あなたのその不調、実は「腸漏れ」が原因かも 「短鎖脂肪酸」が不調を吹き飛ばすカギに

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体のだるさ、集中力の低下、胸やけ、下痢……。誰にも起こりうるこうした心身の不調は、実は体のあるトラブルが原因となっている可能性がある。それが、近年研究者が注目している「腸漏れ」だ。はたして腸漏れとはどのようなものなのか、そして、その解消法となる「短鎖脂肪酸」とは。

腸漏れに苦しんだテニス選手も

「腸漏れ」という言葉は、まだあまり知られていないが、決してひとごととして片付けられない。長年、腸の研究に従事する医学博士・東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎氏はこう話す。

「腸漏れとは、腸内の粘膜に隙間ができ、そこから毒素や細菌、未消化の食べ物などが血液中に漏れ出る現象です。心身へのストレスやアレルギー反応などから、腸が不調に陥ることで起こると考えられています。血管に入るべきではないものが入り込むだけに、全身の不調や病気の原因となり、日常で感じる倦怠感から慢性疾患、難病に至るまで、多くの疾患につながるともいわれています」

東京医科歯科大学
医学博士
藤田紘一郎名誉教授

腸漏れに注目が集まった1つのきっかけが、とあるテニス選手のケースだ。その選手は長年、原因不明の体調不良に苦しみ、成績が伸び悩んだ時期があった。だが、医師の診断により、小麦に含まれるグルテンに対し強い不耐症があることがわかり、小麦を抜くグルテンフリーの食生活に切り替えたところ、みるみる体調が改善したというのだ。

この選手の場合は、グルテン不耐症によって腸漏れが起きていたとされるが、ひとたび体の中で腸漏れが起きてしまうと不調が続くといういい例だろう。

未消化の食べ物、体内で発生した毒素や腐敗物、微生物、腸内細菌……、それらが血液に取り込まれ体のあちこちに運ばれると、体の免疫システムが反応し、攻撃を始める。これがアレルギー症状や、体の各所での炎症を引き起こし、その結果、下痢、疲労感、免疫力低下、動脈硬化、自己免疫疾患など、さまざまな症状として現れてしまう。

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体の各所の炎症を鎮める”スーパーヒーロー”

では、そんな腸漏れを防ぐには、どうすればいいのか。

「実は『短鎖脂肪酸』という”スーパーヒーロー”とも言うべき物質があるんです。この物質をきちんと体内で増やせば、腸漏れの予防はもちろん、隙間ができてしまった腸を正常な状態に戻すことも可能だと考えられています」(藤田氏)

以前にお伝えしたとおり、短鎖脂肪酸とは、酢酸、酪酸、プロピオン酸といった有機脂肪酸の総称のこと。酢酸は健康効果の高い”お酢の仲間”だが、お酢はいくら飲んでも胃で吸収されてしまう。一方、この短鎖脂肪酸は、大腸に数十兆個がすむといわれる「腸内細菌」によって腸内で生成され、腸内で働くと考えられている。

藤田氏は自身の腸を実験台として使って、さまざまな細菌や寄生虫を研究してきた

「短鎖脂肪酸には、腸内環境を良化し、腸粘膜のバリア機能を高める働きがあります。腸内細菌が多くの短鎖脂肪酸を生み出す状況をつくれば、腸粘膜のバリア機能がどんどん高まり、腸漏れを防いだり、腸漏れでできた隙間をふさいだりすることができます」(藤田氏)

加えて短鎖脂肪酸は、腸粘膜から血液中に取り込まれ、体の各所で起こる炎症を抑制する。これにより、先に挙げた腸漏れがもとで起こるさまざまな不調や病気が改善されると考えられるのだ。それ以外にも短鎖脂肪酸には、脂肪細胞や交感神経に働きかけて肥満を抑える作用や、インスリンの分泌を促し糖尿病を予防・改善する作用があることもさまざまな研究者によって発表されている。

「今や短鎖脂肪酸は、世界中の研究者から注目を集めています。『もしかすると、不調や病気に悩む多くの人たちを救う、夢の万能薬なのではないか』という声も上がっているほどです」(藤田氏)

はたして、そんな短鎖脂肪酸を体内でつくり出すには、どうすればいいのか。それには、短鎖脂肪酸をつくり出す腸内細菌の一種である「ビフィズス菌」をとることと、そのビフィズス菌が「喜ぶ」食べ物をとることが重要だという。

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ビフィズス菌が好む食物繊維が万病を遠ざけるカギ

「ビフィズス菌が喜ぶ食べ物の筆頭が、食物繊維です。中でも、短鎖脂肪酸を生み出すもととなる『水溶性食物繊維』をたっぷりとることが大切になります。水溶性食物繊維をとることで、短鎖脂肪酸が多く産生され、腸内環境が良化される。それによりビフィズス菌をはじめとする腸内細菌の数自体も増え、より多くの短鎖脂肪酸が産生されるようになる。こうした好循環のサイクルをつくることが、心身を健康に保つための大きなポイントになります」(藤田氏)

水溶性食物繊維を含む代表的な食材としては、キノコ類(シイタケ、エノキ、ナメコ、シメジ、エリンギなど)、野菜類(オクラ、山芋、ゴボウ、キャベツ、モロヘイヤなど)、豆類(納豆、インゲン豆など)、果実類(キウイ、アボカド、ユズ、プルーン、イチジクなど)が挙げられる。

以上のことを合わせれば、ビフィズス菌の入ったヨーグルトとキウイなどの果物を一緒に食べるのは、腸にとって理にかなった食べ方といえる。

「古代ギリシャの医師で”西洋医学の父”とも呼ばれるヒポクラテスが『すべての病気は腸から始まる』という言葉を残しているとおり、『腸の不調』がさまざまな病気の前段階となっていることが近年明らかになってきています」(藤田氏)

食生活や生活環境によって、大腸は「劣化」する。それは、最近の研究から言われていることだ。だからこそ、日々の食べ物を通して腸内環境を整えることが万病を遠ざける最大のカギとなるのだ。

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