市場に打って出るべきです。最初は小さく始めてもいい。もちろん事業の戦略はしっかりと練る必要がありますが、一度ビジネスを始めてみて、そこからその国で成長していくための長期的な計画を立てればいい。やはりまずは行動ありきです。

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