「自動運転」実現で社会に与える影響とは? 新たなビジネスチャンスは明治大学発の情報

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時代を問わず、激変期に存在感を発揮するデキる人は「最先端の情報」をつかんでいる。技術革新が急速に進む現在、その価値はひときわ高まっているといえるだろう。では、「最先端の情報」を的確に入手する方法とは何か。ヒントは「産官学」連携の動きにある。車の自動運転、IoT、AIなどこれまでにない新たな技術が生まれているが、本質を見極めるにはテクノロジーのみならず社会情勢や法整備など、あらゆる方面の情報を組み合わせて読み解く必要がある。そして、まだ世界で本格的な実用化がされていないからこそ、的確な最新情報をいち早くつかむことで、大きなビジネスチャンスにつなげることも可能といえる。

「完全自動運転」は技術的には実現可能

社会や経済に大きな影響を与えるといえる「自動運転」について、明治大学自動運転社会総合研究所所長の中山幸二教授と、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の自動走行システム推進委員会構成員でもある国際自動車ジャーナリストの清水和夫氏に、技術の現状と今後の展望について話を聞いた。

社会や経済を根本から変えてしまう可能性のある自動運転。そもそも、自動運転が必要な理由は何なのか。清水氏は、3つの大義があると話す。

国際自動車ジャーナリスト 清水和夫氏

「まず『交通事故のない社会』になることが期待できます。交通事故の原因の9割以上はヒューマンエラーといわれていますが、カメラやセンサーはよそ見をしませんし、スピードの出しすぎやペダルの踏み間違えなどもなくなります。2つ目は、2~3兆円の経済損失があるといわれる『渋滞』を減らすことができます。とくに、トンネルの入口や上り坂の勾配などで起こるサグ渋滞は、自動運転化で解消するといわれています。3つ目は、高齢者や妊婦など移動制約者と呼ばれる移動困難な人を含め、どんな人でも『自由に移動できる』社会を実現できます」

実は、交通事故による死亡者は全世界で年間約100万人も出ているのだ。日本では1970年の年間16,795人の死亡者をピークに、いろいろなルールを設けるなど変革を行った結果、2018年には1948年の統計開始以来過去最少の3532人まで減少した。それでもまだ交通事故のある社会で、自動運転が「交通事故のない社会」をもたらす理由について、中山教授はこう補足する。

「人間の認知能力や行動能力には差があります。誰もがプロドライバーのように優れた能力を持っているわけではありません。とくに最近は、高齢者が加害者になるケースも増えてきていますが、機械化すれば認知能力や劣ってしまった運転能力をカバーできます」

では、自動運転の実用化に向けてクリアしなければならない課題は何か。清水氏は「技術」「法律」「社会」の3つのハードルがあると指摘する。

「運転の『技術』は、『認知』『判断』『操作』の3つのサイクルを回していく必要があります。F1ドライバーは、このサイクルを1秒間に20回くらい回しています。それをセンサーやカメラ、自動ブレーキなどでどこまでカバーできるかですが、結論から申し上げれば技術的には完全自動運転が可能なレベルに到達しています。ただし、センサーなどの価格がまだまだ高いので、実用化レベルになるにはあと数年かかるでしょう」

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日本は自動運転で世界をリードする存在に?

「技術」に関しては価格面の問題が残っているものの、すでに各メーカーはマーケティングを進めており、実用化まで時間の問題とも受け取れる。では「法律」のハードルはどうなのか。中山教授は、今年が日本にとって特徴的な年になる可能性が高いという。

明治大学 自動運転社会総合研究所所長 兼 専門職大学院法務研究科 中山幸二教授

「自動運転を許容する道路交通法の改正法案が通常国会に今年の4月に提出される予定です。これは世界的に見ても画期的なことです」

なぜ画期的なのか。そこには、自動車をめぐる法律や規制が複数官庁の管轄下にあることが関係している。日本の場合、自動車の保安基準は国土交通省が決めており、運転免許制度などドライバーの基準が定められている道路交通法は警察庁の管轄だ。つまり、自動運転に関する法整備を行うには、この2つの規制官庁が協力し合わなければならない。前例がないことへの取り組みに腰が重いというのが、日本の行政につきまとうイメージだが、政府や国土交通省はかなり早くから積極的だったと清水氏が明かす。

「これまで、日本は衝突安全基準でも自動車排出ガス規制でも、ヨーロッパが決めたルールのフォロワーであり続けました。自動車関連のルール作りで日本がリードしたことはないのです。でも、自動運転はまったく新しい分野ですから、積極的に取り組んで議長国になろうという気持ちを国土交通省は持っていました」

その国土交通省の熱意と、2020年の国際的な祭典で自動運転車を披露したいとの政府の意向が、警察庁も動かしたというわけだ。さらに清水氏は、自動運転を推進できる環境が日本に整っていることも、要因の1つに挙げる。

「日本には自動車メーカーが10社もあって、大学での研究体制も確立されており、成熟した議論を展開できる環境にあります。今までは“単品”でのノウハウにとどまっていましたが、内閣府や各省が分野を超えて科学技術イノベーションを目指すSIPで横展開してオールジャパンで取り組んでいます」

その証ともいえるのが、2018年9月に国土交通省が策定した「自動運転車の安全技術ガイドライン」。中山教授は「かなり厳しい基準が示されている」と評価し、今後世界基準として認められる可能性は十分にあるという。どうしても自動運転というと、アメリカが先進国と思われがちだが、アメリカの免許制度は各州によって違うため、先進的な州もあれば、保守的な州もあり、一概に進んでいるとは言いにくいという。遅れていると思われがちだった日本の自動運転だが、実は世界をリードしつつあるのだ。

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文理融合の取り組みで産官学をつなぐ!

「技術」「法律」と2つのハードルをクリアしつつある日本の自動運転。残る「社会」に関してはどうか。中山教授は、「社会」で解決すべき課題について次のように説明する。

「国内は人口減少社会に突入していますが、とくに地方の市町村や都市部のニュータウンでは著しく過疎化が進んでいます。高齢化も急速に進んでいますので、お年寄りの“足”が必要となっているのです。国際競争ではハイレベルな技術を追求する必要がありますが、国内ではたとえ低レベルでも、早急にモビリティを確保しなければならない状況です」

過疎化した地域にモビリティを提供する。まさに、「自由に移動できる」社会を実現するために、自動運転が必要だということだ。さらに、人手不足の問題もある。東京でさえタクシー会社は運転手不足に悩まされ、全体の車のうち25%が稼働できていない。もはや、社会はドライバーのいない車を必要としているといえる。中山教授が所長を務める明治大学の自動運転社会総合研究所では、そうした現状も踏まえ、長崎・対馬や沖縄・久米島、香川・小豆島といった離島などでの「域学連携」に力を注いでいる。

「離島と一口に言っても、その課題は千差万別です。久米島は比較的土地が平らですが、対馬は坂も多く道も曲がりくねっています。統廃合された学校や医療機関、介護施設への送迎といった地域のニーズを踏まえ、『まちづくり』として取り組む必要があります」

そのため、自動運転社会総合研究所は「技術」「法律」「保険」「地方創生」という文理を融合させた4本柱を立てている。文系・理系合わせて10学部ある明治大学ならではの取り組みだが、それに加えて群馬大学や香川大学など他大学とも積極的に連携。最先端の「知」を結集し、社会課題の解決策を探っている。今までバラバラに研究していた大学をつなげる「ハブ」として機能させているだけでなく、オープンラボとしての役割も担っているため、従来の大学の研究とは一味異なる成果が期待できる。清水氏は、この取り組みを「自動車メーカーや自治体では困難」と評価する。

「地域の課題を解決するには、全国の状況をつぶさに見て、共通するものを見いだしさまざまな方法で検証していく必要があります。中山先生の取り組みは、そのために必要なデータを採集できますし、それを基に新たな事業や多種多様なベンチャー企業が参入できる可能性も生まれるでしょう」

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明治大学では、これらの最新の取り組みを社会人向け情報サイト「Meiji.net」で発信。「Meiji.net」は情報の信頼性で高い評価を受けており、日本BtoB広告賞も受賞。自動運転に関する情報だけでなく、社会のあらゆるテーマと向き合っている研究者による最先端の視点や知見を生かした記事が多数アップされており、最先端の情報をわかりやすくまとめているため、多くの中学・高校の授業でも活用されている。

「記事をご覧になった他大学の研究者はもちろん、さまざまな事業者からもアプローチをいただいています。また、中学生や高校生から話を聞きたいとオファーを受けることもあり、多彩な可能性を生み出すプラットフォームとして機能している手応えも感じています」(中山教授)

「Meiji.net」には、すでに進行しているプロジェクトを含め、今後の産学・地域連携のヒントになる情報も多数発信されている。例えば、情報コミュニケーション学部の大黒岳彦教授の『「フェイクニュース」は「嘘ニュース」のことではない』や、政治経済学部の永野仁教授の『働く高齢者の満足度を上げるための秘策あり』などがある。価値ある「最先端の情報」を求め、ビジネスチャンスを探しているビジネスパーソンならブックマークするべきサイトではないだろうか。

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