グローバルからみた日本企業のブランドパワー ブランドの可能性を最大限に引き出すために
共 催
東洋経済新報社 WPPグループ
協 力
AKQA/バーソン・コーン&ウルフ/エッセンス/フィンズベリー/ジオメトリー/グレイ/グループエム/ヒル・アンド・ノウルトン・ストラテジーズ/ホガス/カンター/ランドー/メディアコム/マインドシェア/オグルヴィ/サドラー/ザ・ストアWPP/VMLY&R/ウェーブメーカー/ワンダーマン・トンプソン
オープニング
WPPのデイヴィッド・ロス氏は、ブランドが株価パフォーマンスに資することを示すデータを紹介。企業の成長のためには「ブランドの意義が世界中でますます重要になっている。ブランドにかけるのはコストではなく、リターンのある投資」と語った。同グループが発表している、国のブランドランキング「ベスト・カントリー」で世界2位、生産国としての評価も高い日本の可能性に触れて、「ブランドZはブランドについての理解に役立つ。日本のブランド力を世界に解き放つために、われわれのリポートで貢献できれば」と語った。
基調講演
適度なバランス:日本ブランドが海外でさらなる成功を収める為に
Finding the Right Balance:how Japanese brands can find even more success abroad
カンターのエルスペス・チェン氏は、2019年と調査が開始された06年の世界ブランドランキングを比べると、トップ10で8ブランド、トップ100では52ブランドが入れ替わったことを示し、ブランドZの分析から見えてくるVUCA時代のブランド構築のポイントを挙げた。19年、新たにナンバーワンになった企業は、EC、エンターテインメントなど、多様な事業で構成されるエコシステムと指摘。「5つ以上の領域のエコシステムを持つブランドは、ほかの10倍以上の速さで成長する」と指摘して、製品・サービスのカテゴリーを超えた、適切なパートナーとの提携を促した。また、利用に応じて植樹することで若者に人気の検索エンジンのように明確な目的を持つこと、忙しい人々の記憶に刻まれる体験を提供すること、そして、イノベーションを促すためには、欧米だけでなくアジアからも学ぶことが重要と語った。
カンター・ジャパンの大竹秀彦氏は「世界で最も価値のある日本ブランド Top50ランキング」を発表した。調査は、日本発ブランド、日本市場で成長した海外発ブランドを対象に、「財務上の価値×ブランドの貢献度」でブランド価値を計算。グローバルトップ100の日本ブランドは06年の8から19年は2に減っていて、リポートから「世界で評価される日本のブランドづくりのヒントをつかんでほしい」と話した。
カンターのナイジェル・ホリス氏は「激変する世界では、変わるものだけでなく、人の感情のように変わらないものにも注目すべき」と語った。市場での成功は「トレンドをつくるブランド」として認識される必要があり、差別化が欠かせないが、それだけでは不十分。ブランドZの分析は、日本市場で評価の高い国内ブランドであっても、海外市場の評価を得られず、国内で機能したマーケティングが海外で通用するとは限らないことを示している。
ホリス氏は、現地に合ったメニュー・店舗づくりをすることで、中国市場で成功したグローバルのファストフードチェーンなどを例に挙げて、現地の文化や習慣を理解し、その国の生活文化に製品を適合させるために、何をすべきかを考える、感情に訴えかけて親近感を抱かせるようなマーケティングをする――などのポイントを指摘。「グローバル化の成功には、ローカル化とのバランスがカギになる」と述べた。
ゲスト講演
外務副大臣の鈴木馨祐氏は、経済成長に向けた、日本企業のブランドの重要性を強調。「変化の速い時代の中で、日本企業が世界で活躍できる制度作りに努めたい」と語った。
パネルディスカッション(1)
“発想の転換”が日本発信のブランド価値を世界で更に高める
~海外の消費者に私たちのブランド価値を理解させるには~
19年のブランドZ世界ブランドトップ100入りが、わずか2社にとどまった日本企業のブランド力向上について議論した。コニカミノルタの藤井清孝氏は、日本のブランドは製品に結び付いたものが多いが、世界ではサービスなど、幅広くライフスタイルに結び付いたブランドが強くなっている、と分析。正確性や信頼性など日本の強みを展開できる仕組みを構築できれば、グローバルに通用するとした。日本企業は、製品を見ればわかるという考えを改めて「ブランドのメッセージをきちんと発信すべき」と語った。アン・ダウ氏は、世界の上位ブランドのランキング入りが少ないのは、日本企業にとって大きな機会があるということと前向きに捉え、ブランド構築には、消費者の情緒的共感を得ることの重要性を強調した。日本の化粧品メーカーが買収したスキンケアブランドを例に「Z世代らの若者の共感を得るための差別化が大切」と指摘。「ブランドを、市場調査で把握した消費者の生活とリンクさせる」ことを求めた。モデレーターの福永朱里氏は「コミュニケーションする努力と勇気を持ち、世界で活躍する日本ブランドが増えてほしい」と語った。
パネルディスカッション(2)
日本からグローバルへ飛躍するスポーツマーケティング
~国境無きブランド価値を構築する~
モデレーター:福永 朱里氏
スポーツイベントについて、マイケル・ペイン氏は、人々の関心を集めるストーリーを提供して情緒的関係を築き、ブランド価値を高めるプラットフォームになる可能性を強調。「どんな関係を構築できるかを理解するため、時間をかけた準備が重要」と述べた。アシックスの松下直樹氏は、スポーツ用品メーカーは、選手に最先端機能の商品を提供することで活躍を支援し、ブランドの露出を高めるというビジネスと密接につながるマーケティングをしていると説明。「担当者は将来、活躍する選手を見極める力が求められる」と語った。日本コカ・コーラの髙橋オリバー氏は、コカ・コーラ社がスマホアプリなどを活用しながら、自社らしさを打ち出せるキャンペーンを練り上げて展開し、スポンサーシップの成果をきちんと測定して次につなげていると紹介。「『こうすればよかった』といったナレッジを継承することが大切」と語った。