令和の東京が昭和より「夏が50日も長い」理由 「夏の終わり」は8月下旬?9月下旬?

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令和の時代を迎えた現在、夏の期間が昔よりも長くなった――。こう聞いて自身の子どもの頃を思い出し、確かに今は夏の始まりが早く、そして終わりは遅くなっていると共感する人も多いのではないだろうか。東京の夏はなぜ、これほどまでに長くなったのか。気象予報士の依田司氏と、その理由を探った。

「夏の始まり」「夏の終わり」と聞いて、あなたは具体的にいつをイメージするだろうか。このたび、空調専業メーカーのダイキンが20〜60代の東京生まれ・東京育ちの人にアンケート調査を実施した。結果、半数以上の人々が「6月中旬」には夏の始まりを感じていること、一方で夏の終わりを感じるのは「9月中旬」以降であることがわかった。

ダイキン調査「累計で半数以上の人が、夏の始まりまたは終わりと思うタイミング」より集計
依田 司
気象予報士。1週間のうち6日間連続で全国各地を駆け回り、生中継で天気予報を伝える

一方「子どもの頃に感じていた、夏の始まりと終わりはいつだったか」の問いには、半数以上の人々が夏の始まりは「6月下旬」以降、「8月下旬」には夏が終わっていたと回答。夏の始まりは平均で約20日早まり、夏の終わりは約30日遅くなっていると感じていた。夏は、体感レベルで50日も長くなっているのだ。

夏が長くなった―─。人々がそう感じるのも理にかなっていると指摘するのは、気象予報士の依田司氏だ。「人は、気温がだいたい25度を超える時間が長くなると、暑いと感じます。実際に現在の東京では、6月の上・中旬から最高気温が25度以上のいわゆる夏日が増え始め、9月の中・下旬になると減少します。実際の気温と人々の体感がリンクしているのは興味深いことですね」

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東京の夏は、暑くなり続けている ※通常、熱帯夜は夜間の最低気温が25度以上の日を指すが、ここでは日最低気温が25度以上の日を便宜的に熱帯夜と定義し集計

ではなぜ、東京の夏は長くなったのだろうか。「大きな理由は気温の上昇です。1880年から世界の平均気温は0.85度、日本では1898年から1.2度も上昇しています。とくに東京では温暖化に加えて都市化(ヒートアイランド現象)の影響もあり、1875年に観測を開始してから、8月の平均気温が約3度も高くなっているんです(※1)」(依田氏)。

実際、東京では夏日だけでなく、熱帯夜(夜間の最低気温が25度以上の日)や真夏日(最高気温が30度以上)、猛暑日(同35度以上)の日数が右肩上がりで増えている。熱帯夜が増えれば、朝の時点ですでに気温が高い状態で一日が始まってしまい、時間が経つにつれ、気温は階段を駆け上がるように上昇していく。

天気予報のデータより、体感温度はもっと高いはず

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「今や、天気予報で『最高気温35度』という数字を目にする日も珍しくありませんよね。ただ気象予報の基になる観測データは、芝生の上の高さ1.5メートルの位置に温度計を設置し、直射日光の当たらない環境で測ったもの。観測データが35度でも、日なたの路上なら直射日光に加えてアスファルトの照り返しがあり、体感温度はずっと高くなります。都市空間で私たちが体感する暑さは、データ上の温度以上なんですよ」(依田氏)

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東京の夏が暑い理由について、ダイキンの調査結果。「気温が高いから」よりも「湿度が高いから」の回答率が高かった

東京都内で生まれ育った依田氏。子どもの頃を思い返し、これほどの酷暑ではなかったはずと語る。「昔は、夕立が降ると空気がひんやりと涼しくなったのを覚えています。しかし、今は熱帯のスコールのように局地的に降る、いわゆるゲリラ豪雨が増えていますよね(※2)。すると、雨が上がっても湿度が高いため、空気が冷えるどころか余計に蒸し暑くなるんです」。

ゲリラ豪雨が増えたことも、平均気温の上昇と関係している。空気が水蒸気を持てる量(飽和水蒸気量)は、温度により異なるからだ。例えば25度の空気より30度の空気のほうが、飽和水蒸気量が約3割も多くなる。そのため湿度が同じでも、温度が高いほど積乱雲が発達しやすくなり、時にゲリラ豪雨をもたらすというわけだ。

「1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨や、80ミリ以上の猛烈な雨はいずれも、100年スパンで見ると増えている。気温だけでなく、雨の降り方も変化していることがわかります」(依田氏)

(※1)出典:IPCC第5次評価報告書 統合報告書、気象庁「日本の年平均気温偏差の経年変化(1898〜2018年)」、気象庁「東京 日平均気温の月平均値」 
 (※2)出典:気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」

コンクリートやアスファルトに覆われた地面の増大、ビル密集地の増加や緑地・水面の減少などさまざまな要素が絡み合い、平均気温が上昇している東京の夏。加えて湿度も上がり、生活環境は過酷になる一方だ。これは人々の健康に深刻な事態を引き起こす危険性もあるという。

「人間の体は、暑さを感じると汗をかいて体温調節します。しかし湿度が高いと汗が乾きませんから、体温をうまく下げられなくなる。単にジメジメして不快というだけでなく、熱中症も心配ですね」(依田氏)

高齢者の健康・安全にはエアコン使用が第一

年間1000人前後もの命を奪う熱中症。屋外だけでなく、屋内でも起こる可能性がある。とくに高齢者に多いのが、エアコンが自宅にあるにもかかわらず使用に消極的で、結果的に熱中症にかかり搬送されるケースだ。一体なぜなのか。

「昨年のような酷暑でもエアコンを使わない高齢者の方が多くいます。疑問に思って調べたところ、3つの理由がありました。まずは『冷たい風が体に当たるのが嫌』というもの。しかし今のエアコンには、体に直接風が当たらないようにする機能があります。こうした機能を知らなかったり、使うのを面倒に感じたりする方が多いようです。

2つ目は『電気代が高いと思われている』こと。しかし、最近のエアコンは省エネ性能も高く、昔に比べると電気代はかかりません。そして3つ目は『これまで使わないで済んだから』という理由です。昨今の大きな気候変動の中では、過去の経験はさほど参考にならないと思います」(依田氏)

高齢になるにつれ、暑さ、寒さを感知する皮膚の温度センサーが鈍化する。すると、暑さを感じにくくなって体温調整が遅れ、体の内部に熱がたまりやすくなってしまう。このため、激しいスポーツなどをしていなくても、熱中症になりやすくなるというわけだ。

「私も高齢者の方々には、講演などで『エアコンがご自宅にあるなら、ぜひ使って暑さ対策を』と伝えています。夏休みに帰省したときに、お子さんやお孫さんからも『命を守るために!』とエアコンの使用を勧めていただければと思います」(依田氏)

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ダイキンの調査では、東京の夏はこれからも過酷になっていくだろうと見る回答が多かった

今年に限らず、東京の夏の暑さは今後ますます厳しくなっていくだろう。ダイキンの同調査でも、最近の東京の夏の暑さについて「命の危険を感じる暑さ」「耐えられないくらいの暑さ」と感じている人が合計65%以上にも上った。

一方で依田氏は「しかし、昔を知っている私たちと比べ、若い世代はあまり悲観していないかもしれません。生まれたときから『夏=過酷な暑さ』という環境で育っていますし、テクノロジーが解決してくれるという希望もあるようです。実際、スマホをはじめ、数十年前には想像もできなかったものが人々の生活を豊かにしています」と語る。

昔より期間が長くなったうえ、今後さらに厳しさを増していくとみられる東京の夏。健康面でとくに気をつけたいのが、人命を脅かす「熱中症」だ。いわゆる炎天下や激しい運動時にかかるイメージが強いが、熱中症は住居での発生も多い。

屋内外ともに湿度が高い日には、とくに熱中症への注意が必要だ。温度だけでなく湿度もチェックして、湿度が高い日にはエアコンの使用を心がけるようにしてほしいと、空調専業メーカー・ダイキンは啓蒙を続けている。

熱中症に気をつけよう! 温度と湿度の関係についてはこちら

エアコンで気温と湿度をコントロールすることはもちろんだが、日傘を差したり帽子をかぶったりとさまざまなツールを取り入れて、この過酷な夏を安全かつ健康に乗り切っていきたい。

ダイキンの調査に見る、東京の空気感
生活に必要不可欠でありながら、日頃意識されにくい空気に興味と関心を持ってもらうことを目的として、空調専業メーカー・ダイキンでは、2002年から17年間にわたって「現代人の空気感調査」を実施。その時々の時流に即したテーマを取り上げながら、現代人の空気に対する意識や課題を浮き彫りにしている。
今回の調査結果の詳細は、こちらに掲載されている。
また25回目となる今回の調査以外にも、同社は下記のように、東京の空気に対する人々の意識について継続的に調査を行っている。
・第20回 外国人に聞いた「東京の夏の暑さ」に関する意識調査(2014年7月)
・第21回 外国人に聞いた「東京の夏のビジネスシーン」に関する意識調査(2015年7月)
・第24回 東京在住の外国人150人に聞いた「東京の夏の暑さとスポーツ」に関する意識調査(2018年10月)
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