大学生が激闘!「日本の農業」に未来はあるか? 農業や食、地域の重要性を考え抜く若者たち
農業や食、地域の重要性について若者が考える場を提供
今年で3回目を迎えたアグコン。「農業、食、地域、JA」の4つに関連するものをテーマとして、大学生がチーム単位で調査研究を行い、その成果を競うものだ。参加者は全国の大学から東京・世田谷区の日本大学に集結し、計27チームが争う予選を経て、6チームが決勝に進んだ。
決勝で最初に登壇したのは日本大学商学部 川野ゼミ「ゑゐチーム」。発表テーマは「JAにおける中期計画」。管理会計を勉強する中で、JAの中期計画に興味を持ったことがきっかけだったという。高い経営目標とそれにひも付いた戦略・施策策定が重要だと述べ、JAの自己改革の現状・課題について発表した。
続いて中央大学経済学部 江川ゼミ「トト」は「農業における技能実習制度の展望」をテーマに掲げ、大規模農業経営の常用雇用者のうち約5割が外国人であるというデータを示しながら、外国人に対する適切な労務管理について「採用監理団体の選定、言語、宗教などの面で工夫が必要。雇用者側の意識が問われている」とプレゼンした。
次に日本大学商学部 秋川ゼミ「買い物弱者班」が、買い物弱者にとっての移動販売車の重要性を示し、「移動販売事業の約7割が赤字経営である」という問題の解決を目指した。事業者と利用者の関係構築を図るため、ソーシャルゲームを利用した集客策などを提案した。
大阪成蹊大学マネジメント学部 高畑ゼミの「食ビジのワルツ」は「産官学連携によるピクルス・和菓子の商品開発」をテーマとした。農業人口が大幅に減少する中、若者に大阪産の農産物を知ってほしいとの考えから、大阪府と大学、産業界も巻き込んで「大阪ふき」を商品化。「将来的には農業従事者の増加を目指す」と語った。
続く龍谷大学経営学部 藤岡ゼミ「龍谷SDGs」のテーマは「ぶどう山椒産地存続のための認知促進戦略2019」。ぶどう山椒は、香り高い和歌山県有田川町の産物。産地が抱える生産者の高齢化・後継者不足といった問題を受けて、新商品開発と情報発信が必要だと考えた。マドレーヌやクッキー、お香、線香などぶどう山椒を使った商品を開発し、SNSを使った情報発信も行った。
関西大学経済学部の佐々木ゼミ「保幸ゼミ」は、「コールドプレスジュースを用いた野菜果物の消費拡大」がテーマ。日本では1人当たりの野菜・果物の消費量が諸外国と比べて低いことから、複数の野菜を一度に摂取できるコールドプレスジュースで野菜の消費拡大を目指した。企業と組んで、野菜や果物の搾りかすを活用した商品の開発を行った。
最優秀賞は3大会連続!ダブル受賞の喜びが爆発
以上の決勝プレゼンの後、「農業は儲かるのか本音トーク」と題したパネルディスカッションが行われ、全国農協青年組織協議会副会長の小林大将氏と、同理事の柿嶌洋一氏が語り合った。生産者ならではの視点から語られる農業の実態に、発表を終えた学生たちは興味津々といった様子で聞き入っていた。
そしていよいよ表彰式。最高の栄誉に輝いたのは、実践的研究分野の「最優秀賞」と「学生最多得点賞」をダブル受賞した日本大学商学部 秋川ゼミ「買い物弱者班」。なんと3大会連続の最優秀賞受賞だ。代表の中山徹郎さんは「どうにか3連覇できました!日々プレゼンの練習を重ね、研究に邁進してきたかいがありました。結果的に多くの方々に評価いただき、感謝しています」と喜びを語った。
学術的研究分野の「最優秀賞」には日本大学商学部 川野ゼミ「ゑゐチーム」が選ばれ、代表の商学部3年・吉田脩平さんは「緊張感を持って研究を進めてきました。挫折しそうになった日もありましたが、意地を見せられてよかったです」と語った。
同「優秀賞」には初出場での受賞となった中央大学経済学部 江川ゼミ「トト」と実践的研究分野の「優秀賞」には大阪成蹊大学マネジメント学部の高畑ゼミ「食ビジのワルツ」が選出された。
チーム「トト」代表・中央大学経済学部3年生の歳川幹大さんはこう感想を述べた。「研究では、学業とゼミ、プライベートを両立させることがとても大変でした。しかし初出場で受賞でき、とてもうれしく思っています。全体的に、どのチームもレベルの高い研究をしていると感じました」。
多くの実りがあったアグコン プレゼンの質も年々向上
最後に、審査員長の日本大学生物資源科学部・川手督也教授がこう語り締めくくった。「アグコンも3年目を迎え、参加チーム数が増えただけでなく、プレゼンの質も上がったと感じます。上質なプレゼンにはたくさんの、厳しい質問が投げられるもの。それだけ聴衆から評価されている証拠です。皆さんの若い力や人との出会いを大切にして、来年も頑張ってほしいと思います」。
さらに、審査に参加した東洋経済新報社ビジネスプロモーション局メディア事業部長の萩生田啓介氏は「チームで地域の課題に誠実に向き合い、現地での体験を生かしながら解決策を考えていくセンスのよさに感心した。プレゼンのレベルも高く、あっという間に時間が過ぎた」とコメントした。
今回も大盛況のうちに幕を閉じたアグコン。参加した学生は、自らの研究はもちろん、他チームの発表からも多くのものを感じ取ったようだ。アグコンを通じて少しずつだが確実に、若い世代にも農業や食、地域への理解が広まることを期待したい。