事業戦略を支える人事の挑戦 SAP HR Connect Autumn 2019
主 催 SAPジャパン
協 力 東洋経済新報社
協 賛 EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング/アビームコンサルティング/オデッセイ/クレスコ・イー・ソリューション/JSOL/DTS/デロイト トーマツ コンサルティング/野村総合研究所/PwCコンサルティング
開会の挨拶
SAPジャパンの稲垣利明氏は、人事の変革に取り組んでいる各企業の講演を通じて、最新の取り組みを共有することで「皆様の変革のきっかけにつながれば」とあいさつした。
お客様講演1
VUCA時代における戦略的HRのあり方の一考察
~変革をリードする新たな人事戦略とは
日本たばこ産業の妹川久人氏は、これからのHRのあり方について考察した。先行き不透明なVUCAの時代は、持続的な戦略策定が難しく、戦略を実現するパートナー、HRの戦略も見通しにくい。その中で、ビジネス領域の拡大に伴って、多様化する人材に対して、組織のほうから合わせる必要が生じると想定。労働観も多様化して、人々を1つの人事システムで律することが難しくなるとして、個々に対応できる「応個」を目指すことを提案した。また、人口減少期に入った日本の将来を考えると、人材を社内に囲い込むより、流動化させ、日本全体でシェアするほうが得策とも指摘。人事は、社員の自立と自律を促す支援をすべきとした。テクノロジーを活用した人材データベースと学術理論を応用し、人と組織活動の見える化への関心に言及した妹川氏は「企業人事を卒業して、他社とのタッグを組んでいきたい」と語った。
お客様講演2
日本の中堅企業におけるグローバル人財マネジメント:拙速に、現実的に取り組む
THKの星野恭敏氏は、海外M&Aで急速に事業を拡大している同社の人材ガバナンスについて話した。従業員は1万3000人超、海外比率は6割に達し、以前の中堅企業的な人事では対応できなくなった同社は、2017年から、「SAP SuccessFactors」を使って「THKタレント・マネジメント・プロセス」を導入。グローバルに人材を把握、将来の経営幹部候補を計画的に育成する仕組みづくりに取り組んだ。経営資源が限られる中で、使用する「SAP SuccessFactors」の機能は最小限に絞って「拙速をいとわない」短期で導入。候補者の推薦に当たっては、能力と業績を評価する9ボックスモデルに、行動事例の判定基準を加えて客観性を担保した共通の物差しを定めた。また、メンタリングや、経営幹部が育成に関与する制度も整備。「仕組みを変えて、社員の行動を変容させることで、よき企業文化の醸成につながることを期待している」と語った。
パートナー講演
人材マネジメントの変革/デジタル化
~「Sysmex Way」を実現するグローバル人材マネジメントに向けた取組みについて
SAPパートナーのEY、田口陽一氏は、全世界に展開している臨床検査機器大手、シスメックスのグローバル・タレント・マネジメント改革に、「SAP SuccessFactors」導入を支援していることを紹介。続いて、シスメックスの飯塚健介氏が、活発なM&Aもあって海外従業員比率が6割になり、海外グループ会社が経営層の世代交代期を迎えて、人材マネジメントの仕組みを抜本的につくり直すことを決断したと説明。日本と海外で異なる等級・評価・報酬制度の統一や、若い世代のキャリア構築などの人材マネジメント、後継者プランニングのグローバル統合を進めている。人事管理システムは、グローバルに1つのデータベースに統合、HR業務プロセスも基本的にベストプラクティスに合わせる。「単純に欧米型にするのではなく、社風や日本企業のよさを生かしつつ、こだわりすぎないように、聖域なく変革の議論をしていく」と述べた。
SAP講演
人と組織のエンゲージメントを成果に繋げる最新テクノロジーが変えるこれからの人事
SAPジャパンの山口真一氏は、企業の生産性向上のためには、自律的な従業員・組織に変革することが必要であり、エンゲージメント向上が必須と指摘した。が、エンゲージメント調査の実施、分析は時間がかかり、適時に改善策を打てない課題がある。19年にリリースした新機能により、調査の実施、要因分析から改善アクション実行までの一連の作業を効率的に実施可能なソリューションとなり、エンゲージメント向上を実現する。デモでは、エンゲージメントが低い要因として割り出された「相談・サポート」への不満について、改善策のターゲットを絞るため、分析の切り口を事業単位別から在籍期間別などに自在に変更。在籍の短い若手の不満が強いとわかると、システムが最適な対策としてメンター制度活用を提案してくれて、制度のプロモーションも「SAP SuccessFactors」上でできる。20年以降は、ユーザーがやりたいことをテキストボックスに入力するだけで操作できる機能もリリース。「ユーザーエクスペリエンスが向上して業務効率化が加速する」と語った。
お客様講演3
経営戦略を支える人と組織のグローバルガバナンス
~企業のグローバルレベルに応じたガバナンスと運用~
参天製薬の藤間美樹氏は「グローバル化の本質は多様性」と述べ、文化の異なる多国籍メンバーが集まる場面では、根回しなどは理解されないと指摘。グローバルリーダーシップについて、日本型のプロセスマネジメントではなく人をリードする、信念を持って寛容さで多様性を受け止める、論理的に話し英語で心をつかむ話をできるようにする――などのポイントを挙げた。同社は、海外事業比率の高まりとともに、19年4月から新たなグローバル・マネジメント・フレームワークを導入して、変革に着手。各地域と本社の管理部門間にレポートラインを整備するなど、グローバルで統合化を進めている。グローバルリーダー育成の取り組みでは、子育て中の社員も参加可能な数週間の連続海外出張を新設。「異文化の多様性を肌感覚で知ることができる海外駐在は望ましいが、工夫次第で国内にいながらでも育成できる」と述べた。
クロージングセッション
SAPジャパンの南和気氏は、この日の講演要旨を総括。これからの人事は、公平性だけではなく、課題に焦点を絞って戦略的に取り組む人事に変革する必要があるとした。また、現場管理職の負担も増えると指摘。「SAPは、現場での使いやすさを追求した製品で、社員の自律を促し、エンゲージメントの高い組織づくりを支援する」と語った。