酷暑の屋外が快適「未来形エアコン」がすごい 日本の夏を乗り切る新たな救世主となるか

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屋外でも涼しく快適に過ごせるという未来形エアコンとは?
日本の夏が、とんでもない暑さになっている。猛暑日や熱中症患者の数も顕著に増える中で、東京都が暑さ対策に乗り出していることをご存知だろうか。実際にデータを見てみると、東京では平均気温が年々上がっていて、この100年間で3℃以上も上昇しているという。そんな酷暑の屋外を快適にしてくれる”未来形”のエアコンが、このたび登場した。屋内ではなく、屋外の空気を冷やすという斬新な発想のもと生まれた屋外用エアコンだ。果たして、その実力は?

東京の暑さは世界の中でも際立っている

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想像していただきたい。カフェのテラスで心地よい自然の風を受けながらゆったりくつろぐ場面を。ところが、それを実現できるのは、ここ日本で言えば春と秋くらい。テラスで過ごすには夏は暑すぎ、冬は寒すぎる。冬であればパラソルヒーターをテラスに導入するという方法もあるが、夏はかなり厳しい。

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東京の年間平均気温上昇率は際立っている
出所:東京都環境局「夏の暑さ対策の手引」より

実際のところ、東京の夏は確実に暑くなっている。東京都環境局によれば、過去100年間で東京の年間平均気温は、実に3℃以上も上がっているという。

気温が上がっているのは地球温暖化の影響が考えられるが、この100年で世界の平均気温が約0.7℃の上昇、日本の平均気温が約1.2℃の上昇であることを考えると、東京の数字は際立っている。

これは都市化により都市部に局地的な高温域ができる、ヒートアイランド現象が原因だと考えられている。それに伴い、最高気温が35℃以上となる「猛暑日」も、100年前は都内でほとんど観測されなかったが、近年は猛暑日が年間10日を超える年が頻発している。また熱中症患者の数も、1日の最高気温が高いほど救急搬送者数が増加する傾向にある(東京都環境局調べ)。

酷暑の日比谷に「屋外用エアコン」が登場

そんな東京に、7月23日〜25日までの期間限定で猛暑の屋外でもくつろげる希有なスポットが誕生した。場所は、東京ミッドタウン日比谷。その1階にあるカフェの前のテラスに、人の背丈くらいのものが置かれ、側面からカラッと乾いた冷風が吹き出ている。そう、ほかではなかなかお目にかかれない「屋外用エアコン」だ。世界的空調メーカー、ダイキンが開発した試作品である。

側面から強力な冷風を吹き出し、周囲の半径約3メートルのエリアを涼しく快適にしてくれる

実はこれ、東京都が主催する「暑さ対策技術等の展示」の一環だ。東京都は、夏の過酷な暑さに対し、都民の生活環境改善に加え、増加する外国人観光客への「おもてなし」という観点から東京の夏の暑さ対策を進めている。

「暑さ対策技術等の展示」は、各メーカーが開発した暑熱を緩和する技術や製品の効果を展示し、道行く人にその効果を体験してもらうことを目的としている。言ってみれば、“暑さ対策設備の見本市”で、今回は日よけ設備や微細ミストとあわせ、屋外用エアコンが展示製品に選ばれた。

この屋外用エアコンは、室内機と室外機が一体となったタワー型エアコンだ。縦長のボックス型で、高さは170センチで大人の背丈ほど。4つの側面から強力な冷風を吹き出し、周囲の半径約3メートルのエリアを涼しくて快適な空間に変える。吸い込んだ空気から取り除いた熱は、天井面から上方向へ排出されるという。

製品の企画を担当しているダイキン工業の原田悠生氏は、「これまでも、建築現場など屋外で使用されるエアコンはありました。しかし、これらは特定の作業員を冷やすことを目的としていたため、冷風が出る方向や届く範囲が限られていました。今回開発中の屋外用エアコンは、より広い範囲に強力な冷気を届けることができます。また、周囲の空間と調和するよう、デザイン性にもこだわりました。

地球温暖化を背景に、屋外のイベント会場などが熱中症対策に取り組んだり、多くの飲食店が外国人観光客の好みに合わせてテラスを設置したりするなど、より広い屋外空間を快適にしたいというニーズが高まっており、新たな価値を感じてもらえる革新的な製品の開発を目指しています」と話す。

ダイキン工業 東京支社
空調営業本部 事業戦略室
原田悠生

そのほかにも屋外休憩所、アミューズメント施設、スポーツ観戦場、人の行列ができる場所など、さまざまな屋外スペースでの利用が見込めるという。

何より、コンセントさえあれば、工事不要で手軽に設置できるのが魅力だ。設置の際も、室内機と室外機が一体化しているため冷媒配管工事が不要で導入コストも抑えられる。

しかも、水が蒸発するときに周囲の熱を吸収して涼しさを感じる打ち水などとは違い、熱交換器によって除湿を行った冷たい空気を直接人に向けて吹き出すので、涼しさが格段に違う。

発売は2019年度を目指しているというが、価格は未定。今回の実証結果や市場ニーズを参考にしながら細かな仕様をつめる予定だ。

「ご存じのとおり、国内のエアコン市場は成熟期に入っています。しかし、ダイキンは空調専業メーカーとして、新しい市場をつくり出すことを目指し、組織横断で新商品創出プロジェクトを進めてきました。日本では、地球温暖化やヒートアイランド現象で夏の暑さ対策が急務となる中、『空気で答えを出す会社』を掲げるダイキンが建物の中のような室内空間にとどまらず、あらゆる空間における空気課題を解決するのは責務と考えています。

東京都の『暑さ対策技術等展示』に、このたび屋外用エアコンが選ばれたのは、そうしたこれまでの取り組みに対する評価でもあると受け止めています。今後、ダイキンが得意とするエアコンの基幹技術、ヒートポンプのノウハウを生かして、効率良く冷やせる屋外用エアコンを完成させ、来年夏前までには発売したいと考えています」(原田氏)。

既存の枠組みにとらわれない空調開発を続けてきたダイキン。この屋外用エアコンは、まさしく、エアコンの可能性を大きく広げる“未来形のエアコン”と言えるのではないだろうか。いま日本が、命にかかわるほどの危険な暑さにさらされる中で、この屋外用エアコンが早く全国に広がることを期待したい。

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※東京都主催の「暑さ対策技術等展示」は7月23日~25日の3日間限定で行われた

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