海運業界の環境対策はどこまで進んでいるのか 新たな環境規制に対応する3つの選択肢
内藤 ようこそ、今日はよろしくお願いします。まずは、ミス日本「海の日」の受賞、おめでとうございます。
髙橋 どうもありがとうございます。本日は、海運業界が取り組む環境対策についてお話を伺えればと思います。
内藤 海運業界全体で環境保全への取り組みに力を入れており、その取り組みを広く知っていただくために、昨年、「海運業界の挑戦~地球・海洋環境の保全に向けて~」というパンフレットを作成しました。ところで、髙橋さんは日本の貿易貨物量は、重量ベースで何パーセントが海運で輸送されていると思いますか?
髙橋 そうですね……、日本は島国ですし、飛行機でも貨物を運んでいるので8割くらいでしょうか?
内藤 重量ベースでいえば99.6%にもなり、貨物のほとんどが船で運ばれています。日本船主協会では「暮らしを支える日本の海運」というPRビデオを作成しているのですが、その中では、海運がなくなったら、コンビニエンスストアがほぼ空になるという衝撃的なお話も含まれています。
年間で延べ10万隻の船舶が、日本へ入港
髙橋 生活必需品がなくなってしまうということでしょうか。
内藤 必需品だけではなく、石油、石炭、LNG、鉄鉱石なども含め、ほとんどが海運で運ばれています。海運がなければ、生活を営む物資そのものがなくなってしまうともいえます。ですが、残念ながら、社会の皆様にはまだそのように認識していただけていないのが現状です。日本の外航商船隊は2500隻程度ですが、これに海外の海運会社の船舶も入れると年間で延べ10万隻の船舶が、日本へ入港しています。
髙橋 とても多いですね。
内藤 これだけの船が運航されていますので、当然、環境のことも考えていかなければなりません。海洋汚染、大気汚染、地球温暖化にどのように対処するかなど課題は山積みで、海運だけではなく、すべての業種、社会を巻き込んだ話です。
例えば、原油を運んでいるタンカーが事故を起こしたとき、環境を著しく破壊するということがあります。1989年にアラスカで起きたエクソン・バルディーズ号原油流出事故。エクソンの船が座礁し、大量の油が海へ流出してしまい、アラスカの自然環境を破壊してしまったことがあります。油まみれの海鳥の映像を見かけたことはあるかと思いますが、海運業界としてこのような事故を反省し、その対策としてダブルハルといわれる船体の二重構造化が採択されました。仮に、外板に穴が開いても、内側の隔壁で流出を防ぐ構造です。これを世界的に適用するルールに変えたのです。これにより、油濁事故が激減しました。これは環境対策の1つの成功例だと思います。