ダイキン、新商品で「独自技術」にかける本気度 「うるるとさらら」発売から20年、驚きの展開

拡大
縮小
1999年に加湿(うるる)と除湿(さらら)ができる唯一のエアコン(※1)として発売された、ルームエアコン「うるるとさらら」。同社の国内空調事業を牽引してきたフラッグシップモデルとして、広く知られている。初代機発売から20年となる2019年11月、新たなブランドライン「うるるとさららシリーズ」が立ち上がった。全4商品のラインナップで「あらゆる場所に快適な空気を作り出す」と気勢を上げるダイキン。その思いと戦略を探った。

うるるとさららシリーズの発売に先駆けて行われた記者発表会。同社の空調営業本部長・舩田聡氏は、ここで力強く決意を表明した。「これまで、主にリビングで使われてきた『うるるとさらら』。これからは家庭用・業務用を問わず、その空間に適した湿度コントロールができる『うるるとさららシリーズ』として展開します。あらゆるユーザーがあらゆる場所で、手軽に、より快適な暮らしができるように提案を強化していきます」。

空間に適した湿度コントロールができる「うるるとさららシリーズ」

「うるるとさらら」は累計販売台数300万台超を誇り、ダイキンの国内空調事業の屋台骨となってきた商品である。この強力なネームバリューを生かしつつ、同社が長年磨き続けてきた独自の「湿度コントロール」技術をさらに広く展開したいとの考えから、発売20周年を機に満を持してのシリーズ化、リブランディングの運びとなった。

この連載はこちら

上述のとおり、うるる(加湿)とさらら(除湿)を合わせたネーミングからも、同社の「湿度」に対するこだわりがうかがえる。なぜダイキンはこれほど強く「湿度」にこだわり続けるのか。それは、人の健康と快適さに欠かせないと言われている「空調の4要素」(温度、湿度、気流、清浄度)のうち、「湿度」こそが快適性に大きく影響するにもかかわらず、最も意識されにくいと同社は考えているからだ。

より高まる「湿度コントロール」の重要性

ダイキン工業 常務執行役員
サービス担当、空調営業本部長
舩田 聡

とくに近年は夏場の室内における熱中症や、冬場のインフルエンザの流行、乾燥対策など、湿度に関連した社会課題が顕在化している。「こうした課題への対策として、エアコンをはじめとした空調機器の役割は大きい。とりわけ湿度コントロール技術の重要性は、これまで以上に高まっています」と舩田氏は語る。

もともと「うるるとさらら」は、冬の乾燥という空気課題の解決に向けて、給水せずに室内を加湿するダイキン独自の技術「無給水加湿技術」(※2)によって誕生した商品。当時は、家の中でもとくに人が集まり、空気へのこだわりが強いと考えられるリビングでの使用を想定した開発、商品化を行った。実際にダイキンの調査によると、「うるるとさらら」購入者のほとんどがリビングで使用している。使用感について「満足」と回答している人は9割に上り、そのうち8割が買い替え時にリピートしているということがわかっている。

画像を拡大
世帯ごとのルームエアコン保有台数は右肩上がり。保有する世帯の中では、3台以上の保有が平均的だ

一方、今やルームエアコン普及率は90%超、世帯当たりの保有台数も約3台へ増加。リビングだけではなく、寝室や小部屋にもエアコンを備える『1室1台』の時代になっている(グラフ参照)。

こうした実態から、「リビング以外の空間にも『うるるとさらら』が作る快適な湿度を届けたい、その心地よさを体感できる空間を広げたいと考えるようになりました。そしてこれまで商品名だった『うるるとさらら』をブランド名に改め、シリーズ化することにしたんです」と、舩田氏はシリーズ展開の背景を語る。

「うるさらX」「うるさらmini」「うるるとさらら空気清浄機」そして「うるるとさららZEAS(ジアス)」の4商品で構成されている、うるるとさららシリーズ。「使っていただく空間、シーンに応じて、それぞれ大きな特徴があります」と言うのは、同社空調営業本部の北村亮人氏だ。

ダイキン工業
空調営業本部 事業戦略室
北村 亮人

「今までルームエアコンとして展開してきた『うるるとさらら』ですが、今回のシリーズ化でルームエアコンを2機種、ルームエアコン以外にも2商品をラインナップすることにしました。20年かけて築き上げてきた『うるるとさらら』の名を、さらに強力なブランドに育て上げるため、それぞれの商品の役割を明確に打ち出していくことにしたんです」(北村氏)と、商品コンセプトの背景を説明する。

4商品の中で最上位機種の「うるさらX」は、無給水加湿技術の応用や専用アプリとの連携など、さらに進化した機能で快適な空間づくりを狙う。「うるさらX」という名称も、「さまざまな技術、機器同士の組み合わせを意味するクロス(X)を冠することで、新しい価値を提供できると伝えたかったんです」(北村氏)。

「うるさらmini」は、薄型で狭い部屋でも圧迫感のない寝室用エアコン。1日のうち約1/3を過ごす寝室にも、湿度コントロール技術を届けたいという思いから生まれたものだ。冬には睡眠時のエアコン暖房による乾燥、夏には熱帯夜の寝苦しさなど、つらい思いをしている人も多いのではないだろうか。

業務用にも「うるるとさらら」を広げていく狙い

そして、ルームエアコン以外の「うるるとさらら」ブランドとして新登場したのが「うるるとさらら空気清浄機」。北村氏は「除湿、加湿、脱臭、空気清浄の4性能が1台に集約されていて、工事なしで使いたい場所に設置できることが特徴です。例えば玄関や部屋干しをする場所に置くなど、自由な使用が可能。『うるさらX』や『うるさらmini』以外のエアコンをすでに持っている方にも、当社の湿度コントロール技術が生み出す快適さを実感してほしいと考えました」と語る。

さらに「うるるとさらら」の業務用として展開するのが「うるるとさららZEAS」だ。家庭だけでなく、例えばオフィス空間やクリニックや学習塾、保育園、理美容室など、多くの人が集まり湿度コントロールが求められる空間で広く利用されることが想定されている。

画像を拡大
「うるるユニット」と店舗オフィスエアコンの組み合わせで、1年中快適な空間を実現する「うるるとさららZEAS」

無給水加湿機能を搭載した「うるるユニット」(※3)と、寒くなりにくい除湿機能「さらら除湿」を備えた店舗オフィスエアコンから成る。もちろん「うるるユニット」単体でも使用できるので、既設の業務用エアコンがある空間でも導入可能だ。「複雑な水配管工事や、給水、メンテナンスの手間などがいらず、1台のリモコンで操作可能。すぐに快適な加湿を実現できます」と北村氏はメリットを語る。

冬場の乾燥、ウイルス感染。夏場のジメジメ感、カビの繁殖、洗濯物の臭いなど、湿度コントロールによって防げる生活課題は数多くある。「これまで『うるるとさらら』を使っていただいてきたリビング以外でも、1年を通して快適な湿度環境を提供したい。これが、4つの新商品に通じる当社の思いです」と北村氏は自信を見せる。

普段、温度よりも意識されにくい「湿度」。しかし、すべての生活空間を快適な空気で満たすには「湿度コントロール」が不可欠のようだ。今回の「うるるとさららシリーズ」4商品をきっかけに、私たちの身の回りの空気が、より過ごしやすく快適なものになっていくことを期待したい。

>あれも、これも、しつどのしわざ?

(※1)1999年発売当時、同社調べ (※2)2019年10月3日現在、家庭用壁掛形ルームエアコンにおいて。同社調べ (※3)2020年春発売予定

関連ページAD
お問い合わせ
ダイキン工業
連載ページはこちら