日本人の勘違い「快適=健康に良い」の真実 冬の風呂、玄関、トイレ…寒暖差なくすには

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
「快適さ」と「健康に過ごせる環境」は似て非なるもの――。勘違いされがちだが、あなたは両者の違いを理解しているだろうか。この季節、リビングや寝室など居室空間はしっかりエアコンを効かせて暖かくしている一方、廊下や洗面所、トイレなどの非居室空間は震えるほど寒い……という家も多いだろう。このような室内の温度差や低温は、時に「ヒートショック」など循環器系疾患の要因ともなりえる。こうした事態を防ぐ第一歩として、「快適かつ健康」な環境を手に入れるには、いったい何が必要だろうか。そのコツを探った。

家庭の浴槽での溺死者数は、交通事故死亡者数より多い

日本の住宅建築と健康の関係を研究してきた近畿大学建築学部学部長の岩前篤教授によると、いわゆる「ヒートショック」には2パターンあるという。

この連載はこちら

「まず一つは、急激な温度差が原因となるもの。体が温度差にさらされて血圧が上昇し、主に循環器系の疾患を引き起こします。年間1万人以上が亡くなっているともいわれ、夏場の熱中症による死亡者が約1000人規模であることと比べても、非常に多いですね」(岩前氏)

出典:厚生労働省「人口動態統計」、内閣府「交通安全白書」

この典型的な例「家庭の浴槽での溺死者数」は、この13年間でなんと1.9倍に増加。交通事故による死亡者数を上回っている。

「そしてもう一つは、低温が原因となるものです。急激な温度差とは対照的に、寒さそのものが緩やかに健康被害を及ぼすのです」と岩前氏は語る。日本では年に12万人、死因の約10%がこの現象で亡くなっているという報告もあり、被害は深刻だ。

岩前氏は以前、新築戸建て住宅に転居した家族を対象に、転居前と転居後の体の状態について調査を行ったという。「結果、断熱性の高い家に転居した家族ほど体の不調が改善しました。注意すべきは室内の温度差だけでなく、低温の生活環境そのものなのです」と警鐘を鳴らす。

近畿大学 建築学部 学部長
教授・博士(工学)
岩前篤

興味深いことに、ヒートショックがこれほどまで多くの被害を及ぼしている背景には、日本独自の事情があるという。

「欧米では『ルームヒーティング』という言葉どおり、暖房は空間全体を暖めるものとされます。一方日本では、暖房とはすなわち『採暖』する方法、あくまで人を暖める手段と認識されている。さらに木造の家は温度コントロールが難しいこともあり、欧米で盛んな『セントラルヒーティングシステム』は普及していません。暖房に関わる考え方そのものが大きく異なります」(岩前氏)

実際にヒートショックは、室内でも温度が低い浴室や脱衣室、トイレなどで発生するケースが多い。室内で感じる「寒さ」の実態について、空調専業メーカー・ダイキンが首都圏在住の女性200人を対象に調査を行った。

まず冬場に住宅内で寒さを感じる空間・場所は、「洗面室・脱衣室」「廊下」が70%以上、「玄関」67%、「トイレ」約60%など、いわゆる非居室空間の返答が多数を占めた(下図参照)。6~7割の女性が、家にいながら寒さを感じているという結果だ。

また場所別の暖房器具使用率では、リビングや寝室といったいわゆる「居室空間」で軒並み使用率が高かった。一方で、洗面所やトイレ、廊下といった「非居室空間」では非常に低い。

その理由には、「その空間・場所に暖房器具が設置されていないから」「寒くても我慢できるから」「必要性を感じていないから」という返答が多かった(下図参照)。空間的・物理的な制約があるほか、精神論でひたすら耐えている様子がうかがえる。

日本には『我慢は美徳』『寒さは体を強くする』という考え方が根強くあることも、原因の一つだろう。ここで重要なのは「快適さと健康は別もの」と認識することだと、岩前氏は強調する。

「快適さは個人の基準に応じて心が求めるものですが、健康は皆一律に体が求めるものです。例えば冬の寒さは感覚的なもの、低温は物理的な現象。この区別を明確にしなければ、快適=健康、という幻想から抜け出すことはできません」(岩前氏)

快適に暮らすだけでなく「健康に暮らす」へ

では、どうすれば真冬にも「快適かつ健康」に暮らすことができるのか。手っ取り早いのは、非居室空間にも暖房器具を設置することだ。さまざまな商品が世に出ている中、ダイキンが2018年に発売した「ココタス」が好評を博しているという。

「ココタス」は業界最小(460×380×奥行175mm)※の天井埋込カセット形小型エアコン。空調専業メーカーとして非居室空間の空調について研究を重ねてきたダイキンが、室内の低温・温度差という生活課題を解決するべく開発した商品だ。
※天井埋込カセット形エアコンにおいて、2017年9月現在

積水ハウス 住生活研究所長 河崎 由美子

ココタスは、大手住宅メーカー・積水ハウスで高く評価され、すでに多くの物件で取り入れられている。その理由について、同社の住生活研究所長・河崎由美子氏に話を聞いた。

「人生100年時代には、暮らしにおける『幸せ』のさらなる追求が重要だと考えており、そのためには住まい手が長く健康に暮らせるような家づくりが欠かせません。その中で健康に悪影響を及ぼす『室内の低温・温度差』問題を解決したいと考えていたところ、ぴったりなのが『ココタス』でした」(河崎氏)

積水ハウス 建築事業開発部
リフォーム事業開発室
内装・設備開発グループ 課長
石川麻子

既存の住宅でも省スペースで設置できるので、後付けがしやすいのもココタスの特長だと、リフォーム住宅の商品開発を担当する石川麻子氏は語る。「ココタスはとにかくコンパクト。しかも天井設置型のため、洗面所や脱衣所といった小スペースに取り付けても、十分な作業空間を確保できます」

同社は実際に2018年秋から、リフォーム住宅向けのパッケージプラン『いどころ暖熱』の1アイテムとしてココタスを取り入れた。「今まで寒かった洗面室や廊下を快適な温度に保てるとあって、リフォーム時に検討していただきやすいのです」(石川氏)。

積水ハウス 商品開発部
商品技術開発室
設備開発グループ 主任
漆原 慎

さらに積水ハウスは、共働き世帯をターゲットに据えた商品「トモイエ 共働きファミリーが暮らす家」にココタスを導入。2018年8月にキッズデザイン協議会(内閣府認証NPO法人)主催の「第12回キッズデザイン賞」を受賞した。

「例えば脱衣室が暖かければ、幼児のいる共働き家庭でも慌てずに身支度をできます。高齢者に限らず、家族全員が実感できる価値ですよね。ココタスによって、『トモイエ』の描く理想的な生活空間を一つ叶えることができました。

今や、住まい手の健康は家が守る時代。ココタスのような便利なツールを取り入れて、家に『居心地のいい場所』を増やすという豊かな発想が、幸せな住まいづくりに不可欠です」(河崎氏)

ココタスは省スペースで、脱衣所に取り付けても圧迫感がない

同社商品開発部商品技術開発室の漆原慎氏も、「非居室空間の低温・温度差問題への有効策を考えるうえでは、暖房器具をただ設置するだけではなく『使い方』『省エネ性』を検討することも重要です」と語る。電気代がかさみがちな冬、ユーザーとしては、確かに省エネ性能も気になるところだ。

「せっかく暖房器具を設置しても、『もったいない』意識から利用しなければ意味がありません。寒い日にエアコンの使用を控えるような『我慢の省エネ』は絶対にしてほしくありません。ココタスは優れた省エネ性があり、長時間使用する暖房器具としてもおすすめです。省エネと快適さを実現するツールとして、今後もココタスを提案していきたいと思います」(漆原氏)

あなたの家は「快適かつ健康」な温度に保たれているか? 家族の健康を守る第一歩として、改めて確認しておきたい。

親や子どものためにも……家じゅうの温度に気を配ろう

関連ページAD