「人が集まり賑わうまち」は何が違うのか 発想の転換が迫られている企業誘致

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―― まちを変えていくためには何が必要でしょうか。

亀和田 人口が減少する中、コンパクト化、スリム化を志向し、公共交通の再編によるまちづくりを推進するとともに、前述したように住民が地域に愛着と誇りを持ち、地域資源を活用、発信していくことが欠かせません。

また、根本的な問題として、若い世代の流出を抑制しなければなりません。若い世代が結婚し、家族を形成していくには子育てに優しいまちでなければいけません。さらに、地域外からの新しい人や価値観を受け入れたり、多様な働き方に対応できる場を設けたりすることも重要です。

―― 企業誘致も、これまでとは発想を転換する必要がありそうですね。

亀和田 近年は、コールセンターなど労働集約型産業において、都市部に比べて人件費やオフィス賃料が低く抑えられる、地方や郊外に拠点を構えるケースが増えています。また、IT企業の地方や郊外への移転も盛んに行われています。これまで地方には、ITに親和性のある若者たちの受け皿となるような仕事はあまりなく、大都市に出ていくしかありませんでした。ですが、近くに仕事があれば地元で就職したいという人たちは一定数います。企業側からすれば、インターネット環境が整っていれば、地方や郊外に拠点を置くことによって不足するIT人材の確保、しかも、その地域の優秀な人材を確保できるとなれば、非常に大きなメリットでしょう。

―― これからは地方や郊外のまちの競争が激化しそうですね。

亀和田 少子高齢化や人口減少が進めば、税収は減ります。つまり、行政に頼り切ったまちづくりに限界が訪れ始めているということです。しかし、行政だけではなく、そこに住む人たちや企業が、地域のポテンシャルや資源を見極め、ビジョンを描いたうえで、戦略的かつ時代に合ったまちづくりに取り組むことができれば、興味や関心を持つ人が増え、企業誘致の面でも魅力あるまちになっていくはずです。人や企業が集まって税収を創出し、いい循環が生まれるというわけです。そこにどれだけ早く気づき、行動に移すことができるかどうかが、「人が集まるまち」「賑わいのあるまち」とそうでないまちとの差を生むのです。

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