製造業の外部情報共有革命 シリーズ働き方改革セミナーレポート
主催 東洋経済新報社
協賛 Dropbox Japan
オープニング
Dropbox Japanの五十嵐光喜氏は、Dropbox Japanと東洋経済新報社が共同で行った2つの調査を基に、働き方改革が進みながら生産性の向上には成果を実感していない人が多いことを紹介。製造業においては、外部との情報共有に課題を抱えているケースが少なくない。「原因は、電話やメール主体のコミュニケーション方法に依存していることにある」と指摘し、共有すべき内容やコンテンツを一元管理する必要があると強調した。
基調講演
「製造業のデジタル革命、成功の条件」
デジタル時代に呼応した、全社レベルの組織・風土・働き方改革
「製造業で地殻変動が起きています。このままでは日本企業はゆでガエルになってしまう」。そう冒頭で語りかけたインプレスの田口潤氏は、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリングとサービス、電気自動車)により自動車産業が大きく変わりつつあること、クラウドファンディングによる資金集めの普及、四足歩行ロボットの開発などを紹介。デジタル革命で製造業が様変わりしつつあると指摘した。デジタル革命を加速する3つの原動力は資金、人材、ソフトウェア技術。これまでの非効率・不合理な事柄をデジタル技術で是正する、今までできなかったことをデジタル技術で実現する、日々、自らを変革し、失敗を承知で新しいことに挑戦するという行動原理を提起した。
シェアリングエコノミー、ギグエコノミー、サービタイゼーションなど、新たな経済モデルが着実に広がっている。破壊的な変革はまだ始まったばかりだが、技術は指数関数的に進歩し、デジタル変革の渦と無縁でいられる企業などないと強調。現状維持の打破は最低条件であり「文化、行動特性の変革」がカギになる。「第4次産業革命の中にいることを理解する」「ビジョン、方針を明確にする」「仕事を時間で管理しない」「本業以外の何かを手がける」「失敗(チャレンジ)に重きを置く」「IT製品やサービスを積極的に活用すること」が今、企業に求められていると語り、チャレンジすることを参加者に呼びかけて話を終えた。
課題解決講演
ITスキルが…とは言わせない。ここから始める外部情報共有革命。
営業の仕事をしていて、製造業の顧客と話をすると、「うちの社員はITスキルが低いから使いこなせない」とよく言われる。Dropbox Japanの千葉俊輔氏はそんなエピソードから話を始めた。勤務先が業務でスマートフォン活用の仕組みを導入していなくても、ビジネスパーソンの大半がスマートフォンを使っている。プライベートとビジネスのIT環境にギャップがあるのではないかと千葉氏。「製造業に勤務しているビジネスパーソンで、外出先で資料を作成できるのは6割ほど。見積もりや受注処理をできるのは4割弱、出先から会社の電話会議に参加できるのは3割にも満たないというデータを紹介し、そうした状態が機会損失につながっていると指摘。Dropbox社の営業はそれらのことをすでに実践していると明かす。ファイルをクラウド上のストレージに保存・同期し、情報を共有できるDropboxの画面をスクリーン上に映し出して操作方法などを解説。「社員がツールを使える環境にしなければITスキルは高まらない。社員を信用して、IT部門の管理の下で自由度を与えるのがいいアプローチ」だと述べた。
クロージング講演
残業削減から働き方改革へ
働き方改革と生活改革の好循環を
企業は働き方改革をして、社員の残業時間が半減したものの、社員の仕事満足度は逆に下がってしまった。部下に「帰れ」と指示した管理職は、部下の仕事をカバーするために自分の仕事量が増えた。残業代が減った中堅社員は不満を感じた。こうしたケースを示し、中央大学大学院の佐藤博樹教授は、働き方改革の目的を社員が理解していないと進まないと指摘した。働き方改革は残業を減らすこと自体が目的ではない。多様な人材が活躍できる職場をつくることと、安易な残業依存体質を解消し、結果として長時間労働をなくすことにある。その手法は、残業削減ではなく、仕事の内容や仕事の仕方、マネジメントの仕方を見直し、時間当たりの生産性を意識する働き方に変えるという方法をとるべきだ。
働き方改革で重要な役割を果たすのは管理職。時間をかけて働いたことが評価されて管理職になった人は、同じ評価軸で部下を見てしまう。しかし時間をかけることが自動的に能力向上に結び付くわけではない。時間は有限なものと考えれば、無駄な仕事は削減しようとするようになる。仕事以外の生活も大事にしたいことがある社員は、自分のための時間創出を意識し、効率的な働き方に取り組むようになる。どういう生活を実現する働き方改革なのかということを、社員にきちんと理解させることが必要だと佐藤氏は強調した。