カローラが押し上げる「手が届く車」の平均点 3ナンバー化、スマホ+カーナビを音声で操作

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初代カローラの1969年から33年間、国内の車名別販売台数(軽自動車を除く)で連続トップに輝いたクルマといえば、トヨタのカローラだ※1。その完成度の高さは世界でも受け入れられ、150カ国以上の国と地域で積み上げられた販売累計台数は4750万にも上る。そのカローラの12代目が9月に発表された。

グローバルベストセラーとしてのカローラ

高度成長期に登場し多くの人に届けられたカローラは驚異的なベストセラーになったが、多くの人が乗るからこそ「大衆車」のイメージが付いていることも確かだ。だが、かつてのイメージで、このクルマを捉えてしまうと実態を見誤る。モデルチェンジを繰り返し、「手が届くクルマ」の平均点を大きく押し上げるばかりか、その国の特性に合わせたベーシックカーとしての地位を獲得しているからだ。

例えば海外モデルと日本モデルとではボディサイズを変えている。日本のセダンモデルは、海外モデルと比べて全長は−135mm、全幅−35mm、全高±0mm、ホイールベース−60mmという数値。日本モデルのほうが一回り小さいのだ。

1966年に発売された初代カローラ。日本の高度成長期に合わせて多くの人に届けられた

だからといって国内の旧型と比べて小さくなったわけではなく、全高こそ−25mmだが、それ以外の数値は伸びている。

全幅は1700mmを超えるため日本の法律上3ナンバーとなるが、わずか+45mmであることや、最小回転半径は従来型と同等の5.0m※2であるから、日本の都市部の狭い道での取り回しやすさはほとんど変わらない。またミラー格納時の幅は、取り付け位置の工夫により従来型と同等とされているため、これまでのガレージにも十分収まるだろう。日本国内でのシチュエーションを想定した絶妙なサイズ感を実現している。

従来のクルマづくりで考えれば、日本モデルだけこのようにサイズを変えることは、単純に製造コストの増加につながるため本来あまり行われない。

これを可能とした大きな要因は、今回からTNGA※3プラットフォームを活用できたことにある。ベースとなるプラットフォームを、海外モデルはもちろん、ほかの車種とも共有すれば、その分コストを抑えやすくなる。

TNGAプラットフォームを採用することは、開発の効率化が図れるというメリットだけでなく、「走る」「曲がる」「止まる」というクルマの基本性能を、徹底的にレベルアップすることにつながる。同プラットフォームは先に登場したハッチバックのカローラスポーツをはじめ、プリウスやクラウンなどに採用されていて、すでにその走行性能は高い評価を得ている。

この優秀なプラットフォームを手に入れたカローラも、低重心でフラットな乗り心地や優れた操縦安定性、高い静粛性を手に入れた。ドライバーの目線が動きにくく、狙いどおりのラインをトレースしてスムーズに加速していくその走りについて、テストコースで初めて乗った豊田章男社長も「初めてのクルマに乗ると、本来運転に集中してしまうが、このクルマはストレスがないから普通に会話しながら運転できる」と高く評価している。

さらにTNGAプラットフォームを採用したことで、エクステリアデザインも低く構えた躍動的なデザインにすることができた。海外モデルよりも全長や全幅を抑えているにもかかわらず、前後のフェンダーを張り出してダイナミックでワイドなイメージに、フロントは力強くスポーティーなデザインにしている。海外モデルのデザインをまとったかと思えば、日本モデルも着こなす。まるで体幹を鍛え上げた体には、どんな服でも似合うといわんばかりだ。

音声でスマホ+カーナビを操作

クルマの基本性能だけではない。12代目カローラはこの先のCASE※4時代を視野に入れ、特にC(コネクテッド)やA(自動運転)においても歩みを進めた。

まずC=Connected(コネクテッド)だ。これは車両と外部が通信機能などによってつながることで、これまでにない新しいサービスが生まれることを指す。12代目カローラは、トヨタブランドとして初めてディスプレイオーディオを全車に標準装備した。これによってスマートフォンとの連携が可能となり、普段使っているカーナビアプリや音楽アプリをディスプレイで操作して利用することができる。

車載ディスプレイはもはやカーナビやテレビだけでなく、さまざまなサービスの入り口となる

スマートフォンのカーナビアプリでは、TCスマホナビ(トヨタが提供するスマートフォン向けナビ機能)やLINEカーナビなどが使える。これまでナビといえば出発前にいちいち画面を操作して、目的地を入力しなければならなかったが、どちらのアプリも音声で目的地を入力できるからとても手軽に出かけやすい。

一方、これまでどおりの車載用ナビを利用したいという人のために、エントリーナビキットのほか、T-Connectナビキットも用意されている。

とくにT-Connectナビでは万が一の事故や急病時には専用のオペレーターが警察や消防に取り次ぐなど素早く対応してくれるほか、オイル量をはじめとした車両情報から最適なメンテナンス情報を受けられたり、エコドライブのアドバイスをスマートフォンにもらえたりするなど、多彩なサービスが用意されている。

左から、カローラスポーツ、カローラツーリング、カローラ

もう1つ、特筆すべきは、車自体が状況を判断して事故を未然に防ぐ最新の「トヨタ・セーフティ・センス」が全車標準で装備されていることだ。クルマや昼間の歩行者だけでなく、自転車や夜間の歩行者も検知して、衝突被害軽減ブレーキで事故を防いだり、軽減したりする。また駐車場など低速時に壁や車両を検知して衝突被害の軽減を図る、つまり踏み間違い事故に対応する機能も用意されている。

これは安全運転をアシストすることに主眼があるが、長い目で見れば、CASEにおけるA=Autonomous(自動運転)にもつながるだろう。

これらのことからわかるように、かつての「大衆車」としてカローラを捉えるべきではない。カローラはその時代ごとに人々が求める機能を備えたベーシックカー、といったほうが実態に合う。そのための日本モデルのサイズ変更であり、優れた走行性能であり、C(コネクテッド)やA(自動運転)の導入というわけだ。

前述のT-Connectナビでの手厚いサービスは、かつてはクラウンなど上級セダンに限った話だったが、今やカローラでもこうしたサービスを受けることができる。むしろトヨタのベーシックカーであるカローラだからこそ、このサービスが取り入れられたと言っていい。これは「世の中の多くの人に手の届くよいもの」という、初代から貫かれているカローラの哲学そのものだ。

時代の流れを反映して、ベーシックカーとしての基準を一気に底上げしたのが、紛れもなく12代目カローラなのだ。

※1 日本自動車販売協会連合会
※2 G-Xグレード15インチ装着車。16、17インチタイヤ装着時は5.3m
※3 トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー=Toyota New Global Architecture。「クルマを骨格から変えて、基本性能と商品力を大幅に向上させる」(トヨタHPより)という取り組み
※4 CASE/ケース。大変革期を迎えている自動車産業の動向を示すキーワード。C=Connected(コネクテッド)、A=Autonomous/Automated(自動運転)、S=Share/Service(シェア/サービス)、E=Electric(電動化)の頭文字をとって名付けられた
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