メディア業界の脱・無駄時間と生産性向上 シリーズ働き方改革セミナーレポート

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4K、8Kなど映像の高精細化、5Gによる通信の高速大容量化など、めまぐるしいテクノロジーの進展の中、新たなビジネスモデルの構築を求められるメディア業界は、大きな変革の波にさらされている。東京・千代田区で開かれた「シリーズ情報共有革命~メディア編~」では、よりクリエーティブな仕事に集中するための業務改革について検討。ファイルを保存するクラウドストレージの枠を超えて、共同作業のためのコラボレーションツールとして進化を続ける法人向け「Dropbox Business」の活用について、ユーザー企業の事例報告や、新しい「Dropbox Spaces」の機能が紹介された。

主催 東洋経済新報社
協賛 Dropbox Japan

オープニング

Dropbox Japan
古舘 昌孝氏

Dropbox Japanの古舘昌孝氏は、世界中で多くのメディア企業が利用するDropboxについて「従来のクラウドサービスに限界を感じた企業が、ツールを選定し直す過程で選ばれている」と述べた。初のメディア向けカンファレンスの開催に当たり、個人版との違い、他社製品との違いも含めて「なぜDropbox Businessが選ばれるのか」を発信、「生産性向上を支援していきたい」と語った。

基調講演
メディア業界の環境変化とDX(デジタルトランスフォーメーション) の方向性

野村総合研究所
ICTメディア・サービス産業コンサルティング部
部長
三宅 洋一郎氏

野村総合研究所の三宅洋一郎氏は、若者を中心にスマートフォン利用が拡大して、既存メディアの視聴・購読が伸び悩む現状を説明。利便性が高まる一方で、ユーザーが好まない情報を遮断するフィルターによる情報の偏りの問題を指摘した。

動画は通信量が大きいため、日中の視聴はまだ限定的だが、5G時代到来で通信量制限がなくなれば、スマートフォンでの動画視聴が加速し、既存のテレビのあり方にも影響を及ぼすと予測。動画配信サービスにアップロードされるコンテンツはすでに膨大な量になっていて、誰もがコンテンツ制作が可能な時代には、自前で制作して自社媒体に流す従前のメディアビジネスは大きく変わる可能性があるとした。

これからのDX時代のメディア業界は、視聴者のニーズを把握するデータ基盤を整備し、視聴者の期待に応じてコンテンツを評価、改善、提供することが求められると方向性を提示。外部のコンテンツ制作者を集めて、支援を提供、育成する場をつくることで、既存メディアの強みを発揮できるとの考えを示した。また、自社媒体にとどまらず、リアルイベントや物販など、価値提供の幅を広げる必要も強調。「データを使い、視聴者の期待に応え、信頼を得ることが大切になると思う」と語った。

ディスカッション 
「株式会社ぱど がフリーペーパーの制作でDropbox Businessを採用した理由」および「テレビ朝日が制作・営業部門で使われるDropbox Businessをどうやって管理しているのか」

Dropbox Japan
インダストリー リーダー
千葉 俊輔氏

最初にDropbox Japanの千葉俊輔氏が、高速な同期やアカウントを持たない社外協業者からも大容量ファイルを収集できる、ファイル リクエスト機能などを備えた「Dropbox Business」の特徴を説明して「メディア企業の共有ワークスペースになる」と紹介した。他社クラウドからの大容量データ乗り換えも容易で、最近は「データのガバナンスを強化するため、最上位のEnterpriseプランの申し込みも増えている」と述べた。


ぱど
情報システム部
情報システム課
長谷川 崇氏

フリーペーパー「ぱど」を発行する長谷川崇氏は、社内サーバーの故障で業務に支障が出たのを機に、社外からもアクセス可能な作業スペースとして使える、クラウド型のファイルサーバー導入を検討。過去の掲載データも保存できる容量無制限(Advancedプラン以上)で、自動的にバックアップできる機能があり、使いやすいユーザー表示画面などを考慮してDropboxに決めた。「サーバー管理が不要になり、故障のリスクも避けられる」と話した。


テレビ朝日
技術局 技術戦略部
IT戦略担当部長
安田 元氏

テレビ朝日の安田元氏は、クラウドサービスの管理強化について説明。同社では、現場の責任でクラウドを導入できるポリシーだったため、個人・部署レベルではDropboxが利用されており、Dropbox社にリスクアセスメント調査を依頼したところ、想像以上に利用が広がっていることが判明。セキュリティーの観点から、社内ルールの見直や、利用目的に応じて最適なクラウドサービスを選択し、IT部門がライセンスを管理する取り組みを進めている。今後は、リスク管理だけでなく「業務効率向上の観点から、クラウド利用を促したい」と語った。

事例講演
株式会社ロボットにおけるDropbox Businessの活用事例

ロボット
経営企画本部 経営企画部
高橋 学氏

映像制作会社ロボットの高橋学氏は、テレビCMの撮影資料作成におけるDropboxの活用事例を説明した。撮影イメージをまとめる絵コンテは、企画書を基に同社が作成、プランナーと確認・修正作業を何度も繰り返す。やり取りされる情報には、未発表の商品情報なども含まれるため、従来は、パスワード付きの圧縮ファイルにしてメールで送信。パスワードは別のメールで送り、解凍するという手間のかかる作業をしていた。また、最新版がどのファイルかわからなくなったり、メールアドレスを間違えるリスクもあった。

Dropbox導入後は、プランナーを招待した共有フォルダーでファイルを共有。やり取りの手間も、誤送信リスクも大幅に軽減された。Dropboxのバージョン履歴から、過去に保存されたファイルを閲覧・復元できるので、共有フォルダー内はつねに最新版だけを残すことで混乱もなくなった。Dropboxは、スマホアプリからファイルを閲覧、コメントを残すことも可能で、外出時の移動時間などにも作業が可能になり、レスポンスも早まった。今回のセミナー資料もDropboxを使って作成したという高橋氏は「通勤時間にも作業ができるのは助かる」と語った。

グローバル事例講演
海外放送局におけるDropbox Businessの最新事例

Dropbox UK, Ltd.
メディア業界 プリンシパル
アンディ・ウィルソン氏

Dropbox UKのアンディ・ウィルソン氏は、英・ロンドンBBC在任時に、2012年の交通網負荷軽減に向けた在宅ワークの実験を担当、遠隔コラボレーションワークに関心を持ったのを機にDropboxに移籍したと述べた。

遠隔業務の連携を妨げる要因として、多様なファイル形式の混在、膨大なコンテンツ量、外部協力会社やフリーランサーらとの複雑な組織を指摘。また、ビジネスチャットやビデオ会議システムなどツールを切り替えながらの仕事は集中力を低下させるとした。Dropboxは、ワンストップで閲覧、編集、内容検索ができるよう多様なファイル形式に対応。即座にファイルを共有することで、世界中にメンバーが散らばった状況でも「チーム」を機能させることができる。

さらに、便利なクラウドストレージにとどまらず、遠隔でチームメンバーが円滑にコラボレーションできるよう、新たに開発した「Dropbox Spaces」を紹介。1つの画面に、さまざまなツールをまとめられ、メンバーのステータス情報、プロジェクトのTo Doリスト、重要ファイルのピン留めなどができる。20年後のメディア産業はまったく違ったものになると予想したウィルソン氏は「シームレスな連携でチームワークを発揮し、クリエーティブな仕事に集中できるよう、皆さんを支援したい」と語った。