「花粉症」悪化させる物質が都会に多い理由 スギ花粉飛散量ピークは3月、未発症でも注意

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優しい風が頬をなで、木々が芽吹き、花が咲く。春が近づくと、憂鬱になる人も多いのではないか。理由は言うまでもなく、春風に乗ってやってくる「花粉」。東京都のスギ花粉症推定有病率は48.8%と、まさに都民の約半数が花粉症を発症している(東京都『花粉症患者実態調査報告書』2017年12月発表)。毎年日本中を悩ませている花粉、実は「都会ほど悪質」という事実をご存じだろうか。


 関東では2月下旬から3月以降スギ花粉の飛散量が多くなる。いよいよ本格的な花粉シーズン到来といったところだが、実は自然豊かな場所に比べ、都会の花粉はより「タチが悪い」という。

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その理由は、排気ガス(ディーゼル排気粒子)やPM2.5といった「アジュバント物質」と呼ばれるものの存在にある。地面の大半がコンクリートやアスファルトに覆われた都会では、花粉が土などに吸収されず、風を受けて何度も空中に舞い上がる。そのため「アジュバント物質」が花粉に付着しやすく、わずらわしい花粉症の症状をさらに悪化させている。

ここで、花粉症のメカニズムについて説明しよう。人間の体は、侵入してきた花粉を異物とみなすと、それに対抗するため「抗体」を作る。この抗体に再び花粉が入ると、くしゃみや鼻づまりといったアレルギー症状を引き起こすのだ。この反応が繰り返されて抗体が一定量蓄積されると、抵抗力とのバランスを崩して花粉症を発症するといわれている。

花粉症が発症するしくみ

さらに、花粉とアジュバント物質が一緒に体内に取り込まれると、抗体の生成が促進される。そのためアレルギー症状が悪化したり、未発症の人でも花粉症を発症する可能性があるのだ。アジュバント物質が空気中に多く浮遊している都会の花粉ほど「タチが悪い」理由がここにある。

花粉症対策に有効「ストリーマ技術」って?

ダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター
田中利夫

老若男女問わず多くの人の生活課題となっている花粉症。簡単にできる花粉症防止の工夫としては、帰宅時に玄関前で衣服や髪についた花粉を払って室内への侵入を防ぐこと、こまめに家の掃除をして花粉を除去することなどが挙げられる。しかし、気をつけていても花粉を完全にシャットアウトすることはなかなか難しい。そこで、花粉症に悩む人々に貢献するべく、空調専業メーカー・ダイキンが開発した技術が「ストリーマ技術」だ。これはストリーマ放電によって有害物質を酸化分解する画期的な空気浄化技術である。

開発を担当したダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンターの田中利夫氏は、ストリーマ技術についてこう説明する。

「プラズマ放電の一種である”ストリーマ”は、広範囲にプラズマ放電の空間を作り出すことが特長です。たとえば雷が落ちる時、通常はどこか1カ所に落ちますよね。ストリーマ放電の場合、より広い地域に雷が落ちるようなイメージです」(田中氏)

ストリーマ技術では、いわば3次元的に、そして広範囲にプラズマ放電の空間を作り出す

「ストリーマ放電の酸化分解力は、一般的なプラズマ放電のなんと1000倍ともいわれ、非常に大きなパワーを持っています。実際ストリーマ技術によって、スギ花粉のアレルゲン活性を99.6%も抑えられることが実証されています※。」と、田中氏はその斬新さを語る。

※2004年、ダイキンと和歌山県立医科大学が共同で実証

ストリーマ技術が脱臭や除菌をはじめとする空気清浄に一定の効果を持っていることは、研究によって以前から明らかにされていた。しかし、上記のようにパワーが強すぎるからこそ、ストリーマ技術の実用化には長らく着手されてこなかったという。

商品開発を担当した、同社空調生産本部 商品開発グループ主任技師の深津雅司氏はこう語る。

ダイキン工業 空調生産本部 商品開発グループ 主任技師 深津雅司

「ストリーマ技術は広大な空間を脱臭・除菌できるほど大きなパワーを持っている。当社はこのポテンシャルに目をつけたのです。技術の信頼性を高めて実用化し、子どもからご年配の方まで誰でも安全に使えるようにすることで、多くの人の生活課題解決に貢献できるのではないかと考えました」(深津氏)

もともと同社では、集塵(しゅうじん)機能が空気清浄におけるメインと捉えられていた。それでもストリーマ技術の実用化に腰を据えて取り組んだのは、空調の4要素「温度、湿度、気流、空気清浄」のすべてに徹底的にこだわり続けてきた、空調専業メーカーだからこそ。

深津氏は「花粉症の方が増えたり大気汚染への関心が高まったことで、有害物質対策へのニーズが高まっていきました。そこで、当社では2000年頃からストリーマ技術の研究開発に着手したのです」と振り返る。

花粉+排気ガス+PM2.5をまとめて分解

結果、同社はそれまで難しいとされていた「大量の高速電子を安定的に作り出す」技術の開発に成功。花粉や菌などの活性を抑えるストリーマ技術を確立し、チューニングなどを経て、2004年に実用化にこぎつけた。

「実際、ストリーマを一定時間照射することで、排気ガスやPM2.5といったアジュバント物質の活性を大きく抑制できることが実証されています」と、深津氏は胸を張る(下図参照)。アジュバント物質と手を組んだ厄介な花粉に悩まされている都会の人々にとって、なんとも心強い技術だ。

スギ花粉のみのA群に対して、排ガスとPM2.5を加えたD群は、アレルギーを起こす強さが2.36倍になった。しかし、そのD群に48時間ストリーマ照射を行ったE群では、同指標がなんとD群比で92.4%も低減された

田中氏も「健康に有害とされるものを素早く除去し、心地よい空気を作り出す。そんなクオリティーの高い技術を提供し続けることで、これからも生活課題の解決に貢献していきたい。世の中のニーズがある限り、それに応えていきたいと思っています」と力強く語る。

ダイキンはこうした技術開発のほかにも、「ストリーマ研究所」を開設。ストリーマ技術の概要や、国内外の研究機関と実施した実証実験の結果をまとめている。また花粉に限らず、インフルエンザやカビ、ダニといった空気にまつわるさまざまな生活課題に向けて、コンテンツを発信している。

本格的な花粉シーズンを迎える前に正しい知識を身に付けて、今年こそ万全の態勢で乗り切ろう。

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花粉シーズンの換気の方法

一般的な間取りのリビングで窓を開けて換気をした場合、入ってきた花粉がどのように動くのか、気流解析ソフトを使ったシミュレーションを行いました。
シミュレーションでは、空気の通り道だけでなく、壁際にも花粉が集まっていくことがわかります。花粉が再び空気中を舞わないうちに、壁際付近を意識して、掃除機や濡れタオルを使って取り除きましょう。
 

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※このページは、2019年2月20日に公開した内容に2024年1月23日一部加筆、修正を加えました。

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