知らぬ間に生産性が上がる?「令和」の働き方 「IT活用したくてもできない」中小企業のリアル

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2020年4月、中小企業は本格的に働き方改革に取り組むことが求められるようになる。19年は大企業のみ施行対象だった働き方改革関連法が、中小企業にも拡大されるのだ。しかし、大企業ほどリソースがあるわけではない中小企業が変革を遂げるのは容易ではない。その打開策はどこにあるのだろうか。現場の悩みや課題を肌で知る、リコージャパンと大塚商会のトップが対談し、今後両社がどのようにタッグを組み、中小企業に新たな価値を提供していくのかについて語った。

IT活用のリアルと「オフィスの2020年問題」

坂主智弘(リコージャパン 代表取締役 社長執行役員 CEO、以下 坂主): 1936年に創業したリコーは全国に販売網を持っており、中小企業を中心に多くのオフィスに複合機やIT機器・サービスなどをお届けしてきました。全国の中小企業のお客様に生かされてきた企業といえます。

大塚裕司(大塚商会 代表取締役社長、以下 大塚):それは大塚商会も同じで、お客様の約8割が中小企業です。「お客様のお仕事を止めない」という考えの下、IT機器やオフィス用品を通じて、中小企業をバックアップしてきました。その立場で感じるのは、例えば「書類を電子化したい」と経営者が考えていても、ITの専任者がいないため、具体的にどうすればいいのかわからない企業がほとんどだということです。

リコージャパン
代表取締役 社長執行役員 CEO
坂主 智弘

坂主:人手不足の悩みも本当によく聞きます。人手がないために、事業の進展だけでなく継続が難しいと嘆く声もあるほどです。こうした中で、2020年4月に働き方改革が本格化するのは、非常に大きな変化になると考えています。人手不足なのに残業規制がかかるのは経営者の皆様にとって「二重苦になる」との捉え方もあるでしょう。ただ、弊社自体も働き方改革に取り組む中で、働き方の多様性の実現や生産性向上に加え、大きく2つの利点があると思っています。1つは採用。やはり働き方改革ができている会社が選ばれますから。そしてもう1つは、子育て世代の活躍を促すことができる点です。

大塚商会
代表取締役社長
大塚 裕司

大塚:おっしゃるとおり、働き方改革をチャンスと捉えるべきだと思います。生産性向上のカギを握るのは、やはりIT化。IT化によってあらゆることが可視化されます。残業時間をきちんと管理できるようになりますし、お客様の購買データを営業部門で活用することもできるようになる。より的確な営業活動によって、従来1割だった成約率が2割になれば、1人で2人分の仕事をしたのと同じことになるわけです。

坂主:IT化によって生産性を上げることができるのは間違いないですが、中小企業においてはIT活用の習熟度はあまり上がっているとはいえません。業務と業務の間に紙があり、その処理を人手で行っているのが現実です。

大塚:そうですね。例えば経理部門の伝票を営業部門が活用しているか、与信を含めて資産管理しているか、お客様の購買状況を遠隔でも確認できるような仕組みがあるか、というと多くの企業はNOでしょう。

坂主:近年、よく取り上げられるテレワークも同様です。全社員を対象にする会社はまだ多くはないと思いますが、相次ぐ自然災害などの際に業務への影響を軽減するためにも、早急に現実的な取り組みとして進めていくべきだと思います。

大塚:モバイルの端末を持っていても、スケジューラーとメールを見るくらいだという人が多いと思いますが、それでは意味がありません。社外にいるときも会社にいるときと同じように社内のドキュメントを活用できるようにしないと、テレワークは実現できないですよね。

坂主:大塚商会では以前から「オフィスの2020年問題」を指摘していますよね。

大塚:20年は、働き方改革関連法の施行だけではなく、次世代通信規格「5G」の商用サービスが本格的にスタートする年です。さらに、各大手メーカーが水銀灯、蛍光灯器具の生産を終了するなど、オフィスを取り巻く環境に大きな変化が起きる年ではないでしょうか。

業務をシームレスにつなぐ「EDWプラットフォーム」

中小企業にとって大きな転換点となることが予想される2020年。両社はどのように連携して新たな価値を創造し、中小企業を支援していくのか。その1つの回答としてリコージャパンがこの6月に発表したのが、「EMPOWERING DIGITAL WORKPLACESプラットフォーム」(以下EDWプラットフォーム)。リコーの複合機や電子黒板などの各種デバイスやパートナー各社のデバイス、さまざまなアプリケーションをオープンプラットフォーム上でつなぐことで、中小企業の課題解決を実現するソリューションをスピーディーに開発・提供できるという。
画像をクリックするとEDWパートナー会のページにジャンプします

坂主:中小企業の抱える課題は、紙や音声などのデジタル化されていないデータによって仕事の流れがシームレスにつながらず、人手を要してしまう、ということです。こうした業務を自動化・省力化させることができないか、と考えました。これまでは、機器やサービスを提供する会社が違えば、それを連携させるためのシステム開発にコストや工数がかかり、短期間で解決するのは困難でした。そこで、オープンなEDWプラットフォームを介してシームレスな業務フローを実現できるようにしました。

大塚:坂主さんからEDWプラットフォームの構想を聞いたとき、パソコン黎明期のことを思い出しました。検証機材の貸し出しなど、会社の枠を超えてさまざまな企業が助け合いながらパソコンを普及させていったのです。そこで、リコージャパンに「仲間づくりをしたらいかがですか」と助言しました。

坂主:お客様の業務プロセスを変革することは、一社単独でできるものではありません。そこでEDWプラットフォームは、API(アプリケーションソフトウェアとプログラムをつなぐための手順やデータ形式)やSDK(ソフトウェア開発キット)を公開するオープンなプラットフォームにしました。同時にパートナー会を発足させたのですが、すでに70社以上が参画しています。

大塚:仕組みこそ違いますが、中小企業のお客様にとってはRPAに近い感覚が得られると思います。例えば、複合機は大半のオフィスに入っていますが、「新たな活用法はもうないのかな」と感じる部分もありました。しかし、EDWプラットフォームによって、コピーやスキャン、プリントだけではない、業務の自動化に貢献する機器になるわけです。

「いつの間にか楽になった」が理想

EDWプラットフォームがもたらす生産性革新とは、具体的にどのような効果を生み出すのか。そして、中小企業の業務がどのように変わることが期待できるのだろうか。

大塚:EDWプラットフォームが優れているのは、リコーが用意したモジュールを自在に活用できるため、短納期・低コストでお客様のご要望どおりのソリューションを開発できる点です。見た目は複合機のままなので、お客様は気づかないかもしれないほどの静かな変化ですが、オフィス業務を大きく変える可能性があります。お客様は「あれ? なんだか便利になった」という感覚になるのではないでしょうか。

坂主:わかりやすい事例で言えば、「複合機に請求書を置いてスタートボタンを押すと、会計システムに自動的にデータが入るようになる」というものがあります。ほかにも、ある食品メーカーでは、小売店からファックスで届く山のような注文書の処理に苦心されていましたが、受発注システムと請求・支払いシステムを連携・自動化することで、業務量を圧倒的に減らすことができたといいます。

大塚:中小企業のIT化を阻む要因の1つが導入費用ですが、経済産業省のIT導入補助金を活用することで導入費用の一部が補助されるため、IT投資がしやすくなりました。働き方改革と併せてIT化へも踏み切ることで、事業をジャンプアップさせるきっかけになるのではないでしょうか。

坂主:多くの中小企業と接する中で、その独自性と専門性が地域の発展を支えていることを痛感しています。ですから、盤石な経営を支えるお手伝いをすることで地方創生が実現し、日本全体を元気にしていけると確信しています。そのためにも大塚商会様と共にEDWプラットフォームでITサポートの基盤を整えていきたいと思っています。