「収益認識基準」の影響と対策の方向性 シリーズ モダンファイナンス 第二弾

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企業会計基準委員会(ASBJ)が2018年3月に公表した「収益認識に関する会計基準」と同適用指針が、21年4月1日以降に開始する事業年度期首から適用される。同基準はすでに早期適用が可能になっているほか、国際的には収益認識基準であるIFRS15号も18年から適用されていて企業の関心は高まっている。東京・港区で開かれた「シリーズ モダンファイナンス 第二弾 『IFRS』から学ぶ~『収益認識基準』が業務・システムに与える影響と対策の方向性及び『リース会計基準』の制定」では、この新会計基準への対応策に焦点を当て、その動向や影響、対応に必要な業務・システムの変更、IFRSの収益認識基準およびリース会計基準に対応している企業の取り組みなどが紹介された。
共催:日本オラクル 東洋経済新報社

基調講演(1)
収益認識会計基準の開示とリース会計基準制定の動向

アカウンティング アドバイザリー
ディレクター/公認会計士
長谷川 直彦氏

IFRS導入支援などを手がけるアカウンティング アドバイザリーの長谷川直彦氏は、収益認識会計基準や現在検討が進められているリース会計基準の注記項目について、IFRSにおけるそれぞれの会計基準の注記項目に沿って説明した。

収益認識会計基準の注記項目は、IFRSにおいて要求されている注記項目がほぼすべて取り入れられようとしている。契約資産や契約負債の変動の注記や残存履行義務の開示など、それぞれのデータの変動を適切に管理しなければ注記項目の集計ができないものは作成の負荷が高い。

また、収益金額を製品ラインや地理的区分などに分けて開示する「収益の分解」は、セグメント情報との関連を示す必要があるとともに、投資家への説明資料などほかの開示資料との整合性が要求されるため、慎重な対応が必要になる。

リース会計基準では、短期や少額の場合を除いて、従来は費用処理されてきたオペレーティング・リースも含むすべてのリース取引が、ファイナンス・リース同様に資産計上される方向で検討が進められている。IFRS適用企業では、事業用資産などにオペレーティング・リースを使っている小売業界などへの影響が大きいので、自社が利用しているオペレーティング・リースについて今から確認しておくべきと注意を促した。また、IFRSでは、リースについては、詳細な注記が要請されており、日本基準においてはまだ注記項目の検討までされていないが、IFRSの注記項目を参考にしつつ、新たなリース会計基準の影響の検討が必要であろう。

基調講演(2)
収益認識基準が業務・システムに与える影響と対応の方向性
~影響の大きいビジネス取引をピックアップ~

アカウンティング アドバイザリー
マネージングディレクター/公認会計士
一般社団法人日本CFO協会
主任研究委員
櫻田 修一氏

アカウンティング アドバイザリーの櫻田修一氏は「収益認識基準は、実は従来の日本基準と同じ収益費用アプローチ」と説明、「履行義務の充足」という言葉は会計になじみがない方にとっては難解だが、顧客視点で考えた場合、複数価値を含む契約なら価値ごとに契約を分割、単一価値が複数契約にまたがるなら契約を結合。複数の契約にまたがる値引きは、それぞれの価値に配分すると考えると理解しやすく「顧客の得る価値が明確になる」と評価した。

同時に実際に基準を適用する場合は、基準、適用指針、設例を読み込み正しく理解する必要があるとも強調、取引単位や契約を見直すことにより契約の分割・結合をなくす、請求と履行義務充足のタイミングを一致させるなどの対応、サブスクリプションモデルへの移行などを検討する機会にもなると言及した。一方で「実務的には新基準の影響がないケースもある」として、代替的取り扱いの可否を見極めるよう促した。

経営管理への影響については、各履行義務に収益を配分したり、収益計上のタイミングが変わったりしても、取引サイクル全体の利益額は変わらないと説明。ただし、消費税が発生するタイミングと会計上の収益認識のタイミングが一致しない場合があるため、請求などの対顧客および消費税の管理と、収益管理を二重化する必要が出てくるケースに留意すべきと述べた。

自社ビジネスに新基準を当てはめ、業務システムを変える必要があるかを検討しなければならないが、影響範囲や変更する処理内容、該当する取引件数などを勘案し、基幹システムの変更が必要なのか、月次決算時にマニュアル(表計算ソフト)で対応が可能なのか検討しなければならない。また「マニュアルで処理プロセスを固めてから、必要があればシステムを変えるという選択もあると思う」と説明した。

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