もはや「コンサルレベル」、法人カードが進化 業務効率化、経費削減、危機管理までも?
「正直、アメリカン・エキスプレスには、海外で主流のカード会社という印象しか持っていなかった」と語るのは、ミズサワセミコンダクタ 取締役 営業部部長の高橋貴彦氏だ。ところが今では、「カード会社の領域を越えている、もはやコンサルティング企業」とまで評価が一変した。
きっかけは、倍増した出張などの経費削減
ミズサワセミコンダクタは、1948年創業の電子機器のソリューションプロバイダだ。製造する電子機器は一般消費者の目には届きにくいが、携帯電話のカメラモジュールやSDカードのチップモジュールなど身近なデバイスのテクノロジーを支える。
創業以来の確かな技術と経験により、着実に事業を成長させてきた同社では、仕入れや営業担当者の出張経費に対して「現金主義」を貫いてきた。しかし、事業成長とともにかかる経費も倍増。経理業務の負荷軽減や経費削減を見込んで2018年11月、アメリカン・エキスプレスのコーポレート・カードの導入に踏み切った。実はまだ、同社では試用運用も含めて導入後1カ月も経っていないのだが、すでにさまざまな効果が表れてきているという。
「社内になるべく現金を置かないために、これまで出張経費の仮払いなどの際には、経理担当者がその都度銀行に足を運んでいた状態でした。これが、コーポレート・カードを使用することで不要に。またカードで使った経費は経費精算システムと連携するため、手入力の負荷を軽減できたほか、入力ミスの心配もなくなりました」と話すのは、管理部 経理担当部長の佐々木一夫氏だ。
同社は製造業のため、工場現場での合理化などの事業に関するコストの見直しは進んでいるが、その一方で出張経費や接待費といった間接費に関しての見直しは今まで未着手だった。
「これまで、経費の数字は部署の月額単位でしか上長には見えていませんでした。それがウェブ上で経費の分析用レポートを作成する『@Work』を利用すれば個人単位で明細が見えてきますので、さまざまな工夫ができると感じています」(佐々木氏)
幅広いパートナーソリューションも魅力
前出の経費処理の自動化には、ラクス社のクラウド型経費精算システム「楽楽精算」との連携が功を奏している。コーポレート・カードと同社の経費精算システムの間をつなぎ、出張費などの数字の手入力を不要にするほか、申請から承認も電子化できる。高橋氏はこの申請作業の利便性を強く感じているという。
「これまでは紙ベースでの承認フローでしたから、承認側が外出していると電話で帰社を急かされていました。今回のシステム導入により、申請があがったらスマホで簡単に承認ができるように。コーポレート・カード導入をきっかけに社内のワークフローまで改善できるとは思っていませんでした」(高橋氏)
このほかにも、同社では現在、アメリカン・エキスプレス側からのパートナーソリューションを含めた提案を次々と検討している。たとえば、エボラブル アジア社の航空券・新幹線・宿泊・パッケージなどの各種サービスをワンストップで購入できる法人向け出張サービス「エアトリBTM」もその一つ。通常はカード決済のできないLCCを含めて豊富なルート提案、直前でも複数の航空会社の中から最適な価格のチケットを誰でも簡単に予約することができ、企業の方針に沿った出張経費の平準化が見込める。当然、決済はコーポレート・カードで行うことが可能で、ポイント還元のメリットもある。
「当社の場合、工場でトラブルが起きた際など、急に出張となる場合も少なくありません。本社が岩手と東北になりますので、九州地域などの出張では交通費もかさみます。今後、利用明細データが蓄積していけば使用頻度の高いホテルなどを割り出し、指定ホテルとして価格交渉にも使えると聞いていますので、こうしたシステムの利用で交通費の大幅な削減につながるのではないかと期待しています」(高橋氏)
ほかにも、アメリカン・エキスプレスが提携する新電力のサービス導入も検討しており、「公共料金の経費低減にまでメスを入れようとしています」と佐々木氏は話す。
カードが経営課題を解決、驚きのコンサルティング力
同社では、当初、経理業務の効率化や出張などの経費削減を見込んでコーポレート・カード導入をスタートさせたが、付帯サービスやパートナーソリューションを含めたアメリカン・エキスプレスの提案力はまさに“嬉しい誤算”ばかりだったと語る。
「カード決済とは関係ないと思っていた課題も、アメリカン・エキスプレスさんと話しているうちに解決策が見えてくる。昨今、日本各地では自然災害が猛威を振るっていますが、カード決済の履歴をたどれば社員の足取りを追うことができるので、災害時の危機管理にも活用できるといった話もあります。今では躊躇せずにいろいろな相談をしているので、今後はさらに細かく蓄積されるデータも活用しながら新たな改善に取り組んでいきたいと思います」(佐々木氏)
高橋氏も「コーポレート・カードを起点に、ここまで企業の課題を改善してもらえるとは考えていなかった」と正直な感想を言葉にすると、続けて読者にこんなメッセージを送った。
「たかがカードという発想は私の中でなくなりました。躊躇しているくらいなら、実際に使ってみたほうが多くのメリットを得られるはずです」