エアコンが効かない…理由は「室外機」かも 壊れたら、まさに家じゅう灼熱地獄!
猛暑を記録した今年の夏、その暑さは、気象庁が緊急記者会見を開き「災害と認識」していると述べるほど。7月中旬の平均気温は、関東甲信地方で「平年差+4.1℃」とかなり高くなった。8月に入ってもまだ、高温の日々は続くと予想されている(すべて気象庁発表)。
真夏でもエアコンはつけずに我慢する、なんて「一昔前の美徳」は、もはや生命の危機に直結してしまう状態だ。
しかし、「最近、なんだかエアコンの効きが弱い」と感じることはないだろうか。フィルターを掃除し、しっかり点検もしたはずなのに……。
「その原因は、室外機にあるかもしれません」とダイキン工業サービス本部の水倉忠幸氏は指摘する。つい室内機の性能にばかり目がいくが、エアコンは必ず「室外機」がセットで稼働しているのだ。
室外機の中の「圧縮機」がポンプの役割を果たす
室内機と比べると、スポットライトの当たりにくい室外機。しかし、その状態によって、エアコンの効き方に大きな差が出るのだという。エアコンの仕組みについて、水倉氏はこう説明する。
「エアコンの室内機と室外機は、それぞれ別の、重要な役割を果たしています。冷房運転時、室内機は部屋の空気を吸い込み、熱だけ奪い取って冷たい空気を吹き出しています。奪われた熱は、室内機と室外機をつなぐパイプを流れる冷媒ガスによって、室外機に運ばれます。
一方、室外機は屋外の空気を吸い込み、部屋から運ばれた熱とともに屋外に吹き出しています。室外機には、冷媒ガスを循環させるポンプの役割を担う『圧縮機』が搭載されており、熱を屋外に放出して冷たくなった冷媒ガスを室内機に送り出す、という仕組みです」。
室外機の圧縮機と冷媒ガスは、まさに人体でいう心臓と血液のような関係だ。「室外機の圧縮機は、いわば心臓のような役割をして、血液が人体を循環するように、冷媒ガスに室内機と室外機の間を循環させているのです」(水倉氏)。
室内機が部屋の熱を奪い、冷媒ガスが室外機へと運び、室外機が熱を放出するというサイクルを繰り返すことで、室内が涼しく保たれるというわけだ。
では、室外機の機能をフルに生かすためには、何が一番重要か。それは「風通しの良さ」なのだという。
水倉氏は「室外機正面にある風の吹き出し口と背面や側面にある吸い込み口、どちらかが障害物などでふさがれていると一気に風通しが悪化します。熱が周辺に留まってしまい、熱を外に逃がすという室外機の役割を果たせなくなるのです。その状態が続くと性能ダウンにつながり、最終的には故障を引き起こす可能性すらあります」と警鐘を鳴らす。
風通しを確保するため、室外機設置の際には、壁と一定のすき間を開ける必要がある。前後を物でふさいだり、大きな植物を置いてしまってはいないだろうか。熱交換器にホコリやゴミがたまったり、植物の枝やツルが被さってしまうと、それも風通しを阻害する要因になる。
風通しの良さに加え、「直射日光の当たらない日陰に置くこと」(水倉氏)も重要だ。下記のチェックリストで、室外機が十分に稼働できる環境にあるか確認してみよう。当てはまる項目があれば、まずはここから改善するとエアコンの効きもよくなるはずだ。
□直射日光の当たらないところに置かれているか
□吹き出し口のフィルターが、ホコリやゴミで目詰まりしていないか
同部の片山泰三氏は、「室外機が直射日光の当たる場所に置かれている場合には、通気性を維持しつつ直射日光を避けるような工夫、たとえばよしずを室外機から1m以上離して立てかけるなどが有効です。
このとき、決して自分で室外機を動かさないでください。室外機には室内機とつながるパイプが搭載されており、無理やり動かすと、ガス漏れが発生するなど故障の原因になります」と言う。
ベランダはまさかの40℃超え!灼熱に耐えられる室外機
今年のように気温が高い日が続くと、コンクリートの上やベランダでは、温度が40℃近くに達することもある。ダイキン工業の調査では、外気温が34℃でも、室外機の吸い込み口周辺の温度が45℃近くにまで上昇するケースがあった。
真夏の過酷な環境下でもエアコンを稼動させるため、ダイキン工業は46℃まで耐えられる室外機「高外気タフネス冷房」※を実現(2019年4月現在)。さらに強い雨風や地震発生時など、さまざまな環境を想定した300以上の厳しいテストを行っている。
※対象機種:2019年モデル壁掛型(ハウジング・マルチは除く)
そんな同社の実力について、片山氏はこう胸を張る。
「当社は世界150カ国以上の国々で空調事業を展開し、住宅用のエアコンからビルなどの大空間向けの業務用大型空調機まで、幅広い空調機の普及に努めてきました。日本よりずっと苛酷な気候の国もありますが、それぞれの土地・気候に適した空調機を開発してきた実績があります。
さらに空調専業メーカーとして、空調の機器だけでなく冷媒ガスまで自社で生産しています。これまで培ってきた技術力・ノウハウを生かして、特にエネルギー効率も良く性能に優れた『R32』という冷媒ガスを、2012年にいち早くエアコンに採用。こうした取り組みにより高温環境への対応を強化し、外気温が45℃と過酷な環境でも、十分に性能を発揮できる空調機を実現するに至りました」。
もし真夏にエアコンが壊れてしまえば、ほかの手段でやり過ごすのは至難の業だ。また高性能なエアコンを持っていても、その性能を十分に生かしきれなければ"宝の持ち腐れ"になってしまう。
8月、9月の暑さを乗り切るためにも、まずは室外機に気を配り、効率良く涼を取りたいものである。