失敗を繰り返さないための注目手法とは? 「ポストモーテム」の導入が進む理由を解説

拡大
縮小
【ぽすともーてむ】
「ポストモーテム(post mortem)」は直訳すると「事後検証」である。プロジェクトマネジメントの世界ではプロジェクト終了後にプロジェクトのフェーズを振り返ることを意味する。プロジェクトの教訓を残すことで、失敗や不祥事の再発防止につながるとして、欧米企業を中心に導入が進んでいる。

昨今、企業での不祥事が多々発生している。そのたびに企業も再発防止に向けた取り組みを行うが、それにもかかわらず、同じ企業で同じような不祥事が起こることも珍しくない。さまざまなプロジェクト業務についても同様である。企業の持続的な成長のためには、同じ失敗を繰り返さないことが大切だが、現実には失敗が繰り返されている。

なぜか。日本企業の場合、再発や失敗防止の取り組みが精神的なアプローチになりがちなことがある。不祥事を起こした犯人捜し、ミスを起こした個人などへの責任追及に終わってしまうのである。

そうではなく、不祥事や失敗の教訓を生かし、二度と起こさないようにする仕組みを考え実践することが大切である。そこで最近になって注目されているのが「ポストモーテム(post mortem)」という手法だ。欧米の先進的な企業を中心に導入が進んでいる概念で、日本でも最近、導入を進める企業が増えている。

「ポストモーテム」の大きな狙いは、失敗事例などの教訓を残し、失敗を繰り返さないことにある。いわば、教訓という財産を「組織知(組織全体への知識の広がり)」として、未来に活用していくための取り組みである。

「ポストモーテム」を実践するにあたって大切なのは、そのプロセスを属人的にせず、システムとして構築することだ。具体的には、基本プロセスは教訓の「収集」「分析」「展開」の3つのプロセスから構成される。「収集」においては、あらかじめ決めたフォームに基づいて集める。収集された教訓は思いつきではなく、確立された手法、切り口で「分析」する。さらに「展開」においては、教訓の緊急度や重要度を基にシステム変更や修正を行う。

このように書くと、一見複雑なように感じるかもしれないが、システムさえ構築できれば、運用はむしろシンプルだ。部署間やグループ会社などへの横展開も容易だろう。不祥事や失敗を防ぎ、競争力を高めたいと考える企業にとって、身に付けておくべきマネジメント手法の1つといえる。

関連ページ
アイシンク