解のない時代に理工系人材が果たす役割とは? イノベーションを起こす鍵は「多様性」にあり

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サキコーポレーション ファウンダー
秋山 咲恵氏
PROFILE
京都大学法学部卒。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)勤務を経て、1994年、サキコーポレーション設立。サキコーポレーション ファウンダーのほかオリックス社外取締役、ソニー社外取締役、日本郵政社外取締役を務める
ベンチャー起業家としてサキコーポレーションを創業し、産業用自動検査ロボットメーカーとして世界市場でブランドを確立してきた秋山咲恵氏。現在は、ソニーなど大手企業数社の社外取締役も務めている。多彩なビジネス経験を積んだ秋山氏に、今の理工系人材を取り巻く環境はどう見えるのか。話を聞いた。

――現在の理工系人材の状況は過去と比較してどう見えますか。

秋山 デジタル化をはじめ社会が大きく変化していく中で、解が見つからない複雑な課題が増えました。イノベーションに関しても、ゼロから一を生み出すというよりも、既存の分野に新しいテクノロジーを持ち込むなど、一見関係ないもの同士を「かけ算」することで、新たな価値を生み出すようになったと思います。そうした中で、理工系人材に求められるものも、かつてとは大きく変わり、従来のフレームワークを変えていくことが必要になっているのではないでしょうか。

――従来のフレームワークを変えていくとは、具体的にどのようなことでしょうか?

秋山 「かけ算」のイノベーションを生み出していくためには、理工系人材に限らず、幅広い好奇心を持ち続ける必要があると思います。与えられた仕事だけではなく、専門分野外の世界にどれだけ興味を持てるか。最先端技術の情報はもはや日本語だけではなく、英語や中国語の世界に入っていかなければつかめません。日本で日本人とだけ仕事をするのではなく、より広い視野に立ち、世界の中に自分の身を置き直すことも必要になってくると思います。

――一方で企業側にも、理工系人材を生かしていく土壌をつくる必要がありますね。

秋山 はい。エンジニアの方たちは自分が作ったものが誰かの役に立ったと感じられることが大きなモチベーションになっているな、と感じることが多くあります。その意味で、従来のように1つのテーマを設定し深掘りしていくことも大事ですが、これからは社会にその技術をどう実装していくかを、企業全体として設計していくことがカギになるでしょう。エンジニアがエンドユーザーの現場から発想することや、エンジニアの技術や意見を、うまく伝えられるような技術営業も必要とされるでしょう。

――理工系人材を養成する大学教育でも変革は進んでいます。その点はいかがですか。

秋山 自分が取り組む研究テーマは何のために必要なのか。そこに立ち返れば、何かしらの社会課題の解決につながっていき、研究の出口がある。研究の意義や本当の価値、目標設定を見いだすためにも産学連携などを通した交流や会話は有用ですね。その意味で、学部を超えた交流や産学連携のスタイルが進んでいることは、とてもよいことだと感じます。

――そこにイノベーションを起こすカギもあるということですね。

秋山 はい。私は、今の複雑化した時代におけるイノベーションの母は「多様性」だと考えています。課題を解決し、世界を変革していくキーとなるのがテクノロジーであり、理工系人材なのです。これからの日本の未来を切り開くためにも、理工系人材には「多様性の海に飛び込め」と言いたいですね。その中で自分のポテンシャルを見いだし、新たなイノベーションを起こして、日本の未来を変革していってほしいです。