難病とたたかうアプタマー創薬とは何か? 薬のタネをつくる大学発のバイオベンチャー

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リボミック代表取締役社長 中村義一

治療法のない難病に対するアプタマー医薬をいくつも設計し患者さんに届ける、これは当社が構想する将来の夢です。

当社はアプタマー医薬の研究開発を手がける東京大学発のバイオベンチャーです。15年間の研究の結果、自社で作った医薬候補品の1つが、昨年、初めて人に投与される段階に至り、夢の実現に一歩踏み出しました。

アプタマーは、核酸を素材とした核酸医薬の1つで、疾患の原因となっている分子(標的分子)に結合してその働きを阻害することで疾患を治療します。当社は、アプタマーを作製し(薬のタネを作り)、その効果を実証して製薬会社にライセンスするビジネスを行っています。アプタマーは、核酸のプールを準備し、魚釣りのように標的分子を餌にして、強く結合する核酸をピックアップし、それにいろいろな加工を施すことで作られます。

自社で作製した一押しのアプタマーがRBM-007です。RBM-007は高齢者の失明の原因となる加齢黄斑変性症の画期的な治療薬となる可能性を秘め、昨年より米国で治験を実施中です。本疾患の既存薬は約1兆円の市場を形成していますが、効果が十分でない患者さんが相当数いるため、新薬の開発が切望されています。

RBM-007は既存薬にはない作用を動物試験で実証しており、カリフォルニア大学のビスクル教授など米国の著名な眼科医が本薬剤の作用に着目し、治験に参画しています。第I/IIa相臨床試験と呼ばれる安全性確認試験はこれまでに2/3以上が終了し、今夏以降、薬効確認等を目的とした第IIb相臨床試験に入る予定です。試験の経過は随時、お知らせします。

なお当社のアプタマー作製技術は疾患に限定されない汎用性をもつため、多彩な医薬品開発のみならず、化粧品原料の開発(三菱商事子会社との共同研究)、抗体医薬品の製造における精製工程への適用、AIを用いた創薬(公的助成金に採択)なども手がけ、技術価値の最大化を目指しています。

核酸医薬は、ここ数年新薬の承認が相次ぎ、大きな飛躍の時期を迎えています。核酸医薬の1つの利点は化学合成で製造できることです。そのためAIを活用した改変や設計も可能であり、大量合成による合成価格(薬の原価)の低減も期待されています。創薬はうまくいくことばかりではありませんが、核酸医薬の1つであるアプタマー医薬の将来性は非常に大きく、同分野のパイオニアとして業界を牽引していきたいと考えています。