最強の経営課題解決カンファレンス 変化の先送りがもたらす、機能不全と顧客離れ

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経済環境の激しい変化の中で、企業が抱える経営課題は増え続け、企業も変化が求められている――。「最強の経営課題解決カンファレンス」では、会社を改革するためのリーダーシップ、イノベーションの起こし方、会社の仕組みの変革などをテーマに、経営者や識者が語った。雨にもかかわらず会場を埋めた参加者には、組織のあるべき姿と現状、自社の課題、今後のアクションなどを書き込むワークシートを配布。オープニングで東洋経済新報社の田北浩章・常務取締役は「明日から会社に戻ってやるべきことを、できるだけ多く書き込めるよう、ヒントを得ていただきたい」とあいさつした。
主催 東洋経済新報社
協賛 SAPジャパン

基調講演&ワーク
全社一体の改革と修羅場の勝ちパターン

修羅場を勝ち抜くこれからのリーダーとは
~組織を動かすダークサイド・スキル~

経営共創基盤
パートナー 取締役
マネージングディレクター
木村 尚敬氏

経営共創基盤の木村尚敬氏は、経営には、連続的にイノベーションを積み上げる改善領域と、非連続な飛躍を必要とする改革領域があると説明。同質性の高い日本企業は、統率の取れたオペレーションを強みに、積み上げ型で最適な答えを出す改善型リーダーに率いられてきた。が、破壊的イノベーションの時代には、既得権に配慮して、どっちつかずの中間解を出す意思決定では対応できない。事業の存廃でも、中間解に逃げずに選択する改革型リーダーが必要で、なぜ何をしなければならないのかと問いを立て、ポジションを明確にできる戦略的リーダーシップの大切さを訴えた。社内リソースのない、AI、IoTを使ったイノベーションについては、不確実性の高いベンチャー企業との提携が不可欠だが、確実性を重視する従来の会社組織では難しいとして、出島的組織で取り組む必要性を示した。経営トップは、自身で把握できる1次情報だけでは、すべての経営課題を判断できない。「ミドルレイヤーの人たちがリーダーシップを発揮し、現場で気づく変化の兆候をトップに届けなければ、日本の会社は強くなれない」と述べ、自身の価値観をしっかり持ち、踏み絵を迫られた状況でも信念を通すことの大切さを訴えた。

課題解決講演&ワーク
事業承継、後継者育成と企業変革

慣習との決別がイノベーションを生みだす
~スモール・スタートと一点突破の戦略~

静岡県立大学大学院
経営情報イノベーション研究科
准教授
落合 康裕氏

静岡県立大学の落合康裕氏は、慣習を重んじる老舗企業で、新たな取り組みを成功させた承継者の事例から、企業がイノベーションを起こして環境変化に対応するためのヒントを探った。先代の反対を受けながら、洋菓子風のおこしをヒットさせた大阪の菓子の老舗7代目承継者や、本社を離れ顧客基盤のない隣県で、新規開拓業務に従事した承継者が、顧客の悩みからヒントを得て、売れていなかった獣害ロープの普及に成功した京都の産業用ロープの老舗、の事例を紹介。イノベーションを起こすためのポイントとして、社内リソースにアクセス可能で、かつ自律的な環境に承継者を配置することにより、慣習から決別して新たなことができる組織デザイン。小さく始め、早期に撤退を判断することで、繰り返しイノベーションに挑戦できる体制。組織内の合意形成の過程で、とがったアイデアが慣習にのみ込まれるのを避けるため、小さな成功を一点突破で組織に伝播させる――の3点を挙げた。イノベーションに必要な異質な価値観の衝突を、親子間の率直な意見交換によって担保している老舗の強みにも言及して「承継者の役割はプロジェクトリーダーとしての突出的ミドルに近い。変化のヒントは、老舗の価値観にあるのでは」と語った。

講演&対談
実践事例講演(経営課題解決とデジタル活用)

グローバルでの業務改革と経営可視化による更なる成長への挑戦

オプテックス
代表取締役社長
上村 透氏

オプテックスの上村透氏は、同社の2つのビジネス改革について説明した。国内外で展開する自動ドア用の人感センサーをはじめ、さまざまなセンサーを製造、世界約80カ国に販売する同社は、特定用途に絞ったセンサーを提供するニッチトップを目指し、個別最適を重視した経営をしてきた。が、グローバルな事業拡大に伴って、物流の非効率、スプレッドシートを使った集計業務の手間といった課題も浮上。サード・パーティー・ロジスティクスを活用した物流網の整備とともに、SAPのERPシステムを導入して、経営指標の可視化、業務標準化や効率化を進めている。もう1つが、IoTを活用した、単なるセンサーの製造販売から、センシングサービスへのビジネスモデルの変革だ。センサーで侵入者を検知して警告・通報を行う英国のモニタリングサービス会社の買収。車両センサーで駐車場の空き具合がリアルタイムでわかる仕組みを駐車場管理会社へ提供。自動車の急発進や急停車を検知する安全運転支援の仕組みを、損害保険会社が加入者の運転状況を保険料に反映させる制度に使うなど、新しいビジネスを共創している。外部とのネットワークを広げるために、上村氏自身が「展示会やセミナーに参加している」と話した。

講演&質疑応答
Change, or Die!

元カルビー
代表取締役会長 兼 CEO
松本 晃氏

冷戦終結を境に、大量生産、偏差値教育の時代、グローバル化、少子高齢化、長期不況へと社会は大きく変わり、会社も変わらなければならなくなった。カルビーを再建した経営者の松本晃氏は「古い仕組みの改革とあしき文化の破壊」について語った。まず、複雑化した古い仕組みを簡素化。稟議書や定例会議を廃止し、情報の透明化、権限委譲を進めた。会長・社長以外の取締役が退任する一方、社外取締役を登用し、株主を代表する取締役会が経営を監視するガバナンスの基本を徹底。オフィスは移転してワンフロアにまとめ、個人席をなくして物を置けなくすることで「作業場から、頭を使って考える場所」に改革した。給与は、生活できる分、責任に応じた分、会社の稼ぎの分け前の3つに体系を簡素化し、諸手当を廃止した。「会社が求めるのは成果。そのために、会社は魅力的な人を育て、力を発揮してもらえる環境と制度を整える」ことを最優先に取り組んできた。古い慣行を廃して働き方を変える。もはや実態に合わなくなった、学ぶ、働く、老後の3ステージの生き方から、人生100年時代に合った生き方に変える。そして、会社も変わることによって「一人ひとりの人生が豊かになるサイクルが生まれる」と語った。

クロージングスピーチ&ラップアップ

SAPジャパン
代表取締役社長
福田 譲氏

SAPジャパンの福田譲氏は「エクセレントカンパニーの取り組みをノウハウ化したソフトウェア導入で業務を変える当社製品は、準大手、中堅中小企業でも活用が進んでいる」と述べ、導入企業訪問など同社企画に参加して体験することを促した。


企業変革の取り組みについては https://www.sapjp.com/ にてご覧いただけます。